まるさんかくしかく | ナノ
出発からちょうど一週間が経ち、やっとおつかいが終わった。内容が濃かったため、長かったようにも短かったようにも感じる。何はともあれ、大きなミスをすることもなく忍務を遂行出来た。ただ、少し足を痛めてしまったけれど。
こん、こん
「はあーい」
がちゃ、
「あ、なまえちゃん!」
「こんにちは、小松田さん」
「こんにちは!うわあ、久しぶりだね〜。あ、入門表にサインお願いしまーす」
「ふふ、お久しぶりです……はい、どうぞ」
入門表に名前を書き、報告の為に学園長先生のもとへ向かう。実は、帰ったときに入口で新しく事務員になった彼女に出迎えられたらどうしよう、などと憂いていたのだが、その必要はなかったみたいだ。……ん?ちゃんとお仕事してるのかな。
そうこうしながら歩いているうちに早くも学園長先生の部屋に着いた。
「…学園長先生、」
「ん、なんじゃ……おぉ!みょうじくんか!」
「はい。只今帰りました。…早速ですが、今回の件について報告いたします」
その後、なるべく早く終わらせたいので簡潔に要点をまとめて報告する。
「そうかそうか。うむ、よくやってくれた。次もよろしく頼むぞ」
「はい。では、失礼します」
ふう、これで今回のおつかいは本当に終了。…よし、着替えたらみんなに会いに、『ただいま』を言いに行かなくちゃ。…なんだかわくわくしてきた。早く会いたいな。みんなどんな顔するんだろう。
着替えを済ませた後、どこにいるのか分からないので、だいたいみんながいそうな所をフラフラと歩き回る。不思議と足の痛みも気にならない。
「あれ、なまえ先輩?」
「わ、三之助!…何してるの?」
「教室に行くんです」
……三年生の教室は逆方向じゃないかな。あぁ、また迷ってるのか。うーん、連れてってあげようか。でも真っ先にみんなの所に行くって約束してたんだよね…。いやいや、困ってる後輩を放っておく訳にはいかない。
「三之助、私も着いてっていい?」
「? 別にいいですよ?」
着いていくと言っても本当に三之助に着いてったら辿り着くのは夕方、なんてことになりかねないので私が三之助の手を引いて歩く。
「あ、そう言えば五年生のみんなのこと見なかった?」
「五年生…あー、さっきの池の近くで見ましたよ」
池…なら、ここから三之助を教室に送り届ける途中に近くを通る。
「そっかそっか。ありがとうね」
「や、でも今は行かない方が…」
「え?……あ、」
前方に青い集団を発見。見知った顔が四つある。思いの外近くにいたようだ。少し注意すれば話し声も聞こえる距離にいる。
「なまえ先輩、ちょっとあっちの方行きません?」
「なんで?教室はこっちだよ?」
『───だよね、宮崎さん』
『くすくす、そうだね』
…宮崎、さん?
よく見てみると、青い集団の中にくのいちのそれとは違った、淡いけれど華やかな桃色で身を包んだ彼女がいた。なんで。なんであの娘があそこにいるの?
「なまえ先輩、あの…」
ぎゅ、と三之助が私の手を強く握る。そうか、三之助はこれを知っていたから私を遠ざけようとしたんだ。
『あ、ねぇ、みょうじさんはまだ帰らないの?』
『なまえ?』
『うん!』
『一週間つってたからもうすぐ帰ってくるんじゃないか?』
『そんなことよりさ、』
なんで彼らの中心にあの娘がいるの。どうしてみんな楽しそうに笑ってるの。あそこにいるのはなんで私じゃないの。なんで、どうして、なんでなんで。私のこと、『そんなこと』だなんて、それはつまり、ねぇ、そういうこと?
ずきんずきん
(思い出したように足が痛みだした)(あぁ、痛いいたい、イタイ)