まるさんかくしかく | ナノ




「逢い引き」とは、愛し合う二人が密会するときに使われる言葉です。頬が弛むのを抑えられません。ああ、なんて甘美で素晴らしい響きなのでしょう!

ただ、ひとつ気に食わないことは、いつも…ついさっきもみょうじさんの隣に鉢屋くんがいたことです。彼は私にとって今最も邪魔な存在となっています。みょうじさんはとても優しいから、たとえ彼を疎ましく思っていても邪険には扱わないのです。それにも気付かないなんて…、むしろ、気付いてるのにその優しさに付け込んでいる、とか?
どちらにしても、彼は、ダメです。









「みょうじさん、ここです。どうぞ」

「…失礼します」

「ふふ、遠慮しないでくださいね」



食堂から私の部屋へと向かういつもの道のりも、私のすぐ後ろをみょうじさんが歩いていることを考えると、普段とは異なったものに思えてくるのだから不思議でした。途中、ちらりとみょうじさんの方に視線をやると、その視線に気付いたみょうじさんがふわりと微笑みを見せてくれたり。忍たまたちが私に向ける媚びたようなものとは全く違う、綺麗で可愛らしい微笑みでした。それが私だけに向けられていたのです。幸せ以外の何物でもありません。


それから二人は他愛のない話に花を咲かせました。まるで親友かのように。とは言っても、ほとんどは私が話をして、それにみょうじさんが相槌を打ってくれる、といったかんじでしたが。それでも私には十分なのです。

私の話が一旦途切れると、みょうじさんが少し申し訳なさそうに何かを切り出そうと口を開きました。


「あの、」

「? はい、なんでしょう」

「昼間言ってた、どうしても話したいこと、って…」


…ああ、大変!みょうじさんとお話し出来ることに気を取られていて、すっかり忘れていました。いえ、忘れていたというより…正直に言ってしまえば、どうしても話したいことなどなかったのです。どうしてもみょうじさんと話したかった、それだけでした。でも、どうしましょう。それではいくらみょうじさんだって、快くは思わない筈です。それだけは、避けたい。何か、何か…。

…!、わかりました。私のみょうじさんに対するこのきもちを伝えればいいのです。そう、これはどうしても話したいことでした。何故こんな簡単なことがすぐに浮かばなかったのでしょう。…え?不安、ですか?そんなものありませんよ。だってこの世界ではみいんな私のことを好きになってくれますから。例外なんてある訳ないのです。そうでしょう?早く、早く言わなきゃ。みょうじさんが困ったような目でこっちを見ています。(そんな表情もまた、)



「みょうじさん」

「…、はい」

「私、みょうじさんのことが好きです」

「…え?」

「いえ、大好きです。みょうじさんが私を助けてくださったあの日から、ずっと」

「み、宮崎さん?」

「言葉では伝えきれないくらい、全部全部、好きなんです」


その可愛らしい顔、綺麗な手足、可憐な声、優しいところ、笑顔が素敵なところ、優秀で努力家なところ、それから…、ああもう、本当に、言葉だけじゃちっとも足りません。みょうじさんにちゃんと、伝わったでしょうか。ううん、大丈夫。みょうじさんは絶対にあの笑顔を見せてくれる。だって、











「…ありがとう、ございます」











ありがとう、だなんてそんな、それってつまりみょうじさん、も?(そうしそうあいね!)


ほら、ね?やっぱり、私の言った通りでしょう?だって私は





天女様ですもの
(本当ですよ)(忍たまのみんながそう言ってましたから)(ああ、私たち、両想いだったんですね)





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