まるさんかくしかく | ナノ
なんでなんでなんで!
鉢屋三郎くんは私のみょうじさんに何をしてるのでしょうか。ねえ、やめて、お願いだから、みょうじさんに触らないでください。そんなにきつく腕の中に閉じ込めたら、みょうじさんが苦しがるに決まってるでしょう?
みょうじさんが好き?
ふざけないで、その言葉をみょうじさんに言っていいのは私だけなんですよ。ほら、みょうじさんが困ってるじゃないですか。あんなに震えて、ああ、可哀想に!
…うそ。今、みょうじさんは、なんて…?
わたしも、さぶろうが、すき?
なんで、どうしてそんなことを言うのですか?みょうじさんがいくら優しいからって、それでは鉢屋くんが勘違いしてしまいますよ。みょうじさんのことを本当に好いているのは私です。この間、言いましたよね。みょうじさんだって、わかってくれたじゃあないですか。笑顔で、ありがとう、って言ってくれましたよね。…あ、れ?
鉢屋くんには好きって言ったのに。私には、ありがとう?みょうじさんが好きなのは、私じゃ、ない…?
ちがいます。そんなこと、ありえないです。私はみょうじさんが好きで、みょうじさんも私のことが好き。それこそが、真実なのです。だから、みょうじさんと鉢屋くんが抱き締め合っているこの光景は悪い悪い夢なんだと思います。だって、そうじゃなきゃおかしいじゃないですか。みょうじさんが私を裏切るなんて、絶対にありえませんもの。
夢なら、早く覚めなきゃ。誰か、欲を言うなればみょうじさん、早く私を起こしてください。そうしたら、起こしに来てくれたみょうじさんを、ぎゅうって抱き締めましょう。ああ、考えただけで素敵です。とても、幸せ。
「宮崎さん」
「…え?」
おかしい、ですね。これは夢なのに、悪い夢なのに、なんで、
「伊作くん?タカ丸くん?」
いったいどうしたというのでしょうか。珍しい組み合わせです。私が知らなかっただけで、二人は仲がよかったのでしょうか。
「宮崎さん、」
「なあに?伊作くん」
「ちょっと話があるんだ」
「話?」
「うん、大事な話」
「タカ丸くん、大事な話って…」
二人はにこにこ笑うだけで詳しいことは教えてくれません。
「ちょっと一緒に来てもらえるかい?」
「うん、いいよ」
きっと、私のことが好きとか、一緒に町へ行きましょうとか、そういったことでしょう。この学園のみんなは私のことを本当に好いてくれてますから。みんなみんな、私を愛してくれますから。思いには応えられませんが、悪い気はしないものです。
何かが変わる
(あれ?)(さっき何か嫌なものを見た気がしましたけれど)(…なんでしたっけ?)