3 | ナノ
「……僕って、そんなに女性らしいですか?」
「え、…どうしたんですか、唐突に。」
あれからというもの、零夜はどこか元気をなくしていた。
…いや、ヘコんでる?
「だって、おかしくないですか? 僕、声だって人並みに低いですし、背だって四捨五入すれば180もあるんですよ!? 女装でもしているならともかく、普通に制服着ていて…女性と間違われるなんて…」
「あ〜…」
“き、気にしてたのか。”
「お邪魔しま〜す。…あれ? 零夜、珍しくヘコんでるね。」
その時、図ったかのようなタイミングで伊織が入ってきた。
お前、ちょっと空気読もうよ。
−−…。
「ふ〜ん、成る程。最近はそういうこともなかったのにね。」
「? 最近“は”?」
事情を聞いた伊織が、可笑しそうにクスクスと笑っている。含みのあるその言い方に、要は小首を傾げた。
「中学の頃…、まだ声変わりもしてなかった頃は、それは酷かったからね。学校中の男達が、銀髪碧眼の英国美女を見にきていましたよ。」
“そういえば、柏倉は会長と同じ中学だったな…”
「へぇ〜、会長のちっちゃい頃か〜。可愛かったんだろうなぁ〜。」
「可愛くないです。僕はれっきとした男ですよ?」
「…会長、珍しく感情的ですね。」
「零夜は可愛いとか言われるのは好きではありませんからね。」
「ん〜、…あ、そんなに女に見られるのがヤなら、髪切れば…ぶアッ!!」
「何言ってんのしょう、…殴るよ?」
「も、もー殴ってんじゃねーか!! ふざけんなよ、テメェ!」
ふと発言したしょうの顔面に、虹の裏拳が炸裂。早くも赤くなった顔を抑えて喚くしょうが、酷く哀れである。
「あ〜…それは無理ですよ。」
「「え?」」
伊織もそこで口を挟む。何やら思い出したように忍び笑いをしていた。
「零夜の叔母様が、戯れで彼の髪を切ってしまったことがあるんです。まぁ、ボブといったところでしょう。しかし…」
「なぜか長髪時以上に、女の子と間違われてしまいました。」
伊織が言うより早く、本人が溜め息混じりにそう付け加えた。
…っていうか、戯れで髪を切るおばさんて一体…。
「零夜に七瀬君のような髪型も似合いませんし、結局、今の長さが一番零夜らしいんですよ。」
“““…………不憫だ。”””
「……そういえば要くん、桜小路さんに僕が男だと言おうとした時、『これでも』とか言ってましたね。」
「え、い、今その話蒸し返すんですか?」
「やっぱり外見上は男に見えませんか…。」
「ち、違っ…。会長、ほら、会長の好きな紅茶とケーキありますから、機嫌直して下さいよ。」
「………。」
“僕は子供じゃありません…”