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会食


ミスラとオーエンがネロを襲う3P
なんでも許せる人向け





▼オーエン
 むしゃくしゃしていた。キッチンにストックされていた菓子の類が食べ尽くされていたから。昼下がりのティータイムに、食欲旺盛な若い魔法使いたちが、そっくりたいらげてしまったに違いない。
 むしゃくしゃする。少しは残しておけとか遠慮を知れとかそういう話ではない。トルテもパイもビスケットもお前たちは食べるな。全部僕が食べるのだ、ティータイムに限らず。
 むしゃくしゃを解消できるのは、この男だけだと知っている。

「お、来たな」

 ノックもせずに扉を開けたのに、ネロは怒らなかった。振り向きもしない。オーエンがむっとしているのには気づかず、どこかうきうきしたような口ぶりですらある。

「そろそろだと思ってたぜ」
「何それ。どういう意味」
「今日はガキどもが甘いもん全部食っちまったからな。お前さんが腹を空かせてるだろうと思って」

 オーブンを開ける音。甘酸っぱい香り。分厚いミトンを両手につけ、ネロがそれを取り出す。生地のご機嫌を伺うように首を傾げた。「いい色だ」。ようやく顔が見える。

「…………ふうん」

 随分機嫌のいい様子なので、むしゃくしゃが少し和らいだ。よく考えればおかしな話だが、よく考えるのは好きではない。甘い匂いに身を任せ、ずかずか部屋に入り込んでやる。

「早くしてよ」
「もう少し冷ます。あら熱を取るんだよ。今口に入れたら火傷するぞ」

 そのくらい魔法でやれと思う。むしゃくしゃがぶり返す。ぐっとこらえる。これだけ目で耳で鼻でネロの料理を見せつけられて、舌だけはお預けというのはいただけない。無理矢理奪うのは簡単だが、そうすると今後しばらくお預けを食らう。やむなしだ。短絡的な行動で酷い目に遭うのはまっぴら。

「ほら、待ってる間にこれでも飲んでろ」
「甘い泥水?」
「ココアって言えって……ほら、生クリーム落としてやるから」

 銀の大きな容器に、ツノの立った生クリームが山盛りになっている。大きな匙を取り出し、ティーカップにこんもり乗せてくれるけれど。

「それ全部」
「ん?」
「全部ちょうだい」

 言い終わらぬまま手を伸ばす。生クリームの容器ではなく、ネロの腕を掴んだ。






▼ミスラ
 謎の水生生物の死骸を手に入れた。貝とも小魚とも言い得ぬ外見だが、調理方法によっては、睡眠導入成分が発生するらしい。こいつらの筋肉組織から、脳を休め、心身を脱力させる微量の薬効成分が発見されたのだという。一部の人間たちから注目されていたところを、西の魔法使いらが面白がって買ってきて、ミスラも真っ先にわけてもらった。科学者は「そのうち睡眠薬が作られるかもね!」とくるくる飛び回っていたが、そのうちを待つつもりなど毛頭ない。
 ミスラにとって、食事なんてものは口に入ればなんだって同じなのだが、この食材に限っては話が別だ。ネロだって、未知の食材を調理するのはやぶさかではないだろう。食材を前にして、さて何を作るかと首をひねるあの後ろ姿は、存外嫌いではなかった。

「ネロ。食事を作ってください」

 用途は端的に。ノックも忘れずに。

「〜〜っ、待」

 返事より早く、部屋に乗り込む。

「………………何やってるんですか?」

 ネロはベッドに腰をおろし、壁際まで追いつめられていた。ミスラの足下に、見慣れたエプロンが投げ捨てられている。シャツがはだけ、肌があられもなくのぞいていた。ベルトは外され、下半身を骨ばった手にまさぐられている。そのせいか耳まで真っ赤に染まっており、瞳がやけに潤んでいて。

「何って。見て分からないの?」
「取り込み中ですね」
「じゃあ出ていけよ」

 犯人のオーエンは、片手でネロの体を好き勝手にしながら、自らのネクタイに手をかけているところだった。ミスラの登場に舌を打ちつつ、行為を止めるつもりはないようで、解いたネクタイをベッドサイドに丁寧にひっかけている。

