03.白い氷の溶けるまで




 幸福という概念は、人によって様々だ。私にとっての幸福のかたちというのは、おそらくきっと、今この瞬間全て。

「見てよもぶ山くん!!!!スペシャルウルトラスーパー特盛かき氷だって、食べようか!」

 このひとが目の前にいることが、きっと私にとっての幸せのかたちなのだろう。



03.白い氷の溶けるまで



「いやーーーーーーー美味しかったねここのかき氷!!!」
「頭痛くならないんですか……?そんな一気に食べて」
「なぁに俺は大魔術師だからね!と、言っておけば大体解決するもんだ!!!……さて、」

 カフェの目玉商品であったらしいスペシャルウルトラスーパー特盛かき氷なるものをぺろりと平らげた目の前の大魔術師は、食後のホットティーを一口飲んで私の方を見た。

「俺がかき氷を食べてる合間にもぶ山くんにここに来た経緯を今一度話してもらったけど……」
「なんか、ヒントになりそんなことが何一つなくってごめんなさい」
「そんなことないさ!手がかりってのは必ずどこかにあるはずだよ、君の教えてくれたことのどこかにも、必ずね」

 その言葉と共にウインクをひとつしたマグパイは、ティーカップに残る紅茶を一息に飲み干した。ご馳走様でした、と呟く彼に、私も慌ててアイスコーヒーの残りを流し込む。そんな急がなくてもいいよ、とマグパイからは言われたものの、待たせるわけにもいかないだろう。
 私が全て飲み干したところで、マグパイがぽん、と両手を叩いて私に微笑んだ。

「よし、じゃあそろそろちゃんと探し始めようか!!!」
「あ、はい。……あの、でもどうやって探すんです……?」
「ふふん、簡単なことさ」

 そういうと彼は満面の笑みで私の両手を掬いあげて立ち上がった。

「俺とデートしよ!」



 マグパイ曰く。
 私の持っているこの『青い羽根』が、青い鳥のいる場所まで導いてくれるはずだと言う。しかし、互いに離れていると共鳴はせず、こちらから近づいて距離を縮めなければならないらしい。

「あっちから近づいてきてくれるってことは俺がいる限りなさそうなんだ。だから俺ともぶ山くんの2人でこの船の中を探し回れば、羽根が居場所を教えてくれるはずだ!!」

 初めはデートと言われビビり散らしたが、その説明を受けてなるほどそういうことかとひとりごちていると、マグパイが私の全身をじっと観察していた。

「にしても君、家帰ってすぐこっちに来ちゃっただけあって色々ヨレヨレだな」
「うっ、すみません……」

 そう、私の今の格好はビシッと決っているマグパイとは裏腹に酷いものである。握りしめた青い羽根くらいだろうか、綺麗なのは。
 言われたことに少し落ち込む私だったが、目の前の大魔術師はニヤリと笑い、高らかに人差し指を天に上げた。


「今から君に魔法をかけてあげよう」


 その、瞬間だ。

 最初に変化が起こったのは足元。私を中心にして光の渦が巻き起こったかと思うと、足に光の粒子が集まり青いパンプスへと変化する。

「えっ」

 魔法は終わらない。今度はその光の粒子が上へと広がっていき、黒いスーツだった私の服は薄水色のフレアスカートと白いふんわりとした七分袖のノーカラーワイシャツへと見る間に変わり。

「よし、でーきたっ!」

 光の渦が天にきらりと消えた頃には、私の服装はすっかり変わっていたのであった。

「最後にこの羽根をちょちょっとやって〜、はい、完成!!!俺にしちゃ中々良い感じじゃないかな?!さすが俺ってば大魔術師〜☆」

 私の握っていた青い羽根はマグパイの手の中であっという間にネックレスとなり、そのまま彼は流れるように私にそれをつけた。

「これは、君が持つべきものだ。大事に持っていなさい」
「は、はい」
「よ〜しもぶ山くんも装い新たに、デートに出発だー!!!!」

 そうして私とマグパイは、青い鳥を見つけるための小さな冒険に出たのだった。



18,07,21



 

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