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微かな明かりの入る窓から外を見ると、もう夕方で。昨日1日遊んだ代わりに、今日は朝からずっと書類仕事だった。そろそろ今月の分け前の話をするだろうから、その金額等の計算書類もまとめなきゃだし、って、誰もやらないから私がやってるだけなんだけど。リゾットばかりに頼っていられないし、以前ホルマジオやイルーゾォに任せたら大変なことになったから、それ以来他人任せにしないことに決めたのは私だった。

暗殺業という仕事柄、ほかのギャングチームにも仕事内容やメンツ等おおやけに出来ないのを良いことに、報酬は少ない。腕前は1級品なのにも関わらず報酬が増えないのはボスが1枚噛んでいるに違いないけど、今は我慢するしかないのかなとも思う。ギアッチョやソルベが頻繁に怒っているけど、そうしたって何も変わらないのだ。時代が進化していく今、暗殺だって需要がなくなってしまうことを畏れなくてはならない。だからといって、私達はもう表で生きていく手段もツテもないのだから、やっぱり弱みを握られているような感じはしなくもないのだが。先を考えるといくらでも溜息が出てきてしまう。

ふと外から足音が聞こえた。今朝任務に出たプロシュートとペッシ、ホルマジオだろう。最近プロシュートはペッシを色んな任務に連れて行くようになった。ペッシのスタンドは詮索に優れているからまだ実践とまでは行けないけれど、場数を踏んだ方がいいに越したことはない。足音からして誰も怪我してないみたいで、ガチャりとドアが開いた。

「おかえりなさい」
「あぁ、報告書渡したらサクラに渡してぇもんがあるからまだ仕事してろよ」

プロシュートはリビングで作業してた私の頭をガシガシと荒っぽく撫でれば、何やらもう片方の手に報告書と紙袋が。また何か買ってきたのね。

「えっ、残業しろっての?」
「住み込みなんだから残業もくそもねぇだろうがよ」

盛大な溜息と共にリゾットの執務室に歩いていった3人を横目に、さっさと終わらせてしまおうと書類に目を戻した。

みんなの予定を全て把握している訳では無いが、自分自身のスタンドのおかげで色々わかることがある。私は“匂い”に関するスタンド使い。人には個人個人の香りがある。それは誰一人と同じものは無いから、例えばこのアジトに誰が何日来ていないか、寧ろ誰が何日間ここに居るかなど考えるよりも前に分かってしまう。…誰がどれくらい風呂に入っていないか、そこらの女を抱いて帰ってきたなんてのもね。

だからわかるのよ、ソルベとジェラートが最近アジトに顔をみせていないことを。



「終わったぜぇ」

幾らか時間が経って、リゾットへの報告が終わった3人がリビングに帰ってきた。ドカッと私の隣にホルマジオが座り肩を組まれる。片手には台所で取ってきたのであろう酒瓶を持っていた。

「今日は早かったね。それで、渡したいものって?」

やっぱりプロシュートの持っていた紙袋を渡される。紙袋のデザインで私の好きなブランドの物だって分かるけど、空気は読む。落とされるように渡されれば、音を立てて腕の中に収まる。隣のホルマジオも興味深そうに中を覗く。

「こういうの、好きだったろ?」
「わぁっ、黒のワンピースね!とっても綺麗!」

入っていたのはぴっちりとした真っ黒のワンピース。洋服のセンスがめちゃくちゃ個性的なこの暗殺チームで、その条件に当てはまるのは私も例外ではなく、着る洋服といえばぴっちりしたものか露出の激しいもの、色は黒や白のモノクロばかりだった。

「任務帰りに見かけてな、似合うと思って買ってきた」
「毎回聞くけど、貰っていいの?」
「毎回言うけどな、お前に買ってきたんだ」

ふーっ、と煙草の煙を吐くと口角を上げ笑う。

「ふふ、ありがとう」

私は全てが愛おしくなり、手の中にあるワンピースをぎゅっと抱きしめた。まだお店の匂いが残るそれを私のお気に入りの匂いに変える日が楽しみだ。そしてきっと、このワンピースを脱がすのはプロシュートだろう。

「今度はこれ着てデートしよ」
「あぁ、そうだな」

どんなデートになるだろう。にやにやが抑えられないままへらへらと笑えばホルマジオに小突かれた。金が入る日も近いから今日は呑もうぜと言われ、さっきまでその金の計算をしていた私は供給されている金額の少なさを思い出し苦笑いをするしかなかったが、素直に頷いた。

暫くしてメローネやギアッチョ、イルーゾォが帰ってきていつも通りの酒盛りに。夕飯兼おつまみを沢山作って、べろんべろんになるまで呑み続ける彼らを見て笑いながら過ごす。酒に弱いわけじゃないけど、みんなといるとつい場酔いしてしまうのが悪い癖。

最終的に私はリゾットの膝の上で2人仲良く朝を迎えるのだ。




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