「お?」

生徒会室の備品倉庫を整理していたら…

 

「オセロだー!」

何やら楽しそうなものを見つけてしまった。

 

 

 

「なんで生徒会室の倉庫にこんなものがあるんだ。」
「確かに、先輩方が使うようには思えませんけど。」
「見てみて、オセロだけじゃないんだよ!」

虹が持ってきた、子供一人くらいならすっぽり入ってしまいそうな大きさの箱。(よく持ってきたものだ)
スートの柄があしらわれたその箱には、虹が最初に出したオセロの他に、将棋、碁、双六、トランプから、果てはバットやグローブ、サッカーボールまで入っていて。

「どっからどう見てもおもちゃ箱ッスね。」
「ま、麻雀や花札まで…」
「生徒から取り上げたものでしょうか。」

箱の出所について男子連中が考えていると、横からブオン、ブオンと、凄まじく風を切る音がなる。見れば、虹が実に楽しげに、ブンブンとバットを振りまくっている。…危ねぇよ。

「ねぇ、トランプしよー!」
「…自由だな、お前。」

いっそ清々しい。

「駄目だ。」
「えー、なんでさ。」
「仕事がまだ残ってるだろう。」
「う、」
「この箱の出所が分からないのもそうだが、そういうことを考えるのはまず仕事を終わらせてからにしろ。」
「ぶー。」「要くんのケチー。」

「……。」

既にテーブルにトランプを並べ始めていた数名が、要に対し、非難の眼差しを向ける。
…というかその中にいないのは、もはや自分だけだった。

 

 
−−…

「全く、どうしていつもこれくらい早く終わらせられないんですかね。」

あれから40分。
いつもの数倍もの速さで仕事を終わらせた彼らは、堅物副会長も巻き込み、すっかり遊びモードに入っていた。…しかし、

「つまんねー。」
「…お前、」
「だってー、神経衰弱じゃ一枚もとれないし、ジジババはすぐ終わっちゃうし、七並べはなんでか柚那が異常に強いし、大富豪とかは何人か知らないし。」
「子供か。」
「…紗嗚はなんか立派なピラミッド建設しちゃってるし。」

そういえば、いつの間にかカードが半分ぐらいまで減っている。

「ねえ七瀬〜。将棋やろうよ。」
「なんで俺が。」
「だってしょうは出来ないんだもん。前に教えたんだけど、弱すぎて相手になんないし。」 
“会長とやれば逆に私が相手になんなそーだし”
「……。」
“成宮、そんな目で俺を見るな…”

 

一方零夜はそんな二人を後目に、先程から何やらそわそわと落ち着かない。
その視線の先を辿れば、箱の中の目につく位置にありながら、未だ誰も手に取ろうとしないチェス盤が、ひっそりと残されていた。

“皆さんルール知らないって言ってましたし、…要くんは分かるようですけど虹にとられてしまいましたし…、
久々に誰かと出来るんじゃないかと期待したりしたんですけど…”


「それ、やりたいのか?」
「ええ、でもまあ、」

・・・ん?

「何でいるんです。」
「いや、九条のラブコールが聞こえた気がして…」
「要するにまた部活サボったんですね。」
「ぅ、…そ、そんなことより」

露骨に呆れてみせれば、斑葉は慌てて目を逸らし、話の矛先を変えようと、さっきのチェス盤を手に取る。

「よければ一局、手合わせしないか? 九条。」
「…? 斑葉くんと?」

 

 

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