02.青い羽根の理由




 これは夢か、幻か。



02.青い羽根の理由



 ホワイトのスーツに揃いのベスト。黒ストライプのシャツに黄緑色のドニャゴンネクタイ。スーツの襟にはドニャゴンのラペルピンがついている。金髪に少し黄緑の交じった外ハネ気味の髪の毛は、シャンデリアに光ってキラキラと煌めいていた。

 私の大好きなひとが、そこにいた。

「…………マグ、パイ」
「そうそう!!ま、俺のことを知ってるのなんて当たり前ってことだよな!!!なんたって君は『向こうの世界』からやってきたゲストなんだからね……ってオイオイちょっと?!」

 この眩しくてうるさい、でも心から安心する仕草や声色が、私の知っている男と何一つ変わりないことにホッとして。
 気づけば私は、ボロボロと泣いていたのだった。



 いちど張っていた緊張が解けてしまえば、足に力は入らず。優しく促されるままホストクラブの近くにある休憩用のソファに腰を下ろした私は、隣に座ったマグパイに言葉が見つからなかった。
 なんで、どうしてここに、なんの為に?そもそも『向こうの世界』って?聞きたいことは山ほどあった。しかし何より1人でとてつもなく不安だった私にとってマグパイは唯一、私を、もぶ山もぶ子という人間を知っているひとだったから。不安と安堵が一気に弾けてキャパオーバーとなり、私はしばらく泣いていた。

「……そろそろ大丈夫かな?」

 スーツの胸ポケットに入っていたハンカチーフを私に差し出してくれた優しい大魔術師が言うには。

 私の持っていた青い羽根ーー…あれの持ち主である『青い鳥』を探しているらしい。と、言うのも彼曰く、名称としてその名を使っているだけでかつては様々な形でひとに幸福を運ぶ暗示としてのイメージの中の一つ。その『青い鳥』の羽根が私の部屋にたまたま現れたが為に、その時私が考えていたことが限定的な形で叶えられたということだ。

「もぶ山くんのいる世界はアレだろ?俺たちのことが『お話』として成立している世界、もしくは俺たちのいるこの世界と、鏡写しの場所」

 私の元々いた世界と、この世界。この2つが私の願いと共鳴して『青い羽根』が偶然にも世界を繋げた。それによって私が『向こうの世界』から青い鳥が現在いるはずの場所、豪華客船メイジ号へと連れてこられたそうで。

「よっぽど条件がよかったんだろうな。もぶ山くんの願いはおそらく『ホストクラブキノタケに行ってみたい』、青い鳥が今いるのはそのクラブキノタケがあるこの豪華客船メイジ号。……お〜い、言ってること、わかる?」
「あ、あんまり……」
「簡単に言うと、青い羽根のせいで君はこの世界に来ちゃったってこと!!青い鳥を探せば、『向こうの世界』に帰れるだろう」



 俺と一緒に、探してみる?そう微笑むマグパイに、泣きすぎて腫れぼったくなった瞼を押さえつつ頷いた。



18,07,21



 

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