まるさんかくしかく | ナノ




毎日が楽しかった。そりゃあ辛い訓練とかもたくさんあったけど、それでも自信を持って楽しいと言えた。何故なら、私の周りには大好きな人たちがいたから。みんなの笑顔を思い出せば、なんだって頑張れた。この幸せが永遠に続くわけではないことは知っていたけど、それはまだもう少し先の、少なくともここを卒業してからの話だと思っていた。












先日、空から人が降ってきた。その人は変わった服を着た、とても可愛らしい人だったそうだ。何の訳があってかは知らないけれど、学園長先生はその人を受け入れ、この学園の事務員にした。

正直、空から降ってきたという時点で胡散臭いというのに、誰も怪しいと思わないのだろうか。そう簡単に受け入れていいものなのだろうか。

しかし、そう疑問に思っているのはどうやら少ない…というかむしろ私だけ?のようで、その不思議な少女の周りにはいつもたくさんの人がいて、みんな幸せそうな笑顔を浮かべていた。…これでいいのか忍術学園。

と言っても私はその少女──宮崎芽衣というらしい──と未だ面識がないのでその人格等については判断しかねる。


「っ、きゃっ…!」

考え事をしながら歩いてると、小さな悲鳴のような声が聞こえてきた。しかし、辺りを見回しても人影は見当たらない。…もしかして。

しばらく歩いていると、予想通りというかなんというか、地面に穴が空いていた。一応授業中の時間(私はいま自習中だ)なのに、誰が落ちたんだろう。「大丈夫ですか?」と声を掛けながら覗いてみると、そこにはさっきまで私の思考の大半を占めていた人物がいた。

「………」

…? 先程の私の呼び掛けには応答なし。何故かじっ、と顔を凝視されている。

「あの、大丈夫ですか?」

「あ、す、すみません!その…助けてくれませんか?」

よかった、今度は返事してくれた。

「はい。えっと…手、掴めますか?」

「はい!」

彼女が手をしっかり掴んでいることを確認してから、よいしょ、と少しおばさんくさい言葉と共に穴から引き上げる。

…あ。そこで私は重要なことを忘れていたことに気付く。今朝シナ先生に頼まれてたこと、忘れてた!…よかった、思い出して。


「お怪我、ありませんか?」

「大丈夫です!あ、えと、ありがとうございました。本当に助かりました!」

「いいえ、ご無事で何よりです」

「あ、あの!」

「はい?」

「私、芽衣…宮崎芽衣といいます!最近ここの事務員になりました。あの…お名前、」

「…みょうじ、です。では、急ぐので」


早くしなくては、と急ぎ足でその場を去る。感じが悪くならないように笑顔も忘れずに。第一印象って大切だもんね。

噂通り容姿も、声も、態度もすべてがかわいらしい人だった。ああいう人だから、誰からも好かれているんだろうなあ。最近よく見かける風景にも妙に納得できた。…でも。でも、どうやら私は彼女があまり得意ではないみたいだ。






はじまりの音
(ついに出遭ってしまった)(何かが変わり始める)





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最近よく見かける風景とは芽衣ちゃんが忍たまたちに囲まれてるところです




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