ううっ…た、高い。
「下みちゃだめだよ!」
なーちゃんの言葉でハッとした。そうだ下見ちゃだめだ。頑張れしおりん!
「な、なぁちゃんは登ってくら…くれないの?」
下で見守るなーちゃんに聞いてみた。
「ごめん。あたし高いとこだめなの」
や、やっぱり自分の力でなんとかしなきゃなんだね、うぅ。
それにしてもこの体育館は屋根が邱ではないか!?
そう簡単にメロンパンと財布の元にたどり着けそうにない。今にも手や足が滑りそうだよ!
「しおりん!パンツ危ない!」
いやなーちゃん無理だよ!スカート押さえる余裕ないよ!
こればっかりは冗談じゃなく真剣に登らなきゃ。
というかそもそもどうして体育館の屋根のてっぺんにメロンパンとわたしの財布が乗ったんだろうか。
誰が何のために…?
「あっ…」
屋根のてっぺんに誰かいる。誰、あれ?
「しおりーん!大丈夫ー?太陽眩しくて上向いて目を開けるの大変だよー」
…なーちゃん目、あれで開いてたんだ。
「くっ…」
確かに太陽の光で目が開けられない。てっぺんに人がいるのは見えたのに。
「あとちょっと…!」
手のひらや膝、制服が汚れるのも構わず登り続け、ついに…!
「あっ…」
体が宙に浮く感じがした。
次に手が滑ったことがわかった。
屋根が邱すぎて、てっぺんまで登れなかったんだってことが、落ちていく瞬間、わかった。
「しおりん!」
なーちゃんの声が近くで聞こえた気がした。
けど。
「……」
誰かが私の腕をつかんでる。あれ?どうなってんの?
恐る恐る目を開けたら、体育館の汚いオレンジ色の屋根が見えた。
てことは落ちてない?
「何で…?わっ!」
いきなりぐんっ!と引っ張られて体育館の屋根のてっぺんに。
「どうなってるの?」
ふと、見上げると、学ランが目に入った。
次に三つ編みの髪が目に入った。
そしてメロンパンを食べているのが目に入った。
「そ、それ…わたしのメロンパン…」
「そこで拾った」
学ランの男子がすかさず言った。
「さ、財布は?」
「拾った。中身ないから捨てた」
おい!
「ちょっと待ってよ。わたしの数少ない手持ち金でやっと購買部で買ったメロンパンを食べといて、バナ次郎のがま口財布を捨てたって何?」
なんだか、すごく腹が立ってきた。
「冗談じゃない!助けてくれたのは感謝するけど!!わたしの大事なお昼ご飯と大事な財布を食べられ捨てられ、何なの!?あんた最低!!財布に至っては懸賞で50名様プレゼントで当たった非売品の財布だったのに!」
その時、チャイムが鳴った。
昼休み終了のチャイム。
気づけば学ランの人は消えてて、わたし1人、屋根の上に残されていた。
「何なの…ホントに…!」
どうしてだかわかんないけど、涙が溢れて止まらなかった。
そのさん!
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