「ちっ、違うんだミスラ。これはな……」
「ああ、見れば分かるので大丈夫です」
「大丈夫じゃない!」

 乱れた衣服を直しながら、ネロがベッドから降りようとする。オーエンが「気にしなくていいでしょ」と再び壁際に追いつめ、下着の上から股間をぐっと揉み上げる。

「んあっ」

 派手に肩を振るわせ、ネロは力なく壁に背を預けた。明らかな嬌声に、慌てて口を押さえるが当然無駄。ただでさえ赤い顔が、いよいよ茹で上がったようになる。

「……はあ。魚は後回しですね」
「おい、何のつもりだよ」
「俺も混ぜてくださいよ」
「はぁ?」

 目を丸くするネロ。舌打ちをするオーエン。

「いいじゃないですか。ほらなんでしたっけ、同じ釜の飯を食いましょう」





▼ネロ
 各々腹を空かせた二人の男が、果物の皮でも剥くように自分の服を剥ぎ取っていく。あくまで自分たちが食べやすいように。好き勝手にまさぐって、気の向くままに頬張るような、無作法な食い散らし方が予想できた。

「ひ……ッ」

 喉が笛のように鳴る。何故か生唾がせり上がってきた。
 おかしい、違う、勘弁してくれ。なんと言って拒否するべきなのか判断もできず、ネロは反射的に目を瞑った。思考に集中しようとしたのだ。目を開けようとした瞬間、オーエンに両足首を引っ張られ、ベッド上で仰向けにさせられた。

「〜〜っ、おい、んむっ」
 抵抗むなしく、口内にミスラの長い指が入り込む。舌を掴まれ、表面をやわやわ撫でられた。

「ンッ……っう、んんッ」

 途端、おかしな感覚がわき上がる。背筋が粟立つ。上半身をねじって逃れようとしたが、ミスラの力強い腕に羽交い締めにされて叶わない。

「……甘い匂いがしますね」

 唾液でぐちゅぐちゅ鳴る口内をもてあそびながら、ミスラはネロの匂いを嗅いだ。

「こことか」
「ひっ」
「ここも」
「っ、ンん」
「ここも……甘いです」
「あァ……ッやめろ、って、ぁッ」

 耳裏、首筋、シーツを掴む指先。ミスラはネロの体に舌を這わしていく。

「生クリームでもこぼしたんですか?」
「そう。おかしいよね。容器を頭からかぶってさ」
「〜っ、お前のせいだろ! ……っあ、あぁッ、ん」
「僕は生クリームだけ寄越せって言ったんだよ。自分もまとめて食われに来たのはネロの方だ」

 一方のオーエンは、ネロが自他の舌で骨抜きにされている間に、下着まですべて脱がせきっていた。下生えをかき分け、露出した陰茎につつと指を這わす。

「ん、ぁ……っ」
「はは。こんなに硬くしちゃって」
「なあおい、馬鹿な真似はやめ……っ、くッ」
「ここいじられるの好き?」

 亀頭の割れ目をなぞり、溢れる液体をすくい取る。そのまま竿ごと掴み、不規則に上下にしごかれたので、ネロの背筋が弓なりになる。

「〜〜ッあああっ」

 自然とミスラにすり寄る形になってしまう。ミスラは背後から手を伸ばし、ネロのボタンをすべて外して乳首をこね回していた。右は摘み取るように引っ張り続け、左は乳輪を撫で回し、時折爪先でひっかいてくる。

「……、ん」

 緩急をつけていじくられる。上も下も同時だ。休む暇がない。息が苦しい。目の前がぼやける。
「っん、ふ……、っぁ、んあ」
「そろそろ頃合いですか」

 耳元で低い声が鳴る。下腹部が苦しくなった。陰茎に舌先を這わせていたオーエンが
「期待してるの」とせせら笑う。赤黒くそそりった自分自身と、それに絡みつくようなオーエンの赤い舌に、羞恥と困惑で眩暈がする。

「オーエン、横になってください」
「はあ? お前が先に挿れるのかよ」

 しかめっ面をしつつ、オーエンはベッドに仰向けになり、淫猥な手つきでネロを引き寄せる。

「〜っ、あ」

 すっかり腰の力が抜けていて、抵抗できなかった。かろうじて力の入る両腕で踏みとどまって、四つんばいのままオーエンを見下ろす姿勢にさせられる。
 オーエンは機嫌よく口角を上げ、ネロの半開きの唇をつついたり、腫れた乳首を舐めしゃぶったりした。
 ミスラはミスラで、ネロの薄い臀部を掴み、容赦なく穴を拡げていく。骨ばった指が薄く敏感な壁をこするたび、悲鳴を上げそうになるのを必死でこらえた。

「ネロ」
「〜〜っ、ん、だよっ」

 返事はなかった。覚悟をしろと言わんばかりに、太ももに硬く熱いものが押し当てられる。

「あ」

 背筋に吐息が降る。俯けば、舌なめずりをするもう一匹に捕えられて逃げられない。
 観念と覚悟と一匙の期待で、またもネロの喉が鳴った。それを合図にしたように、腰が浮く。