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−−…。


「会長、どこ行ったんだろう。無事だよね?」
「あー、もう! さっきからそればっか!! あの人が無事じゃないわけないだろ!?」


あれからずっと、心配そうに零夜の向かった方を眺めている虹に、しょうが怒鳴った。その横では、二人によって捕縛された男達が、恨めしそうに此方を睨みつけている。


「……。」


逆に、要は先ほどから口を開こうともしない。


「? 七瀬先輩、どうしたんすか? …傷、痛みます?」
「………いや、」


ボーっと宙を見つめたまま答える要に、しょうが小さく溜め息。が、その時…


「七瀬君、傷心中ですか?」
「!」


ハッとしたように、要が顔を上げた。


「………神崎?」
「こんばんは、七瀬君、成宮君、虹。」
「…なんで、「あれ? 柚那じゃん。どうしたの? ってかいつの間に?」


要が言うより早く、一足遅れで気づいた虹が訊ねる。
柚那はチラリと捕縛された男達に視線を向けたが、


「つい先程、特売の帰りにそこを通りかかったら、皆さんの姿が見えたもので。」
「……相変わらず動じないですね、神崎先輩。…ん?」


淡々と答えた柚那の背後で、小さな影が動いた。


「!? 紗嗚!!」
「………夜の…散歩……」
「偶然そこで会ったものですから。」


眠たそうにポツリと呟いた紗嗚に、柚那が補足する。


“そんなことしてるから毎朝遅刻すんだろ…”




「…あれ? 柚那さんに紗嗚。どうしたんですか?」

「「「!?」」」


不意に、五人の後ろから安穏とした声がかけられた。

三人がバッと顔を向けると、待ちわびていた生徒会長の姿が。


「会長! どこいってたんですか!? 心配したんですよ!」


虹が我先にと零夜の元へ行く。


「すみません、お二人には追々事情を説明しますので…。要くん、お怪我の方は大丈夫ですか?」
「これくらい、なんともないです。それより会長、例の件は…」
「あぁ、それなら大丈夫ですよ。もう片がつきましたから。」


興奮する要を落ち着かせるように、零夜は答えた。掻い摘んで説明すると、要の前に腰を下ろし、向き合う形をとる。


「要くんにこんな怪我を負わせてしまうとは…。僕の失態ですね。申し訳ありません。」
「そんなッ、会長が謝ることはないでしょう! これは俺が至らなかっただけで…」
「しかし…、これでは何の為に要くんをこの件から引かせたのか分かりません。こうなることは予測出来ていたのに。」

「あ…」
“そ、それで昼間あんな…”

「それに要くん、あの時凄く哀しそうな顔してたじゃないですか。
それがずっと引っかかってしまって、…それも含めて謝らねばと。」
「!」


その言葉で、要の顔がサッと赤く染まった。


「べ、別に哀しそうな顔なんか!」
「してましたよ。それはもう、今にも泣き出しそうな顔で…」
「なッ!? 適当なこと言わないで下さい!! 誰が「へぇ〜、七瀬泣いたんだ。」


要の言葉を遮り、虹がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。


「ち、違ッ!」
「ええ、それはもう捨てられた子犬のような目で…」
「会長!!」
「ね、柚那さん?」「はい、まるで飼い主に見捨てられた子犬のようでした。」
「神崎!?」
「……ぼくも…見た……」
「え、マジで?」
「なッ、李…お前まで…」
「ふふっ、とても可愛らしかったですよ、要くん?」


必死に笑いを押し殺しながら、零夜は顔を真っ赤にして立ち尽くす要の肩にポンッと手を置いた。


「〜〜〜ッ、い、いい加減にして下さいッ!!」



要の叫び声とみんなの笑い声が、その夜の街に木霊した…。




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