そのころ、七海はチャイムが鳴っているのに、一向に降りてこない栞を心配していた。
「どうしたのかなしおりん。さっき落ちかけてた気がしてならないし。もう生徒総会始まっちゃうよ…!」
しびれを切らした七海は、えいっと重たい体育館の扉を開いた。
「パパ!」
生徒が次々と入場し、総会が始まろうとしている最中、体育館の舞台袖で、放送の準備をしている生徒会の長、九条零夜に駆け寄った。
「おや、七海ちゃん。どうしました?もう少しで総会始まりますよ。要君が着席の指示を出しているのに来ては怒られてしまいますよ?」
苦笑いしながら七海を頭を撫でる零夜。その横で、スタンドマイクをいじっていた成宮しょうが手を止めた。
「星、小山内はどうした?」
「それが…!」
七海が急いで状況を説明した。
説明を聞いた二人は青ざめた。
「バッカ!!何で1人で屋根に登るんだよ!?足でも滑らしたら死ぬぞ普通!!」
「成宮くんも登るしかないってさっき言ってたよね?だからあたしも登るしか方法ないのかなって思って提案したんだけど…。しおりん諦め悪いんだね。そんなに大切なものなんだ…お財布」
「確かに登るしかないって言ったけどだからって何の準備もしてない、素人がやって言い訳ないだろ!あいつ常識ないんじゃないか!?オレは会長に頼んで業者の人達に頼べばいいって」
慌てふためく二人を、零夜は手で静かに制した。
「これは緊急事態です」
零夜は深刻な表情でゆっくり頷く。
「すぐに助けに行きます」
零夜が踵を返し、ステージの階段をかけ降りる。
『静かにしてください!今席を離れている生徒は今すぐ自分の席に着席してくださ…って会長!?どちらに行かれるのですか!?』
ステージ下で、マイクを持って注意を促していた副会長、七瀬要が、そばを凄い速さで通り過ぎていった零夜に思わずマイク越しで呼び掛けた。
『会長!?総会始まりますよ!?』
突然の総会の放棄に要は唖然とした。立ち尽くしている要の横を、しょう、七海がバタバタと走り去る。
「おい!お前らもか!」
今度はマイクを通さず二人の背中に呼び掛けるが、しょうも七海も振り向かなかった。
「どうなってるんだ、全く…」
わけがわからず、要は呆然と立ち尽くしていた。
「急に紅茶でも飲みたくなったのかな…」
パイプ椅子に腰かけていた枢木虹が、小さく呟いた。
そのよん!
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