- ナノ -

これからもよろしく

『恵くんがこんな高校生だといいな』『恵くんにこんな友達がいてくれたらいいな』という欲望だけで書いた話。捏造甚だしい。ほんのり恵→鈴だけど後半しか鈴ちゃん出ないです。
※オリキャラ・モブキャラが出ます。苦手な方はご注意ください。


 学校は『集団生活を学ぶ場』と考えられている。が、その規模は社会に比べかなり小さく限定的である。全校生徒数は多くても、普段時間を共にしている人数など極一部である。そのうえ生徒同士でのグループだの人間関係のバランスなど、口には出さずとも数多の問題が存在しているのだから面倒なことこの上ない。
 ただでさえ恵は幼少期の生活環境によって人間不信気味である。だからこそ恵にとって学校とは好ましい場ではなく、むしろアチコチから寄こされる視線が煩わしい、居心地の悪い場所だった。

「ケーーーイ! みんなもおっはーよーーーう!」
「うるさい」

 そんな恵であっても孤独なわけではない。
 鼓膜を突き破りそうなほどの声量と、朝からテンションが突き抜けている友人がドカッ、と無人だった前の席に座る。

「お? どうした、恵。今日も死にそうな顔して」
「うるさいバカ。お前のせいで鼓膜が死んだ」
「マジかごめん。恵がマンボウみたいに弱いこと忘れてたわ」
「誰がマンボウだ」

 ああ言えばこう言う。特別口が達者なわけでもないのに、目の前で笑う男は意外と頭の回転が速い。恵はカラカラと悪気無く笑う同級生にじっとりとした恨みがましい視線を送り、諦めたように息を吐いた。
 恵にとって学校とはさして楽しくもない、知識だけを学ぶ場である。将来の自分のため。愛する弟のため。守りたい“彼女”のため。
 人生は“金と知識”があれば切れるカードがそれだけ増えるのだ。だが手元にカードが少なければ勝負に出ることすら出来ない。

 だからこそ煩わしい人間関係を築くことを拒み、貪欲に知識だけを求めたというのに――。何故か少しも物怖じすることなく特攻してくる人物がいた。
 それが目の前に座るクラスメートだった。
 
 中高一貫校ではあるのだが、この男と知り合ったのは高校に入学してからである。偶然隣の席に座っていただけなのだが、進級した今も昔と変わらず騒がしい。むしろクラスどころか学年一と呼ばれるぐらい明るくてやかましい。
 誰とでも話し、誰とでも仲良くなる。打算どころか裏表さえない男は当然ながら交友関係も広い。閉鎖的な恵とは大違いだ。
 にも拘わらず、どういうわけだかこの男、常に一人でいる恵に絡んできた。

 人一倍警戒心が強い恵は初めこの男を敬遠していた。話しかけられても適当に受け流し、遊びに誘われても断り続けた。
 普通ならば恵のことを嫌うか、「つまらない奴だ」と思って離れていくだろう。

 しかしこの男、まったく堪えないどころか少しも気にしていなかった。

 無視しても声を掛けてくる。返事をせずとも話し続ける。体育の授業でも気付けば恵の隣に来て勝手にペアを組んでいる。
 気付けばこの男のペースに巻き込まれるようになり、最終的に恵の方が折れた。
 今では唯一まともに交流を図っている相手となっている。

 友人。と、呼んでも差し支えのない関係ではあるのだろう。だがあまり他人に心を開かない恵からしてみれば、彼を本当に“友人”と呼んでいいのか分からずにいた。

「つーか聞いてくれよ。昨日姉ちゃんがさぁ」

 名前に『猿』という文字が入っているせいか、はたまた本人の態度のせいか。クラスメートはこの男の事を『猿』だの『山猿』だのと呼んでいる。一種の蔑称のように聞こえなくもないが、本人は特に気にした様子はない。むしろ恵にも「好きに呼んでいいぞ」と気安く告げるほどだ。
 そんな山猿男子と共にいる時は(確かに別の意味でも視線が集まってくるが)不思議とイライラすることが減った。

 思えば中学の時はさほど体躯に恵まれていなかったせいか特に目立つことはなかったが、卒業するあたりから一気に身長が伸び始めた。それに加え元より整った顔立ちをしている恵である。
 物静かで他人に心を開かない姿は危険な男にもミステリアスな男にも見え、女子たちの関心は一気に高まった。
 そのおかげで恵は望んでもいないのに有名人である。

 如何に都会と言えど『イケメン』がクラスや学年にいれば女子は騒ぐ。年齢も関係ない。先輩後輩構わず恵を見かけては隠しきれない好奇心と好意を視線に乗せ、時にはコソコソと何か話し合ってはキャーキャーと黄色い悲鳴を上げる。
 おかげで恵は自分が珍獣にでもなったような気分にさせられていた。

