始まりの一歩

お題元さま→ConBrio
* * * *



「"また会おうね"」

 卒業式の日、大好きな友達とこんな約束をした。
 ぼろぼろ泣いて、お世辞にも綺麗とは言えないぐしゃぐしゃな顔をしながら、私は大きく頷いた。
 だけど、本当は、心のどこかでは、その日が待ち遠しい反面、怖かった。

「みんなキラキラしてたなぁ……」

 なぜなら、みんなは希望に溢れてて、きちんと未来を見据えてる。それなのに、私は前が分からない。
 こっちなのかな。あっちなのかな。どこを歩けばいいのかな。
 再び会った時に、自分だけ時間が止まっているかもしれない。自分だけ置いていかれているかもしれない。
 だから、再会が酷く憂鬱になっていた。

「──なんで、なのかな」

 夢がないわけじゃない。
 周りと同じように、叶えたい明日がある。
 それなのに、余計なことばかりが頭をぐるぐる。進むべきか否か、迷って迷って結局答えは消えてしまう。
 どうして、みんなのように「ここに進もう!」と決心することが出来ないのか。自分で自分が嫌になる。

「なんでなの、かなぁ……っ」

 ぽろりと涙が一粒落ちると、待ってましたとばかり溢れ出る。
 ぽと、ぽとぽと、ぽとぽとぽと。伝って、流れて、こぼれていく。

 輝きたいのに。
 会いたいのに。
 みんなと笑って、会いたいのに。

「……」

 ふと、親友を思い出す。
 夢を語ってくれたあの放課後、そういえばあの子も一瞬、何かに怯えているような表情をしていた。
 あの時は気のせいだと思ったけれど、今なら分かる気がする。

──進むのは、怖い。

 未来は予測困難で、厳しい現実だって少なからず知っている。来年は、再来年は、自分は何しているのだろうか。
 想像するだけで息が詰まりそうになった。
 それでも夢に歩むのは、その不安以上に、希望を抱いているから。震える身体を抱き締めて、笑顔で踏み出せるんだ。

「そう、怖いのは、私だけじゃない。みんな大きく強い意志を持って……自分の力で生きていく」

 時には転んで、しばらく止まってしまうかもしれない。過去を悔いるかもしれない。けれどその後悔は、必ず自信と自身の糧となる。

「──歩け。そこが私の居場所だよ」

 少しずつでいい。
 涙の分だけ進められればいい。


 始まりの一歩
 (成長して、再び出逢おう)

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