「ハァ、ハァ…ま、待って…」

「キャッハハハ!わーい!」


廊下をドタバタと走る二人の人物。
ひとりはかなりの長身で、通りすぎる人間を優に越している、アシンメトリーという髪型をした男子生徒。
もうひとりは、まるで幼稚園児のような容姿に、銀色の長髪を大きな鈴で結わえている少女。
そんな異様なふたりが、学校の廊下で追いかけっこをしている。
周りの生徒が、好機の目でふたりを見る。


「ま、待って…星さん…ぼ…俺から離れちゃダメだよ…」


星、もとい星 七海は、悪びれた様子もなく、振り返り男子生徒を見る。


「あはは!こっちだよ、まーちゃん!」


まーちゃん、と呼ばれたのは、中谷 将美。
身長192cmにしてまだ1年生だ。


「星さん…!」


将美は半ベソ状態で七海を追いかける。
そんな二人を見る生徒の視線は、将美への恐怖心が強い。
将美は身長が大きい為、それだけでも威圧的だが、それだけではなく、将美は目付きがとても悪い。さらに、視力が弱い為、ほとんど見えていない。
その為、何かを見る時は目を細く、つまり、悪い目付きをさらに悪くしなければならない。
性格もおとなしめで重度の恥ずかしがりな為、自分の感情を素直に出せなくて無愛想になってしまう。
そんな将美が、見た目も中身も小学生の様な女の子を追いかけ回しているのは、周りからみたら虐待か、将美が危険人物にしか見えないだろう。


(このままだと…先輩に怒られちゃう………あの先輩の言い付けを守らないと…)


将美は思い出していた。
先輩―――氏家 想次郎の言い付けを。
想次郎は面白いことが大好きで、その餌食になった人間は少なくない。
そんな想次郎は七海の自称"ママ"だったりする。
これは、七海が生徒会長である九条 零夜を"パパ"と呼んでいるのに想次郎が勝手に乗っかっていた。


『良いことザマスか中谷くん!私が会議(進路相談)から帰って来るまで七海をよろしく頼むザマスよ!』


と、どこから出したか知らないが逆三角の形をした眼鏡をかけながら困惑する将美に言った。


『もし七海に何かあったら、その時は………………』

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