「それでさ、オレだってたまには言い返そう! と思って姉ちゃんに“ボス猿”って言ったらよぉ、オレよりちっこいのに、姉ちゃんオレの背中全力で蹴って来たんだぜ? 弟だからってマジで容赦なさすぎ。あれじゃ彼氏できねえって」
「ああ……。まあ、お前が大変な目にあったことは分かった。けど、このあと英語の小テストだってこと忘れてないか?」

 四方八方から寄せられる疎ましい視線に日々晒される恵であっても、目の前の男といれば多少は気分が軽くなる。
 だからこそ昨夜彼の自宅で起きた悲惨な出来事を聞きながらも一応心配して尋ねてみれば、目の前の同級生はパチパチと丸い目を瞬かせ――すぐさま口を大きく開いた。

「やっべ! 忘れてた! 恵、どこが出るか教えて!?」
「お前なあ……」

 ガタン! と椅子が音を立てる勢いで前のめりになって顔を近付けて来る山猿に対し、恵は咄嗟に椅子を引いて距離を開ける。
 だがそんな恵の態度にも気を悪くした様子はなく、山猿は「もう野生の勘に頼るしかないのか……?!」と頭を抱えている。対する恵の手元にはしっかりと単語帳が握られており、目の前のお祭り男の話を聞きながらも随時目を通していた。

「お前、また補講行き決定だな」
「いやだー! オレに英語なんてわかるわけねえよ! オレ日本人だぜ?!」
「それを言うならこのクラス全員日本人だろ」
「恵様! お願いします! なにを覚えればいいのか教えてください!」

 両手を合わせ、拝むように頭を下げる友人に恵は溜息を零す。
 幾ら小テストと言えど範囲は広い。その中でどの単語が出るかなど分かるはずもないのに、目の前にいる友人は自分を頼ってくる。
 自分でどうにかしろ。と言うことは簡単だが、唯一の友人だ。如何にクールでドライな恵であっても放っておくことは出来なかった。

「出るかどうかは分からないけど、綴りが簡単なやつだけ何個か覚えておけば?」
「おお、そっか。えーと……あべ……あば……あぼ? ……ぱーどぅん?」
「下に読み方書いてるだろ……」

 本当にダメダメな友人に恵も頭を抱える。が、無情にもチャイムは鳴ってしまった。途端に周囲も「サル、頑張れよー」だの「恵にばっか頼んなー」と囃し立て始める。
 それにいちいち「しょーがねーじゃん」や「うるせーよ」と返すのは猿だけだ。恵は黙って英単語帳を閉じ、入って来た担任の姿をちらりと見遣るだけである。

 恵は基本的に無駄口は叩かない。そして滅多なことでは笑わない。
 交友関係も狭く、特別仲のいい友人はいない。何人家族なのか、家はどこにあるのか、普段何をしているのか。何もかも秘匿しているため、特にミステリアスな存在だった。

 だからこそ余計に周囲は興味を惹かれるのだが、本人にとっては煩わしいだけである。
 中学でも似たり寄ったりだった経験があるとはいえ、高校では秀でた容姿のおかげで更に衆目を浴びているのだ。時間帯問わずに向けられる視線や、顔も名前も知らない他人からの好意はただただ気持ち悪いだけだった。

 そんな『無愛想が服を着て歩いている』ように思われている恵だが、たった一人。今年入学した中学一年生である弟の前でだけでは表情が緩んだ。

「あ。恵くーん!」

 恵にとっては簡単だった英語の小テストを終え、体育の授業に向かう最中だった。
 中庭を突っ切るようにして設えられている渡り廊下を歩んでいた恵と猿の元に、まだ少しだけ大きな制服に着られているかのような知が手を振りながら近づいて来る。
 その姿は男子の中でも小柄な部類であることに加え、天真爛漫な性格に兄同様整った顔立ちから陰では『天使』と呼ばれていた。

「知くん。どうしたの?」
「よー、知くん。元気かぁ?」
「うん! お猿さんも元気?」

 ニコニコと笑う知は入学当初「本当に恵の弟なのか?!」と騒がれるほどに注目を浴びていた。だが恵とは違い他人の視線をものともしないタイプである。
 周りから「本当に恵くんがお兄さんなの?」と聞かれても、知は「そうだよ?」と肯定するだけで、自分が注目を浴びていることに気付いてすらいなかった。
 そんな知を恵は心底心配していたが、何だかんだ言って人に愛されるタイプの知である。恵の心配を他所に既に友人を作り、学校生活を楽しんでいるようだった。

 片やクールなミステリアスな男子。片や『天使』と呼ばれる小動物系男子。

 いつでもどこでも注目される二人を、今も他の階から見ていた女子生徒たちが「知くん可愛い」だの「恵くんの笑顔……!」などと口走っては騒いでいる。
 その中には友人同士、互いの体をバシバシと叩きながら「兄弟尊い」「兄弟最高」などと興奮している危ない生徒もいた。

