「さっ…


むうぅーい!!」


12月×日。曇り時々晴れ。北風が強く吹く。
季節は、…冬。

 

「何この寒さ! バカじゃないの、どーせ寒いなら雪降ればいいのに、そーだ! 雪!! 今すぐ降れ! 雪!」
「うっせーよ!!」
「あだっ…」

寒空のもと、生徒会メンバーは、生徒会室で使われる事務用品等の買い出しに出ていた。

「だから、そんなに寒いなら何でついてきたんだ。学校にいればよかったものを。」
「大丈夫ですか? 虹。」
「…会長もですよ。」

誰が(業務をさぼって)買い出しに出るか、平等にクジで決めた筈なのに。結果、どうしてか決まった要と柚那と紗嗚の三人を差し置き、残された三人もついてくることとなってしまった。

「だって面白そうじゃん、買い出し。」
「会長、仕事が残ってたはずでしょう。」
「だからじゃないですか♪ …あ。いえいえ、ちょうど買いたい本があったもので。」

“嘘だろ、今本音出たぞ”

「いやー、でもこんだけ寒いと人肌が恋しいよね〜。」
「え!?」
「特に手が冷えちゃってさ〜。手袋してくるんだったなぁ。」
「……。」

自分の手と虹の手を交互にちらと見やり、しょうは“なんとなく”、ポケットに突っ込んでいた自分の手の汗を拭った。

「わー!」
「!」
「紗嗚あったかーい!」
「!?」

・・・。

「…ん? どうした成宮。」
「……いえ、」


紗嗚を抱きすくめるようにしながら、虹は手をにぎにぎ、頬に頬を擦り寄せる。

「…こう、…くるし…」
「んー、ほっぺもすべすべ〜。“赤ちゃん”みたーい。」
「・・・。」

「…あれ?」
「おや、どうしたんですか? 紗嗚。」

脱出。


「全く、いつまでもふざけてないで、さっさと戻って仕事を…」
「うぅー、またさむいー!」

…ピトッ。

「ひぁっ!!?」
“お!”
「あはは! 七瀬『ひぁっ』だって、『ひぁっ』。あー、七瀬の首はあったかいなあ〜。ねね、もっかい触らしてよ。」

「ッ、く〜る〜る〜ぎ〜…!」

ふざけるな冷たいんだよバカじゃないのか
いいじゃんケチ減るもんじゃなし
色々減ったわボケ!

 

「あはは、楽しそうですねぇ。」
「……零兄、て、…さむい?」

ふと、零夜の影へと逃げ込んだ紗嗚がポツリと小さく呟く。不意に触れた零夜の手は、この寒さのせいか全くといい程体温というものが感じられなかった。

「ああ、すみません。僕、人より体温が低くて…冷たいでしょう。」
「…んー、」
「紗嗚?」

冷たいというのに、紗嗚はキュッと零夜の手を掴み、両手で覆うようにすると、それをそのまま自分の口元へと運ぶ。

「!」

はぁ、と温かな息が、零夜の手を包み込む。先程虹が言ったように、確かに紗嗚の手はとても温かくて、相まうその温もりは、酷く心地よかった。

「……。」
「お、じゃああたしも。」
「え?」

要を散々いじくっていた虹が便乗し、空いていたもう片方の零夜の手を握る。うひゃー、ほんとに冷たーい、と何やらはしゃぐ様子の虹に、零夜は呆気にとられてしまった。
すると、同時にふわりとかけられた、首周りの温かさ。

「紗嗚と虹にばっかいいかっこはさせねーからな。」
「しょう…。」
「帰ったら温かい飲み物でも淹れましょう。会長、サボった分ちゃんと仕事して下さいよ。」
「ホットミルクはいかがですか?」

「…神崎、ホットミルクだけは失敗しないからな。」

「……。」

 



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