6 | ナノ
最近、家に変な男が入り浸っている。
双子の視点【その1】魁の場合〜
「お前、何やってんだよ!!」
「?」
外は雨だ。
俺たちが愛華をあやしながらゴロゴロしていると、慌てて洗濯物を取り込み、たたんでいたカナメが逆さまに見えた。そのたたんでいる物を目にして、思わずギョッとする。
「かめのヘンタイ! ヘンタイかめ!」
「な、なんだよ。」
ワケがわからないとでも言いたげなカナメの手に、幾つかの洗濯物がおさまっている。俺たちの服に紛れてはいるが、そこには当然、姉ちゃんたちの下着もあるわけで−−
「お前、何ヘーゼンとたたんでんだよ!?」
「はぁ?」
「ね、姉ちゃんたちのブ、ブラ…」
「? ……あぁ、」
あぁじゃねぇよ。
やっと気づいたらしいカナメは、自分の手元に目をやって分かったような顔をしたが、それでも手を休めることなく、もくもくとたたみ続けている。
な、なんだコイツ。
「やらしー目で見たらぶっ殺す。」
「見るか。」
「…それはそれで何か、」
「なんだよ。」
確かに姉ちゃんたちの下着色気ねぇけど、そんなクソまじめな顔してたたまれても、弟としてはふくざつなシンキョーってやつで。
こいつ、ムッツリじゃなかったわけ?
「ちょっとは動じろよ!」
「あーもう、うるさいな。これぐらい、うちじゃ“見慣れてる”んだよ! ジャマすんならあっち行ってろ。」
………は?
「ったく、」
「……。」
は?
え、何、つまり…
えぇーーー…
「カイ、お馬さん変わってよ。オレもう疲れた。」
「なぁケイ、人って見かけによらないんだな。」
「…?」
なんかくやしい!
〜実際〜
「要、私の下着もう洗濯終わった?」
「外に干してある。っていうか、頼むからたまには自分でしまうくらいしてくれよ。」
双子の視点【その2】螢の場合〜
最近、夕方になると台所からいい匂いがしてくる。
今日は魚の煮付けかな?
「螢、そこにいるんならちょっと手伝え。」
台所からカナメの声がする。
うーん、オレ今宿題してるんだけど。…でも手伝ったら味見させてくれるし。
………そうだ。
「何言ってんだよカナメ、オレはカイだぜ? 間違えんなよな。」
ちょっとふざけてみた。
オレとカイは双子で、顔も声もそっくり。姉ちゃんたち以外、友達も先生もわかんないんだ。カナメになんて分かるわけ…
「こら。」
「った…!」
? …?
いつの間にか近くに来ていたカナメにコツンとされた。いや、痛くないけど、…何で?
「お前は螢だろ? バカなこと言ってごまかすな。」
「へ?」
うそ。
「なんで!?」
「?」
「なんで分かったの? オレがケイだって。」
姉ちゃんたち以外、誰にもバレたことないのに。
「は? いや、だってお前ら顔は似てるけど、微妙にケイのが声高いし、…雰囲気?とか結構違うだろ。」
「……。」
す、
「あ、おい!」
「カイ! 聞いてよ、カナメすごい!」
「は?」
すげー、すげー、すげー!
オレはその日、しばらくカナメのすごさに興奮して寝付けなかった。