 だがそんな視線や声を全てスルーし、恵は知に笑いかける。

「知くん。学校は楽しい?」
「うん! 楽しいよ!」
「そう。よかった」

 急激に身長が伸びた恵とは違い、知の成長は緩やかだ。前から数えた方が早いほど小柄な知の頭を恵が優しく撫でれば、知もニコリと笑う。

「恵くんはどこに行くの?」
「グラウンド。次は体育だから」
「そっか。ボクたちはこれから生物の授業だよ。理科室に行くんだ」

 そう説明する知の手には生物基礎の教科書とノートが抱かれている。元より理科目に苦手意識は少ないのだろう。授業を楽しみにしている様子が見て取られ、恵は安心したように目を細める。

「そっか。頑張って」
「うん! でも、ちょっとおなかすいてきた……」
「ああ……。そうだ、知くん。お菓子あるけど、食べる?」
「食べる!」

 ぐう。とお腹が鳴りそうになったのだろう。教科書を持っていない手でお腹を押さえる知を前に、恵は隣に立つ友人を仰ぎ見る。

「お菓子持ってるだろ? 知くんにあげて」
「オレかよ! 持ってるけどさぁ」

 恵の横暴ともとれる態度にすかさずツッコム猿ではあったが、すぐさまポケットに手を突っ込み、知の前に差し出した。

「色々あるぞー。ブドウにオレンジにイチゴ味の飴だろ? で、こっちはアーモンドチョコ。知くんどれがいい?」
「んー……全部!」
「全部?! ちっくしょう! 持ってけドロボー!」

 笑顔で強欲発言をする知に驚いたのは一瞬。猿は嫌がることなく知の手に取り出したお菓子を全て乗せる。

「やったー! ありがとう!」
「いいってことよ。じゃあな、知くん。授業頑張れな」
「うん。恵くん、お猿さん、またね」

 喜ぶ知の背後で予鈴の音が鳴り響く。もう移動しないと次の授業に遅刻してしまうだろう。
 知はお菓子を抱えながら背中を向けて走り出し、恵と猿もグラウンドに向かって歩き出す。

「……ありがとう」
「なにが?」
「さっきの。お菓子、全部知くんにくれたから」
「ああ、いいよそのぐらい。鞄の中にまだあるし」
「あるのかよ」
「おう。恵もいる?」
「いらない」
「そっか。腹減ったら言えよ。やるから」
「うん」

 シビアな対応が多い恵ではあるが、その実キチンと親切にしてくれた相手には礼を尽くす。そんな恵だからこそ「不良」というレッテルを貼られずに済んでいるのだろう。
 あとは知られていないだけで日々電子の世界では年上の女性をエスコートしている恵である。“彼女”の専属マネージャーからも日々様々な注意を受けて教育されているため、女子には比較的優しいところがあった。
 とはいえ直接話すわけではない。ただ両手で荷物を抱えている女子がいれば黙って扉を開けてあげたり、雨風が強い日や、雪が降る寒い日などには代わりにゴミ捨てに行くぐらいだ。
 それでも十分この狭い世界ではモテる要素になるのだが、本人にその自覚は全くと言っていいほどなかった。



***



 そんな窮屈で息苦しい日々を繰り返しながら、今日も帰宅するため駅に向かって歩いていた。するとふと顔を上げた先に見慣れた後ろ姿を見かけ、恵は咄嗟に走り出す。

「鈴さん!」
「へ? わ! 恵くん! 今帰り?」
「うん。鈴さんは?」

 小柄な体躯に、肩につくかつかないかぐらいの黒い髪。背の高い恵が見下ろせば余計に小さく見えるその女性は、恵にとってかけがえのない人――鈴だった。

「わたしは今日お休みだったの。さっきまでルカちゃんと一緒にカフェにいたんだけど、この後カミシンとデートなんだって。だから早めに解散して、今出て来たところなの」

 ほんわかとした笑みを浮かべながら話す鈴に、先程まで荒くれていた恵の気持ちが一瞬で凪いでいく。
 鈴の声は、言葉は、恵にとって清涼剤のようなものでもあり、安心感を与えてくれる波の音のようでもある。

 そもそもにおいて彼女は世界で最も注目を浴びている歌姫のオリジンなのだ。

 周囲の誰もがそれに気付いている様子はないが、恵にとってはそれを抜きにしても特別な存在だ。
 だが鈴はどれほど『U』の世界で有名になろうと変わらない。

 自分からしたこととはいえ、一度正体を晒した時はまるで川が氾濫したかのように様々な人が鈴の元に押し寄せてきた。あの時は大変苦労したが、父親をはじめとした多くの人が鈴を助けてくれた。
 おかげで恵のように人間不信になることもなく、今も変わらず穏やかに笑みを浮かべている。

 とはいえ、鈴も東京に来てだいぶ垢抜けた。

 劇的に変化したわけではないが、高知の片田舎にいた世間知らずの田舎娘も年相応に大人びてきたのだ。
 まだ学生である恵からしてみればこの差は大きい。

 時には鈴を遠くに感じることもある。だがその変わらない心根のあたたかさと柔らかさに安心感を覚える時もある。
 それでも彼女の周りに見知らぬ男性がいれば焦燥感に駆られ、恵は何度も『早く大人になりたい』と縮まらない年齢差に歯噛みした。

