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「ちょっと! 人をボケ老人みたいに言わないでよ!」
「申し訳ありません、アンナお義母様。老人のように思ったつもりは微塵もないんですが。」
「見下ろすな!! っていうか名前で呼ばないでって言ってるじゃない! 全く、何でアタシがこんな役…」
「レイカお義姉様、リンカお義姉様。ブローチとペリエお待たせしました。」
「あ、ありがとうございますわ、シンデレラ。すいません、お母様が色々とうるさいものですから…」
「ホント、ちっちゃくても態度だけはデカいんだから。ね〜、シンデレラ♪」

「うっさいわね! もうアンタたち全員出て行きなさいよ!!」


シンデレラこと、ユナの実の両親が他界してから、早一年が経過しようとしていた。

実母が死に、貴族である家、もとい父の元には、再婚させる為の縁談が多く持ち上がった。元々家柄も何もない女性との結婚を周囲は煙たがっていたようで、良い機会と云わんばかりの量だった。
それでも断り続けたシンデレラの父だったが、流石に上役からのものともなると、そうはいかない。そういったことを歯牙にもかけない性格の父親に変わり、まだ幼かったユナが、それを受け入れた。


『やはり、まだ若いのに母親がいないというのは寂しいよね。…私のワガママでずっと断ってきて、ごめんね、ユナ。』
『………。』


微妙にズレていたところのある父だったが、シンデレラにとっては良き親だった。
お人好しがたたって、事故で死んでしまったけれど…。



「ホンット、似てないわよね、アンタ。本当にイオリさんの子供なの? 信じらんない。」

“あなたの実年齢が○○だということの方が、よっぽど信じられません”


父が死ぬ以前から、継母の嫌がらせは度々あった。今はそれが露骨なものになっただけだ。
別に苦ではない。
シンデレラは自分のことを客観的にとらえ、どこか冷めていたところがあった。


「ああ! もうこんな時間!? お城でダンスパーティーなのよ? シンデレラ、早くアタシのドレスを用意してチョーダイ。」
「はい。」


そう、今宵は年に一度の、この国の城で催されるダンスパーティー。
加えて、なんでも今年は、王子の妃となる女性を選ぶ場ともなるらしい。

「王子様に見初められるチャンスなんだから、イッチバン質のいいやつ持って来なさいよ。」
“王子様…ね、”

「王宮暮らしかぁ〜。楽して暮らせんなら、悪くないわねぇ。」
「リンカ姉様、はしたないですわよ。」


シンデレラは、少しばかり呆れを覚えた。
再婚相手が死んで、まだ一年足らずというのに、もう次の再婚…それも、国の王子に取り入ろうとは…。

“王子様も、身持ちが堅いと噂だったけれど、所詮は只の王族ね…”


その時、シンデレラにはその程度の認識しかなかった。
どうせ自分には声もかからないし、かかったとしても行く気はない。王宮に対する憧れや魅力は、全く感じていなかったし、元より感情の乏しい面がある。
どうせなら、その王子とやらに見初められて、この家を出ていってくれれば…。そんなことを、頭の隅で思った。





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