きになるあのこ | ナノ




ぜんぶぜんぶ三郎が悪いと思う。


最近、新しく事務員になったという女の子が現れた。どうにも近頃人手が足りなかったらしい。私と同年代である彼女はみんなが口を揃えて言うくらい、『ふつうに』いい子。性格もふつうに良いし、仕事もふつうに出来るし、容姿だってふつうにかわいらしい。どこまでもふつう。誰かに熱心に好かれたりだとか、嫌われたりすることもなく、いつの間にかふつうに溶け込んでいた。そんなに関わりはないけれど、私だってそう思ってた。その事実に間違いも嘘もない。


三郎が悪いんだ。

だって、三郎があの子ばっかり構うから。だって、三郎があの子にばっかり悪戯するから。だって、三郎があの子の話ばっかりするから。だから、だって、だから、だから。


きっとあの子は何もしてない。あの子には何の非もない。そう頭ではわかっているし、納得もしている。それでも、そうわかっていても私の中のどこか奥深くに居座っている気の遠くなるような苦しい苦しい感情は、三郎があの子の話をする度に、三郎があの子といるところを目にする度に、どんなに自分に言い聞かせても収まることを知らなくて。それどころかどんどんと大きく大きく育っていくそれを、私にはもうどうすることもできない。ああ、なんておそろしいことだろうか。



ただすきなだけなのに。





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