 当然鈴にそんな情けない悩みを打ち明けられるはずもなく、恵は必死に焦る気持ちを押し隠して『何でもない』ふりをする。
 恵の鈴に対する好意を知る者が見れば涙ぐんでしまいそうな、モヤモヤしてしまいそうな、何とも健気な姿であった。

 だが当の本人――鈴は恵の好意には気付いていない。勿論『好かれている』という認識はある。が、あくまで『Like』であり『Love』だとは思っていない。
 だからこそ周囲はやきもきするのだが、鈴は相変わらずの鈍さで恵の切なくも甘い視線をスルーしていた。

「そういえば、知くんは? 一緒じゃないの?」
「うん。部活の見学に行ってる」
「え?! 知くん部活に入るの? 何部にするのかもう決めたのかな?」
「ううん。まだ決めてるわけじゃないよ。友達に誘われて色んな部に見学に行ってるだけみたい」

 鈴と共に駅に向かって歩きながら、恵は身の回りで起きた些細なことを話す。
 本当は学校など楽しくも何ともないのだが、鈴が気にしていることもあり、出来る限り話すよう心掛けていた。

「そっかぁ。恵くんは結局帰宅部を選んだもんね」
「家に帰ればやることが沢山あるから。それに、特にやりたいこともなかったし」

 運動が苦手なわけでもない。手先が不器用なわけでもない。
 だから運動部だろうが文化部だろうが系統問わずに選ぶことは出来た。それでも恵が選んだのは『帰宅部』だった。
 周囲の勧誘も期待も、ただ鬱陶しく煩わしかった。それに家事や炊事のこともある。だから恵は迷うことなく『帰宅部』を選んだのだ。

「でも、知くんが部活に入りたいなら僕は止めないよ。知くんには好きなことをして欲しいから」

 交遊関係が広がると同時に笑顔が増えてきた弟の姿を思い浮かべたのだろう。黙っていると冷たく感じる恵の顔が柔らかく綻ぶ。
 そんな恵を見上げながら、鈴も同じように優しく微笑んだ。

「恵くんは本当に優しいね」
「そんなことない。知くんと、鈴さんにだけだよ」
「そうかな? ヒロちゃんやルカちゃんにも優しいと思うけど」
「マネージャーさんと渡辺先輩は知くんや鈴さんとはまた別だから……」

 恵にとって弘香、『マネージャーさん』は頭の上がらない存在である。恵や知ですら唸る程のシステム処理の能力に加え、様々な企業やスポンサーと商談をし、契約をもぎ取ってくる敏腕マネージャーである。
 ルカは正しく恵にとって『先輩』であり、彼女の恋人である『カミシン』こと千頭も『U』でしか会うことがないとはいえ、学校にいる人間よりかはずっと慕っていた。

 ただ鈴の初恋相手である忍だけは、未だに『どう接したらいいのかよく分からない人』という認識だった。

「……久武先輩は、元気?」
「忍くん? 元気だと思うよ。最近連絡はとってないけど、カミシンがこの前の連休に実家に戻った時に会った、って言ってたから、多分元気にしてると思う」

 鈴と忍は恋人ではない。分かってはいてもどうしても心の中にモヤモヤとしたものが渦巻いていく。
 それが何故なのか。不快な気持ちの正体が何なのか。分からないほど恵は鈍くない。むしろ自覚しているから一層焦ってしまう。
 だが意外なところで鋭い鈴が気付かぬよう、恵は話題を変えた。

「千頭先輩とは、この前『U』で話したよ。相変わらずだった」
「あははっ! わたしも『カミシンは幾つになっても変わらないよねぇ』ってこの前ヒロちゃんと話してたの。一緒にいると不思議と元気になるよね。カミシンって」

 笑う鈴の声や表情に『友情』以上の想いは感じ取れない。だからこそ恵は同じ先輩であっても千頭に対しては複雑な思いを抱かずに済んでいる。
 むしろ『U』の世界では敬遠されている竜に対し物怖じせず接してくる数少ない人物だ。初めて言葉を交わした時に『太陽みたいな人だな』と思ったことを、恵は今でもよく思い出す。

「あとは、渡辺先輩のことでちょっと相談された」
「え?! カミシンが?! なんて?!」

 恵の言葉と、千頭の行動が意外だったのだろう。グルリと首を巡らせる鈴の瞳は期待と興奮で丸くなっている。そんな鈴を見下ろしながら、恵は殊更優しく口元を緩めた。

「――秘密。でも、そのうち分かるよ」
「えぇ〜? 怪しいなぁ。でもその言い方だと何を相談されたのか、ちょっと予想できるかも」

 恋愛ごとは男性よりも女性の方が敏感だ。恵は楽しそうに想像を巡らせる鈴をとろけるような眼差しで見つめ、次の話題を口にしようとした。

 ――が、ここに来て「あれ?」という声が恵の耳に飛び込んでくる。

「恵じゃん。今帰り?」
「よー。お前こっちなんだな、帰り道」

 一瞬で不快な気持ちにさせられた恵に近寄って来たのは、近くのファーストフード店から出て来た二人の同級生だった。とはいえ昔一年間だけ同じクラスだっただけだ。特に親しかったわけではない。
 思わず舌打ちした恵に、傍にいた鈴はギョッとした。

(え?! 恵くん今舌打ちした?!)

