05.紫電一閃、刃の如し




 ホストクラブキノタケまで向かうと、やはりそこもリスまみれ。しかも何故か白い花びらが舞い踊っている。…ここ本当にホストクラブ?
 キョロキョロとしていると、誰かに呼ばれたような気がして振り返るけれど、そこには誰もいなくて。

「もぶ山くん、早く早くー!」
「……あ、は〜い」

 少し不思議に思いながら、私はマグパイの跡を追っていった。



05.紫電一閃、刃の如し



 キノタケ内はなぜかたわしとリスと芋で溢れかえっており、そこかしこで一方的に知った顔があたふたと走り回っていたが、中には動じることなく普段通りに振舞っている猛者もいる。

「リスが沢山いるのだよ〜…あっ、お客様?ちょっと待つのだよ、黒服さんを呼んでくるのだよ〜」

 目の前でうさぎのブルーナを抱えているのはトメニアイベントでは癒しキャラだったNUFFIだし、その横で何も気にせずお芋のドンペリ……もとい芋焼酎を瓶ごと煽っているのは、今回男体化したキャラクターの1人であるセストもといSHIDENだ。セストは夢女子で、自分の理想の男を演じるためにホストになったという設定で私もかなり親近感がある。
 NUFFIくんがパタパタと走り去っていくのを見つめていたら、SHIDENさんが私たちに話しかけてきた。

「お二方、来てもらったのにすまないな。今立て込んでいて……ってオイ、そこの金髪は先程の停電で突然やってきた男じゃないのか」
「あ、バレてら」
「逆にバレない方がおかしいと思うがね。こちらのお嬢さんはともかく、MAGGYも一応ここのホストだろう?」
「いやぁそれがさ、この子の……もぶ山くんの探し物を手伝っていてね。ここにあるかもしれないって聞いて、戻ってきたってわけさ」
「探し物?……失礼お嬢さん、お名前は?」

 SHIDENさんの切れ長の瞳がこちらを見て、少し動揺しつつも名乗ってみれば、彼女、いや彼は少し口元に笑みを浮かべた。

「もぶ子さんですね。はじめまして、私はSHIDEN。困っている女性は見捨てられないな。何を探してるか教えて貰えたら、クラブの知人に声をかけよう」
「え、良いんですか?!」
「ああ。どうせこの状態では営業も難しいんじゃないかな……NUFFIさん!」

 黒服がいないのだよ〜、としょんぼりしててけてけやってきたNUFFIくんに、SHIDENさんが声をかけた。

「このお嬢さんがある探し物をしているらしいんだ、手伝ってくれないかな?」
「お安い御用なのだよ!俺はNUFFI、こっちはブルーナ!」
「もぶ山もぶ子です…ありがとうございます、SHIDENさん、NUFFIくん、ブルーナちゃん」
「いいんだ、気にしないでくれ。他に手伝ってくれそうなのは……LICHさんかな?LICHさーん!」

 すごいぞ芋づる式にどんどんホストが集まっていく…顔面偏差値がぶちあがる……。
 LICHさんはトメニアの軍人、異能発動時とのギャップが大人気のキャラクターだ。今回のホストイベントでも専用乙女ゲームが作られてしまうほどのその人気は推して知るべし。
 やってきたLICHさんは隣にポニーテールのホスト……BC財団の警備員、トメニアイベントではリヒカイトさんの剣を借りて死力を尽くしたロミーもとい、今回男装してホストとなったADAMがいた。

 お二人共に事情を話してみれば快く引き受けてくれたので、ほっとして探し物の説明をする。

「『青い鳥』を、探してるんです」
「もしかしてその首に下げてるネックレスみたいな青い羽根の鳥ですか?」
「はい、この羽根が唯一の手がかりで……フランさんにここで見かけたと聞いたので、立ち寄りました」
「LICH、どこかで見たの?」
「見たことは無いけど……綺麗な色ですね」

 ネックレスを天井のシャンデリアにかざしてみれば、光が透けてキラキラと輝いている。その場にいたホストの面々と私とでそれを見ていると、マグパイがああッ、と大きな声を上げた。

「どうしたのマグパイ、そんな大声出して……」
「『青い鳥』だ!見つけた!!」
「えっ」

 指さした方向はホストクラブキノタケの出口の方。SHIDENさん、NUFFIくん、LICHさん、ADAMさんに視線をやると、全員が頷き、私たちは出口の方へと走り出したのだった。



18,07,21



 

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