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結局あの後もリゾットの部屋できちんと2回目があり、私の腰は使い物にならなくなった。生憎今日は任務も何もないから良かったものの…、というかそれを知っていてヤったのかもしれないが。起きるともう隣にはリゾットの姿はなく、時間は9時を示していた。しょうがない起きるか、と腰をあげ昨日の激しさにため息を吐く。

いくら仕事がないといっても雑務はいくらでも湧いてくる。表向きはリゾットの家兼アジトの居候なわけだから。冷蔵庫を確認して買い物に、その前に洗濯物を洗わなきゃな。主婦か。

リビングに降りるとソファで横になっているメローネがだるそうに顔をあげた。徹夜でベイビィを教育してたのであろう、机に上にベイビィ・フェイスと手袋が置いてあり、あのマスクもしていなかった。

「サクラか、おはよ」
「おはよ、徹夜明け?」
「あぁ、…とてもいいベイビィだからって熱を入れすぎたな」

そう言うとまたソファに頭を填めた。あの洋服じゃ寒いだろうと仮眠室から毛布を持ってきて掛けてやるが、余程疲れているのか全然起きる気配はない。そっと綺麗な髪を撫でてやると身動ぎをするものの、また深い夢の世界に旅立って行った。

洗濯物を洗っている間に買い物に行こうと冷蔵庫を確認し、必要なものをメモする。こういう時にギアッチョがいると車出してくれるんだけどな。そう思いタイミングよく来たらいいのにと、ドアをちらりと見るが流石に過信しすぎたようで物音ひとつしない。しょうがない、寂しいけど一人で行くか、と財布を持つ。

ふと、玄関の前の鏡を見た。なんとなく、本当になんとなくだったんだけど。目が合った気がしたんだ、イルーゾォと。

「イル」

これで居なかったらただの独り言なのが恥ずかしすぎるけど。

「……なぜわかったんだ」
「目が合った気がしたの、一緒に買い出し来てくれる?」

そう聞くと、返事を返す前に鏡から出てきてくれた。よかった、居てくれて。休日スタイルで髪の毛は高い位置で纏めており、服も普段着だ。イルーゾォは本当に優しい。口はそこそこ悪いけど、不器用なだけだってわかってるし、歳の近いお兄ちゃんみたいな感じだ。

「今日の夜は何が食べたい?」
「アマトリチャーナ」
「パスタね、それなら色々種類作ろうか」

今日任務に行ってるのはソルベとジェラート、あとはギアッチョだっけ。ホルマジオは任務終わるはずだし、まぁパスタなら山ほどあるし人がいてもいなくても問題は無いだろう。

近くのマーケットで野菜やら肉やら沢山買い込む。イルーゾォが居るからそこそこ買っても大丈夫だろう。お酒…、そうだな、ワインも買おう、久しぶりに酒盛りしたい気分。

「ワインも買うのか?」
「えぇ、イルも飲みたいでしょ?久しぶりにみんなでお酒飲もうよ」
「ほんと、サクラはあいつら潰すの好きだよなァ」
「勝手に潰れてるだけよ」

ドカドカとみんなの好きなお酒を入れて、会計を済ました。やっぱり重いものはイルーゾォが持ってくれて、あぁ可愛いなぁって思ってると、ふと目が合い見すぎと言われた。

マーケットから出ると、買い物に来た御婦人に素敵な旦那さんねと言われ、笑顔でグラッツェと返せばイルーゾォはどことなく照れていた。旦那さんだって、と悪戯っぽく話しかければ、まぁ兄弟には見えねぇだろと言われてしまった。

「歳の近い兄妹、なんて思ってた」
「似てねぇんだよ」
「そう?」

イルーゾォはわざわざ立ち止まり私の頭のてっぺんから足のつま先まで舐めまわすように見るとニヤリと笑う。

「あぁ、こんなにスタイルもよくて顔もいい、性格はちと難ありだが、おれには似てもにつかねぇよ」

そんなことないと思うけど。そう言いかけた口はため息に変わった。本当にこの人達は私の前では油断し過ぎじゃないかしら。表情も行動もすべて自然体すぎる。イルーゾォの中で私の存在は“許可”されてる存在だって。

「…随分と過大評価してくれるのね。性格以外」
「あぁ、性格…、いや男癖が悪すぎる」
「それは私にとって褒め言葉よ」

再びアジトに向かって歩き出す。何も言わなくても歩幅を合わせてくれる彼が可愛い。

「そうだったな、そんな所も含めておれはお前が好きだぜ」
「とんだおバカね、でもグラッツェ、私もイルが好きよ」

ふと、見上げた空は、綺麗なオレンジ色をしていた。



アジトに帰るとホルマジオが帰ってきていた。リゾットに報告を済ませた後だろう、リビングでメローネが爆睡してるのにも関わらず大声でプロシュートと雑談していた。ホルマジオが私たちに気づくとニヤニヤと話しかける。

「なんだァお前らデートかァ?」
「デートなんて色気あるものじゃないわ、買い物付き合ってくれてたの」

イルーゾォに洗濯物やってくるから荷物頼んでもいい?と聞くと、しょうがねぇなぁと私の分の荷物も持ってくれる。ありがとうとキスをすると照れるどころか唇を舐めてきた。私が少し驚いてみせるとイルーゾォは満足そうに台所へ歩いていく。何気ない一日だけど、こんな日がいつまでも続けばいいのに、なんて叶わない願いをしてしまうほど、私の毎日は意外と充実しているのかもしれない。




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