あの子はだぁれ?










「……おねぇちゃん、だぁれ?」


「私の方こそあなたはだぁれ?」



わたくし、月成桜に何が起こったのかと言うと……

さかのぼること、数分前……












校内放送で林檎ちゃんに呼ばれた私は、何かしたのだろうかと急いで学園長室に向かった

扉を開けた途端、林檎ちゃんと目が合った

けど、シャイニング早乙女もとい学園長は居なかった

居たのは林檎ちゃんと日向先生だけ



「やっと来てくれたわ〜」


「遅かったじゃねぇか」


「スッゴく急いで来ましたけど!?」



ちょっとだけイラッとする発言は置いといて…問題はこのあとだった



「桜ちゃんにお願いがあるの」


「面倒なことはやりませんからね」


「ついて来て♪」


「無視された〜…」



半ば無理矢理林檎ちゃんに連れられて来たのは、とある部屋

電気の付いていたその部屋に入ると…



「……おねぇちゃん、だぁれ?」



こうして冒頭に戻るわけだ

真ん中にあるソファに座っていたのは、小さな男の子

本当に小さい、それも育ちの良さそうな



「私の方こそあなたはだぁれ?」


「あのね、この子は私の親戚の子なの。名前は侑(ゆう)くん」


「林檎ちゃんの……」



どうりで可愛いわけだ

でも、なんでその侑くんが学園にいるの?

私に紹介した理由は?



「相談って言うのはね、この子…一週間だけ預かってくれないかしら?」


「……………は?」


「この子の両親がお葬式で結構遠くに行かなくちゃならなくて、忙しいから侑くんどうしようって言うから…じゃあ、預かってあげるって言っちゃったの♪」



何を言ってるんですか

林檎ちゃんもその場のテンションに身をまかせてはいけないよ



「本当は私が預かってあげたいんだけど、私も一応教師だし現役アイドルだから…部屋にいる時間なんてほとんど無いの。
本当は龍也にでも頼もうかと思ったんだけど、龍也も同じ理由で無理だって言うから……」


「私に頼もうかと思った」


「そうなの♪」



なんでよりによって私に……

ほかにいくらでも面倒見の良さそうな子はいっぱいいるのに…



「桜ちゃんしか頼れないの!お願い!!」



あの林檎ちゃんにそんなに頼まれたら断れないじゃないか



「……はぁ…わかりました」


「キャー!ありがと〜♪」



龍也先生ですらため息をついてる

私が一番めんどうなんだからね!!



「あ、あとね、一つだけ部屋が空いてて、そこに侑くんの荷物は全部置いておいたから、そこ使ってくれる?」


「わかりました。けど、林檎ちゃん?」


「どうしたの?」


「侑くんって学園内歩いていいんですか?」



ふと思ったのだが、私と侑くんが一緒に歩いていても問題はないのだろうか



「大丈夫よ〜♪侑くんも部屋の中だけじゃつまらないものね」


「了解です」



私は林檎ちゃんに返事をすると、侑くんの元に行く

私は侑くんの前に座る



「はじめまして、侑くん」


「…はじめまして」


「今日からよろしくね」


「よろしくお願いします…おねぇちゃん」



こうして侑くんと私の生活が始まった







―――――――――――………







私と侑くんは林檎ちゃんに言われた部屋に行く

最初に居た部屋からは結構遠い場所だ

だから………



「……………」



侑くんはだんだん歩くスピードがゆっくりになってきた

もともと、侑くんに合わせてゆっくりだったのが、もっと遅くなった

疲れているのが目に見えてるのに、侑くんは一切疲れたとは言わない



「…侑くん、疲れた?」


「………ううん」


「本当に?」


「……………うん」



私が聞いても頑なに首を横に振る



「おねぇちゃんには我が儘言っていいんだよ?」


「…いいの…?」


「うん」


「……おねぇちゃん、疲れた」


「ふふっ、わかった。おいで?」



私は侑くんを抱き上げる

その身体はすごく軽かった






―――――――――――………






しばらく歩くと見覚えのある帽子を発見した

小さくてひょこひょこ歩くそれの目は私を捕らえ、顔を真っ青にさせた



「翔くん、おはよ」


「お、おはよう」


「……おねぇちゃん?」



私はいつものように挨拶をする

侑くんは知らない人で少し不安だったのか私を見つめる

それに応えるように微笑んであげる



「おまっ、そそそそそその子供どうしたんだよ!?」


「翔くん、動揺しすぎ…」



私が苦笑いをすると、我に返ったのか、深呼吸して自分を落ち着かせてる



「で、どうしたんだよ。もしかして桜の子供じゃないだろうな」


「違うよ。実は………」



私は今までの経緯を話した

翔くんは哀れみの目で私を見た



「お前も大変だな」


「子供は嫌いじゃないからいいんだけどね。あんまりバレたくないというか……」


「あー……」



翔くんは納得したようで苦笑い



「で、今から林檎ちゃんの言われた部屋に行く途中なの」


「………………」



急に翔くんが黙ったからなんだろうと思えば、侑くんがジーっと翔くんの事を見ていた



「侑くん、どうしたの」


「……おにぃちゃん」


「…俺か?」



翔くんがそう言うと笑顔で頷く侑くん



「侑くん、このおにぃちゃん、好き?」


「うん!」



私が侑くんを下ろすと、侑くんは翔くんの足にくっついた

翔くんはそのまま抱き上げる

子供とじゃれてる翔くんは究極に可愛い

本人に言ったら怒られるから言わないけど



「桜、部屋に行くんだろ?」


「あ、うん」


「俺もこいつ連れてくよ」



ニッコリ笑いながら言われたらダメ何て言えない

言うつもりもないけどね

私は快くOKした












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