 鈴の知る恵は――出会った頃ならいざ知らず、今は礼儀正しい、物腰柔らかな好青年だ。そんな恵が今、鈴が隣にいるにも関わらず舌打ちをした。
 そのことに一瞬「聞き間違い、だよね……?」と自分に言い聞かせた鈴であったが、そろりと見上げた恵の表情は今まで見たことがないほど感情がそぎ落とされた――まさしく『無』そのものだった。

(怖っ!! 恵くん怖い!)

 だが無表情に見えて実際は細く、形の整った眉は不愉快そうに顰められ、眉間に深い皺を刻み込んでいる。切れ長の瞳はいつも鈴を見つめる時の甘く優しいものではなく、一切の温度を感じさせない氷山のようだ。むしろ猛吹雪が吹き荒れる雪山に近いかもしれない。
 そんな恵の姿に、思わず鈴は「別人みたいだ」と感じてしまう。

 現に忍と同じくらい背が高くなったせいか、それとも漂う不機嫌なオーラのせいか。威圧的な空気を放つ恵に鈴は無意識に数歩後退る。

「それが? お前たちに関係あるか?」
「うぉーい、そうツンケンすんなよ。俺らの仲じゃん」
「そうそう。一年間一緒に過ごした仲なんだしさ、たまには一緒に帰ろうぜ」

 ヘラヘラと笑いながら話しかけて来る顔も名前もあやふやな同級生に、恵の機嫌はますます悪くなっていく。
 ただでさえ気安く話しかけられるのが苦手なのだ。そのうえ――よりにもよって鈴との時間を邪魔された。恵にとってかけがえのない、ささやかでありながらも多大な幸福を味わえる時間を邪魔されたのだ。恵の怒り指数は急上昇の一途を辿る。

「断る」

 素気無く断る恵の言葉は鋭利だ。切れ味鋭いナイフ――というより、もはや斧や鉈レベルである。
 鈴は時折忘れそうになるが、恵は“竜”なのだ。見た目の種族は違えど、不機嫌そうに細められた瞳は竜とそっくりである。
 つまり、今の恵は非常に“不機嫌”である。という証明だった。

(うわぁ……。こんなに怒ってる姿を見るのはリアルじゃ初めてかも。最近は『U』でも大人しくしてたのに、大丈夫かなぁ?)

 鈴が後退ると同時に、恵は咄嗟に前に出て鈴を背中に隠した。それでも近寄られたら鈴の存在に気付く可能性はある。
 恵は近寄ってくる同級生を鋭く睨みつけながら、冷ややかな声で「お前らもう帰れよ」と会話を打ち切ろうとする。
 だがそんな恵の態度を伊達に一年間見て来たわけではない。同級生たちは構わず恵に近付き、その肩に触れた。

「お前って本当冷たいよなぁ」
「そうそう。クラスでも浮いてるって話じゃん。たまには皆と話そうぜ。折角の高校生活なんだしさぁ」

 彼らは好意で言っているのかもしれない。あるいは“噂の恵”と仲良くなって何かを得ようとしているのかもしれない。
 どちらにせよ“不愉快だ”と恵が考えていると、恵と同じくらい背の高い男子がふと恵の後ろに隠れるようにして立っていた鈴に気が付いた。

「誰? 恵の知り合い?」
「へ? あ、いや、その……」
「!!」

 幾ら『U』の中では大勢の前で立とうとも、現実世界では高知にいた頃と変わらずひっそりと生きている鈴である。
 見知らぬ高校生に話しかけられ、咄嗟に鈴は顔を俯かせる。それに気付いた恵はすかさず同級生たちの手を払い、注意を自分に向けさせた。

「お前たちには関係ない」
「何だよ。あ、もしかして彼女?!」
「いやいや、こういう時の展開は従姉妹ってパターンだろ。俺は知ってる」
「あ、だよなぁ。恵には綺麗なお姉さんタイプが似合いそうだし」

 ただでさえこの時期の男子は怖いもの知らずで礼儀知らずだ。要は『鈴は恵に相応しくない』と言ったも同然である。
 それを察した鈴が唇を噛めば、恵は爪が食い込むほど拳を握り締めた。

 そんな怖いもの知らずの彼らにとって唯一の救いはここが『U』ではなく現実世界だったことだ。もしここが『U』の中であれば――恵が“竜”になっていれば。間違いなく最近では控えていた一方的な蹂躙が行われていたことだろう。
 だが今にも殴り掛かろうとした恵を寸でのところで止めたのは――鈴ではなく、失礼な同級生の後ろから現れた『山猿』だった。

