まるさんかくしかく | ナノ




なまえちゃんの髪はとても綺麗でしなやかで、サラスト一位の立花仙蔵くんとはまた違った美しさがある。僕はなまえちゃんの髪に触れる度に幸せな気持ちになった。髪だけじゃない。なまえちゃんの存在すべてが僕に幸せをもたらしてくれた。そんななまえちゃんが僕は大好きだ。

みんな宮崎芽衣という女をまるで天女様のように持て囃すけれど(実際、彼女に心酔している一部の忍たまは彼女をそう呼んでいる)、僕にはそれが、その魅力がちっとも理解出来なかった。前に一度だけ彼女に頼まれて髪を結ったときも、僕には彼女が普通よりも少し可愛いただの少女にしか見えなかったし、髪の毛だって、触れてみると見た目以上に輝いてはいなかった。なあんだ、天女様ってこんなもんか、って。それだけ。



なまえちゃんがおつかいで学園を空けてたとき、宮崎芽衣はこの学園に、より深く浸透していった。それは僕の所属する四年生も例外ではなくて。

自分が何より美しいとする滝夜叉丸くんが、自分以外を──つまり彼女のことを美しいと言っていた。穴を掘ることにしか興味を示さない喜八郎くんが、彼女には懐いた。火器が大好きな三木ヱ門くんが、その火器の手入れを疎かにして彼女に会いに行った。

以前はその対象がなまえちゃんだったのに。

滝夜叉丸くんが自分以外を美しいと言うのはなまえちゃんだけだったし(本人には一度も言ったことがなかったみたいだけれど)、喜八郎くんが興味を示すのは穴掘りとなまえちゃんで(なまえちゃんもときどき一緒に穴を掘っているのを見かけた)、三木ヱ門くんが会いに行くのはいつもなまえちゃんだった(でも、火器の手入れは決して疎かにしなかった。なまえちゃんが褒めてくれるから)


「ねぇ、おかしいと思わない?鉢屋くん」

「なんでそれを私に言うんですか」

「だって、鉢屋くんは正気でしょう?」

みんな狂ってしまったのに。言外にそういう意味を込めて言った。

「私が正気、ですか」

「うん。各学年に一人か二人はまだ正気な人がいる。五年生は鉢屋くん一人かな」

「はは、私を正気とは、斉藤さんは面白いことを言いますね」

「普段ならそうかもねえ。でも、今は話が別だから」

あの、鉢屋くんを除く兵助くんたち五年生でさえ、今では宮崎芽衣にべったりだ。一番なまえちゃんの傍にいた筈なのに。今、なまえちゃんが一番傍にいて欲しいのは彼らなのに。なまえちゃんは普段明るくて元気だけど、人一倍寂しがり屋なことくらい、よく知っているでしょう?


なんでみんななまえちゃんから離れてくんだろう。僕たち後輩は、優しくて優秀な彼女に誰もが憧れ、慕っていたし、六年生もそんな彼女を気に入っていた。今はみんな、まるでそのことを忘れちゃったみたいなんだ。まあ、それはそれで僕には好都合かもしれない。特に、いつも周りにいた兵助くんたちがいなくなったことは。でも、


「ごみはごみ箱に捨てなきゃ、だよね」









然る可き処へ
(だって邪魔なんだもん)(天女なんか、いなくなっちゃえ)



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