short story(うたプリ過去) | ナノ


▼ 確信犯は誰だ!

「トキヤって童貞かな?ずっと芸能界にいたから恋仲とかなったことないんじゃないかと思うの」
「えー、あの見た目で?彼女の一人や二人…」
「音也」
「…ごめん、トキヤ」
「残念、音也」
「名前も知ってるくせに音也をからかわないで下さい」
「いやー、可愛いからつい」

今、私たちはとある居酒屋にいる。ST☆RISHのツアーが終って、彼らと作曲家ふたりでの打ち上げの場をもうけたのだ。 今、来てるのは音也とトキヤと私だけで、レンと真斗とセシルは遅くなるって聞いていた。だけど私たちが到着しても那月くんと翔ちゃんとハルちゃんは来ていなかった。連絡してみるとハルちゃんのお仕事が少しだけ長引いたようで迎えに向かったようだった。仕方なく私たちは先に呑ませていただいているわけで、疲れた体に命のビールを注いでいたのだった。

「そういえばさ、音也は彼女とは上手くいってる?」
「えぇ!?」
「音也…?」
「いやいや!居ないからね、彼女なんて!」
「トキヤ、顔」
「名前、いい加減にしてください」
「へへ」

空腹にアルコールは宜しくないのと、最近の疲れが祟ったのか酔いは比較的早く回っているのが自分でもわかっていた。トキヤはお酒は呑まないのだ、もうこの時間にアルコールなんて体にいれたら太るっていって一口も口にいれないらしい。特別な日なんだから許してくれたっていいのにね。

「よー、遅くなった」
「名前ちゃん、久しぶりですっ!」
「すみません、私のせいで遅くなってしまって」
「いやいや全然大丈夫だよー、レンと真斗とセシルも遅れてくるって」

酔いもいい感じに回った頃、翔ちゃんと那月くんとハルちゃんが来てくれた。久しぶりに会えた那月くんに抱き締められると、とても甘い匂いがした。この間柔軟剤のCMの撮影があるって言ってたからその商品の匂いかな?那月くんにとっても似合ってるかわいい匂いだな。ハルちゃんにもハグをすると、もう何回もしてきたのにまだ照れてくれるのがかわいい。そんなハルちゃんをトキヤの隣に誘導して座らせる。

「翔ちゃんは私の隣」
「おう」

拒否しない翔ちゃんが本当に可愛い。最初こそ私の隣に座るもの恥ずかしくて渋ってた時期もあったけど、もうみんなの前では関係なく一緒にいてくれる。

「翔ちゃん、おいで」
「は?」
「翔ちゃんの席は膝の上」
「…お前、酔ってんのか?」
「うん、そうだね」

無理矢理私は翔ちゃんを抱きしめる。今日はジーンズだから、胡座をかいて翔ちゃんを真ん中に座らせたい気分なのだ。口では拒否してるけど、結果的には座ってくれるのには驚いて心臓が爆発しそう。なんだこの生物、可愛すぎる。身長的には私の方が、翔ちゃんの身長より少し高いのだ。だから、私の顔は翔ちゃんの肩に乗せてすんすんと翔ちゃんの事を堪能する。実際ツアー中は翔ちゃんとはほとんど会えなくて、ようやくこうやって触れることが出来るのだ。だから少しくらい多目に見てくれ。視線でなにしてんだって言いたいのはわかるんだよトキヤ。君以外は気にしないよ?もういつものことだからさ。

「翔ちゃん、可愛い」
「そうか」
「ギュー」

お腹あたりをギューってする。翔ちゃんの匂いがすげー落ち着くんだよなぁ。やっぱり何だかんだ格別だよね。

「名前、くすぐったい」
「んー」
「酔い潰れんじゃねぇぞ?送れないからな」
「えー、ホント?」
「ホント」

ちらっと翔ちゃんを見ると口元が笑ってる。嘘ついたね?実は平気なんじゃん。

「名前、レン達から何か連絡がきてませんか?」
「きてないよ」
「見もしないで答えないで下さい」
「ごめんごめん」

お気に入りの真っ赤な鞄の中からガサガサと携帯を探す。濃いピンク色をしたそれは、本当に何も反応がない。

「ん。本当にきてませんでしたよー」
「あ!真斗からメールきたよ!」
「…なんで私じゃなくて、音也…?」
「お、怒らないでよー」

内容は遅くなります、だって。残念だね、それはあたしも知っているのだよ。トキヤ達がなんか言ってるけど、よく聞こえないし何杯目かわからないお酒を腹に収めると私の機嫌は最高に良くなる。

もうみんなといるのが普通になったけど、最初こそ私がここにいていいのか不安になることもあったのだ。ST☆RISHとしてデビューする時に彼らとハルちゃんと一悶着あったのは知っている。そこに割ってはいるようなものなのだ。さすがに私だって戸惑うし、正直居ずらかった。だけど学園にいる頃から翔ちゃんのパートナーとして作曲活動をしていた私にだってプライドがあったのだ。翔ちゃんの曲は私が作りたい、その思いだけでここまで登り詰めたのだ。愛の力って偉大ね。

「翔ちゃん」
「どうした」
「なんで、こんなにかわいくなっちゃったんだろうね」

昔から可愛かったけれどね。でも私が翔ちゃんに提供する曲はかっこいい系のものを多くしている。それは可愛いよりかっこいいって思われたいという翔ちゃんの考えを知っているからなんだけど、私の目にはどんどんかわいくなるしかっこよくもなる。大人になった、といえばそれまでなんだけど、魅力的な男性に成長したと思う。そんな彼はは普通に嫌な顔をして、振り返る。

「…いや、別に自分で自分を可愛いって思ったことねぇし。俺に聞かれても」
「なんでー」
「…お前が居るからじゃねぇ?」

翔ちゃんはゆっくりと私の胸に寄りかかる。お腹に回していた私の手をとると、指の間に自分の指を絡め弄り始めた。

「お前が可愛いとかかっこいいって言うから、俺は可愛くなるしかっこよくもなれるんだよ。お前のお陰で自分に自身が持てるし、どんな自分でも俺なんだって知ることができた。全部、お前がいてくれたからなんだぜ」

たぶんな、って付け足す翔ちゃんの少し赤くなった頬は、私をドキドキさせるには充分すぎた。

「…好き」
「俺もだぜ、名前」




確信犯は誰だ!
(翔ちゃん…君はなんて罪な人なんだ…!)

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