私の大勝利















少し遅めの昼食をとりに、私は食堂に来ていた。

と、言っても
私は買っておいたパンをこの暑い中、外で食べようという気にならないので、食堂に来ただけ。

みんな食べ終わったのか、生徒の数は少なくて空いている席はたくさんあった。

私は一番端に座り、パンを頬張る。



「あ、桜ちゃん!
今からお昼ですかー?」


「そうだよ」


「ご一緒してもいいですか?」


「うん」



お弁当箱を持った那月くんは、隣の席に座る。

可愛らしいぴよちゃんのお弁当箱。



「桜ちゃん、今日はトキヤくんと一緒じゃないんですか?」


「あ、うん、
私がちょっと用事があってね。」


「逃げてきたわけじゃないんですねー。」


「あー…、うん」



ハッキリと否定しない私が居た。

で、ここで疑問。



「なんで那月くんは前に座らなかったの?」


「決まってるじゃないですか!トキヤくんが来たときに、極力セクハラされない為ですよぉ!」


「私にとってはどっちもどっちだと思うんだけど…。」




まぁ、確かに一ノ瀬くんよりは危険度は低いが。

なんでこんなに可愛い顔してセクハラしてくるのか分からない。



「そこに可愛いものがあるからです!!」


「だから君は心の声を聞かないでくれ」


「…ごめんなさい」



というか、セクハラ肯定したよ。

まぁ、今更か。

はむっ と一口パンを食べる。

隣を見ると那月くんもなんだかわからない物体を食べようとしていた。

……人の味覚っていろいろなんだなぁ……。

お腹壊さなきゃ良いけど。



「…おや?」



あー…

見つかった。



「遅い食事ですね。
どうかしたんですか?」


「一ノ瀬くん。
ちょっと先生に呼ばれててね。」



遅い食事って、一ノ瀬くんも手に持っているのはお昼ご飯だろうに。



「あれぇ?
トキヤくんもお昼ですか?」


「えぇ、練習室を借りて曲をチェックしていたらこんな時間になっていたので」


「……」



こんなに音楽に対しては熱心ですごくいいなって思うんだけど、
なんで音楽を忘れると別人みたいになっちゃうんだろう。



「ご一緒してもよろしいですか?」


「はい!もちろんですよ〜!」



あれ、那月くん。

さっきの言葉と行動が比例していないんだけど。

まぁ、いっか。

もちろん、一ノ瀬くんは私の前に座る。

相変わらずバランスを考えたご飯だなぁ。

私とは大違い。



「……………」


「…どうしました、桜。さっきから私の顔を見つめて」



いつの間にか私は一ノ瀬くんをガン見していたらしい。



「あ、ううん。
なんでもないよ?」


「やっと私の魅力に気づいたのですか?」


「……………」


「……桜?」



一ノ瀬くんの魅力……

そうだ。

元々一ノ瀬くんはとっても魅力的なんだよ!

だから私も声をかけた。

それが、こんなセクハラ魔人になったんだ。



「そうだよ!!」


「「!?」」



私が大きな声をだしたら二人ともびっくりした顔で私を見た。




「一ノ瀬くんって、
カッコイイんだよ!!」


「っ!?」


「どうしたんですかぁ、桜ちゃん」



私は根本的なことを忘れていた。

確かに、アイドル育成学校だから、かっこいい人はたくさん居る。

だからこそ忘れていた事実

一ノ瀬くんはかっこよかった!!!

セクハラのイメージ強すぎて忘れてたよ…



「二人とも黙ってセクハラしなければイケメンなんだねぇ」


「…僕も含まれていたんですねー…」


「…………」



私と那月くんがそんな会話をしていても一ノ瀬くんは黙ったままだった。

さすがに不思議に思った私達

一ノ瀬くんを見てみると……



「っ……」



箸を持ったまま、
何かに悶えていた。

え?

なんで?

微かに見える耳は真っ赤だった。



「トキヤくーん、大丈夫ですかぁ?」



那月くんが呼び掛けても返事はない



「一ノ瀬くん?」


「…はい…何でしょう…」



あ、生きてた。



「どうしたの?」


「……ぃ……です…」


「え?」


「桜が悪いんです!!」



はい?



「桜が…桜が"かっこいい"とか言うからぁ!!」


「乙女かっ!!」



かっこいいって言われて真っ赤になるなんて。

いつものクールな一ノ瀬くんは何処に行った!?

ん?

もしかして一ノ瀬くんは……



「「押しに弱い」」



那月くんとハモるほど明確だった。

だって言った瞬間
また真っ赤になるんだもん。

可愛いところがあるじゃない。



「ふふっ、一ノ瀬くんは攻めるのは得意でも、押しには弱いんだね」


「桜ちゃん、いいこと知っちゃいましたねぇ」


「そうだね、那月くん」



いつか真斗くんに言った"弱点を見つけてやるんだから"が現実になったよ!



「で、那月くんの弱点は?」


「え〜、教えませんよぉ」



那月くんの弱点さえ知れば、もうセクハラから解放されると思ったのに。



「でも、これで少しはセクハラ減るかな」


「負けません……負けませんから、私は!」



セクハラに負けるも何も……

まぁ、とりあえず…



「一ノ瀬くん、ご飯食べたら?もう時間ないよ?」



時間は午後の授業が始まる10分前だった。

















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