まるさんかくしかく | ナノ
「もう十分、満足したでしょう?」
「…、え?」
言われてる意味が、わかりませんでした。満足?私が?何に?
予想していたものとはあまりにもかけ離れたその言葉を、私の頭は理解することが出来ません。
「言ってる意味がわからないかい?」
「だからね、つまり、じゃまなの」
「この学園に、きみはいらないんだよ」
「っ、伊作くん…?タカ丸、くん?ねえ、二人共どうしたの?…何、言ってるの?」
なんですか、それ。邪魔?いらない?そんなの、嘘。だって、私はこの世界の天女さまなんでしょう?誰からも愛される存在なんでしょう?「かわいい」「きれい」「うつくしい」「すき」「あいしてる」この世界に来てから、そう言われ続けました。惜しみない愛を貰いました。二人だって私のことが好きな筈です。なのに、なんで?
「あなた…天女さま、なんでしょう?」
「なら、もう天にかえった方が良いんじゃないかな」
「…え、でもっ、…だって、」
みんな、そんなの嫌でしょう?みんな私のことが好きなんでしょう?いなくなったら、悲しいでしょう?そもそも、どうやってここに来たかもわからないのですから、帰り方なんてわかる筈がありません。
ああ、伊作くんも、タカ丸くんも、どうしてしまったのでしょうか。いなくなって欲しいんですか?帰って欲しいんですか?そんなことしたらみょうじさんが淋しがるに決まってるじゃないですか。そんなこと、あって良いわけがないじゃないですか。それくらい、わかってください。みょうじさんならきっと私のこと、なんでもわかってくれるのに。
もう嫌、助けてください、みょうじさん!
そう、思ったとき。
「伊作先輩っ、タカ丸さん…!」
…!凄い凄い凄い!
顔を見なくてもわかります。この綺麗な声の持ち主は、みょうじさんに違いありません。声のした方を見てみると、案の定、そこにはみょうじさんがいました。心配そうな、顔をしてます。ああ、私のことを心配して探してくれてたのですね。それで私が伊作くんとタカ丸くんといるから余計心配して…。みょうじさんは私が助けて欲しいとき、何も言わないのにいつでも来てくれます。今だって、そう。なんて幸せなことでしょう…!好きになったのがみょうじさんで、本当に良かった!
「なに、してるんですか」
「…だって、じゃまでしょ?」
「…え?」
「この子が来てから、学園がおかしくなっちゃったよね」
「五年生だってそうだろう?」
「…っ、」
「だから、その原因がなくなればみんなも少しは正気に戻るかと思ったんだ」
「……でも、っでも、こんなやり方は…ちが、うと思います」
邪魔?おかしくなった?
私のせいなんかじゃないです。みんなが勝手に私のことを好きになっただけじゃないですか。ああ、それにしてもみょうじさんは素敵です。きらきらして、眩しいくらい。嬉しい、嬉しい、嬉しい!また私のことを助けてくれました!
「やっぱりみょうじさんも私のこと好きでいてくれたんですね…!」
「…え、」
「大丈夫ですよ、私、みょうじさんのこと大好きですから!」
「……宮崎さん、」
「…? はい、」
「ごめんなさい、私、好きな人がいます」
わからない
(ごめんなさい?)(すきなひとがいます?)(どうして謝るんですか?)(それは私のことじゃないんですか?)(…どうしてそんな悲しそうな顔をするんですか?)