Re:prologue
ずっとずっとずっと、夢に見ていたの。貴方が私の隣に、いてくれたらって。
Re:prologue
残業でくたびれた身体を無理やり動かして、家への道を歩く。もう真夜中だ。電信柱の蛍光灯がパチパチと虫を集めていて、点滅する光が私のヨレヨレのミュールを照らす。その風景が酷く胸に刺さって、心に傷をつけた。
ああ、でも、これで家に帰ったら。家に帰れば、私の大好きな「西京PROJECT」のイベントが待っているのだ。
皆さんは「西京PROJECT」というものを知っているだろうか。界隈では知らないものはいないほどの世界観共有型コンテンツであり、媒体はマンガ、アニメ、ドラマCD、ゲームetc……多岐にわたるのが特徴の人気ジャンルである。その素敵な世界観は公式サイトに事細かに書かれているので、ぜひ見てほしい。
「西京PROJECT」が始動してから5年が経っているが、その勢いは衰えることなくむしろ益々勢いを増している。初めは私たちのいるこの世界と鏡写しに反転した「大西亜共栄圏 天照神国」が中心だったが、イギリスの反転した国、ブリテンやフランスの反転した国であるゴール王国、ドイツの鏡写しの国であるトメニア……少しづつ世界は広がり、その度に心震える壮大なスケールのストーリーが語られてきた。
現在行われているイベントは、ゲームを媒体にした「ホストクラブキノタケ」。今まで登場してきた西京のキャラクターたちがホストに扮し、頂点を目指すというものである。それがどうしても追いたくて、今必死に帰っているわけで。……私の1番愛するキャラクターがたとえ出ていなくても、既に私の生活になくてはならないジャンルとなっていた。
なんとか家に辿り着いて、パソコンのある部屋までノロノロと足を動かす。ぱちん、と部屋の電気をつけてパソコンを起動させて一息ついたところで、ふと床に何かが落ちていることに気がついた。
「……なにこれ」
つまみ上げてみると、それは青い羽根。鮮やかなその青は抜けるような夏の空のようだった。思わず見惚れていると、
「は?」
その羽根が、光り始めて。…………私はそのあまりの眩しさに、目をきつく閉じた。
18,07,21
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