「よォーっス!! お前らなぁにやってんの〜?」
「お。サルじゃん」
「よーッス。サル。あれ? お前部活は?」
「今日は休み〜。でも姉ちゃんとオカンの買い物に付き合わされてんの。お前らも手伝う? 荷物持ち」

 恵に絡んでいた同級生たちの進行を阻むかのように二人の肩に腕を回し、うんざりとした様子で自分のことを話し出す友人に恵は一瞬呆気にとられる。
 だが山猿男子は気にした様子もなく、恵にウザ絡みしていた同級生二人を交互に見遣った。

「で? お前らは何してたわけ? まさか恵に告白?!」
「ふざけんなバカ! んなわけねえだろ!」
「ホモじゃねえっつの!」

 ギャアギャアと途端に騒ぎながら猿に言い返す二人だが、猿は「え〜? 本当に〜?」と口元を歪める。

「恵くんったら男にもモテるのね! あたし妬いちゃう!」
「殺すぞ」
「ワオ! 久々のガチトーン! これはヤバイやつ!!」

 何だかんだ恵と唯一まともに親交がある男だ。恵の声音だけである程度怒りレベルを判断することが出来る。一応カマをかけてみただけなのだが、返って来た反応が笑えないレベルのマジトーンだったため、すぐさま身を引いた。

「お前らさぁ〜、恵と仲良くしたい気持ちは分かるけど、恵はウザ絡みされるのが一番嫌いなんだからやめとけって。もう遅いかもしれないけど」
「はあ〜? 別にウザ絡みとかしてねーし」
「そうそう。な? 恵」
「チッ」

 一人に同意を求められるが、恵は返事の代わりに舌打ちを返す。それだけで猿は「冗談抜きでガチギレしてる」と改めて悟った。

「はい! 今日はここまで! 恵くんとお話したかったら事務所通してくださ〜い」
「事務所ってどこだよw」
「芸能人か、ってのw」
「殆ど芸能人みたいなもんじゃん。うちの学校で一番の人気者だぜ?」

 千頭のような明るい男が現れたおかげだろう。居たたまれない気持ちで俯いていた鈴も、恐る恐る顔を上げる。
 そして改めて自分を守るように背を向けて立つ恵の姿に、再び“竜”の姿が重なって見えた。

「じゃあな、恵。気ィつけて帰れよ。お前らはコッチ〜。俺と一緒に荷物持ちな!」
「ざけんな! お前だけでやれっての!」
「俺らはお前の家族でもなんでもないんですけどぉ?!」

 恵の不機嫌を唯一正確に悟った猿がグイグイと同級生二人を連れ去って行く。それを暫くの間睨むようにして見送っていた恵だが、人ごみに紛れて姿が見えなくなるとようやく肩の力を抜いた。

「――ごめん。鈴さん。あんなゴミ――ゴホン。失礼な奴らの言葉は忘れて」

 今確実に『ゴミ』って言ったよね?
 普段の紳士さが欠片も感じられない発言をした恵に、鈴は思わず吹き出す。

「あはは! いいよ。慣れてるから」
「は? 慣れてる?」

 だが鈴はうっかりしていた。恵にしろ竜にしろ、一度懐に入れた相手に対しては優しいが、傷つける相手に対しては容赦しない。
 だから鈴の『慣れている』という発言に恵は見知らぬ他人に対し憎悪にも似たどす黒い感情が沸き起こったのだが――それをギリギリで察した鈴が慌てて弁解する。

「ち、違うの! そういう意味じゃなくて!」
「じゃあ、どういう意味?」

 慌てる鈴をどこか信じ切れないような目で見下ろす恵に、鈴は少し迷った後ぽつぽつと話し出した。

「ほら、わたし、忍くんと幼馴染でしょ? 忍くんも恵くんと同じで高校生の時すごく人気者で……ほんの少し話しただけでもすぐに噂になって、色々言われたことがあるの」

 それこそ少し長く会話しただけでも『あいつ忍くんと〇分間も話してたんですけど』と攻撃されたものだ。手を握られた時はもっと酷かったなぁ。と思い出して苦い笑みを浮かべていると、途端に恵の顔が不愉快そうに歪められる。

「また久武先輩か……」
「え?」
「何でもない。それで? 鈴さんはその手の“悪意”に慣れてるから気にしないで、って、そう言いたいの?」
「うん。そう――」

 そうだよ。と頷こうとした鈴の言葉を遮るように、恵の大きな手が鈴の両頬にそっと添えられた。というより、その姿は耳を塞ごうとしているかのようにも見えた。

「――慣れなくていいよ。そんな言葉」
「…………恵くん……?」
「他人を傷つけて、見下すことでしか優位に立てないような人の言葉に、鈴さんが傷つく必要なんてない」

 幼い頃の自分を思い出しているのだろう。強い口調の割に辛そうに歪められた表情を見て、鈴もハッとする。

「……うん。そうだね」

 かつては弟を守るだけで精一杯だった少年が、今はこうして自分を気遣えるまでに成長している。それを喜ばしく思う気持ちは確かにある。――が、それでも鈴はあの時と同じように恵の体に手を伸ばした。

