校舎の中に入り、お目当てのまぁちゃんを探す。わたし達と同じ1年生のようだ。
「まぁちゃんはね、優しくていい人なんだよ!」
ニコニコしながらなぁちゃんは言った。
「けど、中谷、教室居ないみたいだな」
後ろでゴミ虫…いや成宮が呟いた。
「んー、じゃどこにいるのかなぁ」
なぁちゃんは困ったように首を傾げた。成宮はうーんと唸るとあっと声を上げた。
「図書室じゃねぇ?中谷、本好きだし」
えぇ!?図書室って別館じゃん!
「ちょっと成宮!別館だし遠いじゃない!そんな時間ないからね!!もし図書室にまぁちゃん居なかったらどうするの、このゴミ虫!」
「あぁ?ゴミ虫だと?お前がゴミ虫だ!このバカ!」
「悪口だめーっ!」
悪態の応酬が始まるやいなや、なぁちゃんがわたしたちの間に割って入った。
「じゃあクラスの人に聞いてから戻ろうよ、ね?」
「うん」
わたしは素直に頷いた。さすがなぁちゃん、賢い!
まぁ5分前に知り合ったばかりだけど。
「ねぇねぇ」
なぁちゃんが扉の近くにいた男子生徒に話しかけた。
「ひぃいっ!!」
飛びずさる男子生徒。その髪はテンパか。
「ちょっと!人をおばけみたいに反応しないでよねぇ」
なーちゃんがダボダボの袖口を左右に振りながら言った。
「ご、ごごごごめんなさい」
わーすげーどもり。
「ねぇ、まぁちゃん見なかった?」
「まぁちゃん?」
ビクッとしながら聞き返す男子生徒。
「もしかして中谷君?…ならさっき出ていったけど…」
「どこ行ったの?」
わたしはテンパの男子生徒に聞いた。
わたしの声にびびったのか、またひぃって言って飛び上がった。
こいついつかシンバルの音で死ぬんじゃないの?あと車のクラクション。
「し、しし知りません…!ごめんなさい…」
それだけ言うと教室の中に引っ込んだ。
「相変わらず小動物みたいだな、大河内」
大河内と言うらしい。
もうテンパでよくね?
「なーちゃんのクラスの子?」
「そだよ、あたし二組だし」
「わたしは四組だしねー、ゴ…成宮と一緒の」
「どんだけオレのことゴミ虫扱いしたいの!?オレお前にそこまで嫌われてんのか!?」
「うっさい!別になんとなく嫌いなの!」
「んだよなんとなくで人を嫌うな!」
「もう話ズレてるよっ!二人ともただの同族嫌悪なんだよぉ!」
またまたなーちゃんが中に割って入った。
同族嫌悪?成宮と同族なの!?
「わ、わたし金髪じゃないし蒼目じゃないよ?」
「そーゆーことじゃなくて…」
なーちゃんは苦笑いしながら頭を左右に振った。
「とりあえず戻ろうぜ」
「そうだね。成宮と話してるとグダグダ展開に発展するし」
「……!」
成宮は何か言いたそうな顔をしてわたしを睨んだ。
怖くないもん。
―――――
わたし達はまた、体育館に戻った。
昼休み終了まで後、15分。早くしないとお昼ご飯食べ損ねる!
1日二食なんてそんなの絶対嫌だ!
「うーん困った。まぁちゃんが居ないのは痛い」
なーちゃんは腕を組んで呟いた。
「体育館に誰か背の高い人いないかなー」
なーちゃんがガーッと体育館の扉を開けた。
「どお?いる?」
わたしは体育館の扉に首を突っ込んでいるなーちゃんに問いかけた。
思ったより鈴がでかい。
「うーん。パパはいるけど」
え?なーちゃんのお父さん?
「なんか、次の総会の準備してるみたい」
「っと、オレのケータイが!」
隣で成宮がポケットからケータイを取り出した。
「着信、な、七瀬先輩…!しまった!」
そんなことを言いながらケータイを耳に当てる。
「も、もしもし…。あ、今ですか?丁度体育館ス。ちょっと用事ありまして…。あ?いや知らないっスよ?あいつまた遅刻かどっかで寝てるんじゃないスかね?はい、わかりました…」
パタン、とケータイを閉じてため息をつく成宮。くるり、と顔をわたしに向ける。
「悪ぃが生徒会の仕事が入ったから、オレは抜ける。二人で頑張ってな」
…あ、そ。別に成宮いてもいなくても関係ないし。
…あれ?口に出して言えてない…?
「ちょっと、星どけろよ。オレ中に入るから」
なーちゃんは無言で扉から遠ざかり、成宮は体育館の中に入っていった。
「んー、どうする?まぁちゃん探すか、もうあたし達で体育館の屋根に登るか」
昼休み終了まであと10分。仕方ない、登るか!
そしてやはり成宮はゴミ虫だ。
心から奴を軽蔑しようじゃないの!
見直しかけた自分が恥ずかしい。
「よっしゃ、なーちゃん体育館に登ろう!そうしよう!」
わかった、となーちゃんが頷き、
「こっちだよ!この校舎の二階の屋根から登れる」
と案内してくれた。
やっぱり、自分の力でなんとかしないと!
えぇーい!やるしかないよ、しおりん!
全身全霊、命をかけてメロンパンとお財布を取り戻すよ!!
そのに!
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