「でも、それは恵くんも一緒だよ。あんな失礼な人たちの言葉に、態度に、もう振り回されなくてもいい。聞かなくてもいい」

 鈴はあの時と比べ随分と位置が高くなった頭を撫でるように軽く指先で髪を梳き、慈しむように笑む。

「――ありがとう、恵くん。守ってくれて。嬉しかったよ」

 だが微笑む鈴とは違い、恵の胸中は苦いもので溢れていた。
 自分さえいなければ、こんな往来で鈴を侮辱するような言葉を聞かせることにはならなかった。
 偶然だった。仕方なかった。そう言えば済む話に、恵はしたくなかった。

 だが鈴は恵が考えている以上に強い女性でもある。未だ浮かない表情を浮かべる恵に、鈴は弾むような声で話しかける。

「そういえば、あの後から現れた男の子、恵くんのことすごい理解してたね」
「ああ……。あいつか」
「仲いいんでしょ? あの子が来てから、恵くんちょっとだけ落ち着いたもん」

 鈴の言葉に恵は無意識に目を丸くした。
 自覚していなかったが、確かにあの男が現れた瞬間恵の怒りは抑えられた。そのことにどこか愕然とするなか、鈴は相変わらずのほほんとした顔で言い放つ。

「嬉しいな。恵くんと仲のいいお友達に会えて。また今度、ゆっくり話を聞かせてね」

 ――仲のいい友達。

 恵の頭の中に鈴の言葉が木霊する。
 そしてふいに気付く。いつの頃からか、あの友人が自分の機嫌を声音だけで判断するようになっていたことを。

「………………」

 いつも朝からうるさくて、元気いっぱいで、恵が無視しても返事をしなくても話しかけてくる鋼メンタルの同級生。
 だけどいつの頃からか一緒にいるのが当たり前になって、知とも気付かぬうちに仲良くなっていて、兄弟揃って彼と会話をする日も増えていた。

「…………うん」

 恵は自分のことを話さない。家庭環境も、知のことも、『U』でのことも。何一つとして話さない。
 それなのにあの男はいつも恵に話しかけ、分かりづらい恵の心情を読み解き、時にはこうして人に囲まれる恵を言葉巧みにフォローし、助け出した。

「――あいつ、さ」
「うん」

 思い起こされる数々の記憶は大概がやかましくて鬱陶しいものではあったが――不思議と恵の顔には笑みが浮かんでいた。

「あいつ、バカだけど……。本当に、どうしようもないぐらい騒がしくて時々ものすごく鬱陶しい奴だけど」
「うん」
「……俺にとっては、すごく、いいやつなんだ」

 学校では『僕』ではなく『俺』と言うようにしているのだろう。
 初めて『高校生の恵』を垣間見たような気持になった鈴は、心の中があたたかなもので満たされたような気持になった。

「うん。いい友達だね」
「……うん。俺も、そう思う」

 鈴を見下ろしているようで、実際はあの友人と過ごした日々を思い返しているのだろう。
 それが読み取れるような表情をしていた恵に、鈴は改めて笑みを向けた。

「今度彼のこと教えてね。恵くんが彼とどんなことを話してるのか、わたしも聞いてみたい」
「……大したことじゃないよ。本当に」

 姉にパシられ、時には殴られ蹴られ、しょっちゅう母親と姉の買い物に付き合わされては荷物持ちにされている。そんな不憫でありながらも愉快な男の話を思い出し、恵は今度こそ吹き出した。

「あいつ、マジでロクな話してない」

 英語が分からない。数学が分からない。理科目も分からない。古典も分からない。
 じゃあお前は何が出来るんだ。と突っ込んだ恵に返って来た言葉は、当時の恵には理解しがたいものだった。

『オレに分かるものなんて、友達が“なにを大事にしてるか”ぐらいのもんよ。勉強なんてサッパリわかんねーわ』

 聞いた時は心の底から「何を言っているんだこいつは」と思ったものだが、今なら分かる気がする。
 あの友人は恵が背中に庇っていた鈴におそらく気付いていたのだろう。だから不自然なまでに同級生二人を拘束し、恵たちから切り離した。
 日頃、陰ながら『紳士的だ』とささやかれる恵よりよっぽど“格好いい奴だ”と、恵はこの時初めて思った。

「――また今度、ゆっくり話すよ。あいつとは、一年の時から一緒だから」
「思い出が沢山あるんだね」
「大概がどうしようもないものだけどね」

 再び駅に向かって歩き出しながら、恵はぽつぽつと友人とのことを語る。
 千頭とはまた違ったタイプの愉快な男の話に鈴も声を上げて笑いながら、時に驚き、時に自分の学生時代を思い返しながら恵と共に帰路を辿るのだった。



***



「ケーーーイ! みんなもおっはーよーーーう!」
「うるさい」

 今日も朝から元気で煩い。そんな友人がいつものようにドカッ、と席に着くのを目で追いながら、恵は周りには聞こえない声で珍しく自分から話しかけた。

「……昨日は、ありがとな」
「お? おお、いいってことよ。だって恵ああいう奴らが一番苦手だろ? 友達が困ってたら助けるって」

 ――友達。

 臆面もなく告げられた言葉に恵は少しだけ目を見開いたが、すぐに緩めた。

「……ああ。そうだな」

 今までの恵なら「何言ってんだ」という顔をするか無視をするか、あるいは「お前の勘違いだ」と突き放したことだろう。だが今日は珍しく肯定した。しかも微苦笑付きで、だ。
 そのことに暫し呆然とした山猿だったが、何度も恵の返答を頭の中で繰り返し――ようやく理解した。

「恵がデレた?!」
「……やっぱり今のなし」
「待て待て! 撤回が早えよ! もうちょっと余韻持たせて余韻!」
「一度で理解しないお前が悪い」
「ひでえ! 上げて落とす作戦だ! 性格わっりー!」

 ギャンギャンと騒ぐ友人に、恵は笑いそうになる口元を必死に隠そうと頬の内側を噛む。だが意外と目敏い友人はそんな些細な行動にも気付き、丸い目を更に丸くしたあと脱力した。

「まあいいや。ところでさ、あの時恵の後ろにいた人……恵にとって大事な人なんだろ?」
「ッ!」
「昨日は通り掛かったフリをしたけどさ、本当は店の中から見てたんだ。姉ちゃんが母さんと服選んでる間暇だったからさ。店の外をぼーっと見てたんだよ」

 荷物持ちというものは如何に経験を重ねようと暇な時は暇である。あの時も山猿は終わらない試着にうんざりしてショーウィンドウの向こう側へと視線を投げていた。
 そんな時に見かけたのだ。穏やかに笑いながら鈴と話す恵の姿を。

「滅多なことじゃ笑わない恵がさ、あんな風に笑ってたら誰だって『あ。恵にとって大切な人なんだな』ってすぐに分かるだろ」
「……そうじゃない奴らもいたけどな」

 昨日の二人組を思い出したのだろう。途端に不愉快そうな顔をする恵を、猿は「うははっ」と明るい声で笑い飛ばす。

「それそれ! そういう顔してばっかの恵がさ、あの人の前だと知くんといる時みたいな顔してたからさぁ。オレとしては放っておけなかったわけよ」
「……あっそ」
「うん。そうなんだなぁ、コレが」

 駆け引きも打算もない、純粋な好意。
 本当の“友人”とはこういう間柄のことを言うのかもしれない。と、恵は改めて思いながらそっと目を閉じる。

「……俺も、お前が“友達”でよかったよ」
「…………おお……。どうした。今日すごいデレるじゃん。そんなにあの人のこと好きなのかよ」
「うるせえなあ!」

 思わずバシン! と音を立てて肩を叩いた恵に、気を悪くすることなく山猿は笑う。

「だははは! お前もそういう顔すんのな! 初めて見たわ!」
「ほっとけバーカ」
「ほっとかねえよ、バーカ」
「うっぜえ……」
「だははは!」

 気恥ずかしさと、照れくささと――初めて出来た“心許せる友人”に、いつも澄ましていた恵の表情が崩れ去る。
 そんな恵の姿に山猿はただ笑い、周囲は「恵くんが、笑った……!?」だの「照れてる?! 照れてるの、アレ?!」と大いに騒いでいた。

 勿論この話は多少オブラートに包まれた状態で鈴へと届けられ――鈴もまた、恵に初めて出来た“対等な友人”の話をニコニコとした顔で聞いたのだった。



終わり



 高校生らしい恵くんが書きたかったんだ……。あとはカミシンみたいな明るい子が恵くんの近くにいてくれたらな、という欲望が顔を出した。
 恵くんは基本的に知くんと鈴ちゃん(+周囲の面々)以外にはツン対応だったらいいなぁ。と思って出来たお話。
 本編の中学生恵くんがあんなだったから、あんまり仲のいい子いないんじゃないかと思って、つい勝手に妄想してしまいました。

 このお猿さんは“竜の正体を暴け”ってなっていた時も『別にそこまでする必要ねーんじゃねーかなー』とか思ってたらいい。
 竜の正体が恵だとは微塵も思っていないけど、例えバレたとしても『マジで?! お前すげえな!』って言いそうなとこある。そんで流れるように『サイン頂戴!』って言っては恵に「誰がやるかバーカ」って言い返されて欲しい。

 気恥ずかしいのと、友達に“有名人”扱いされたくないのと、友達にサインするのが嫌だ。っていう可愛い理由があればいいな。

 …………いかん。無駄に話してしまう。

 何はともあれオリキャラがかなり出張るお話ではありましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。



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