もうすぐ12月。ここはわりと都会の方で、雪はあまり降らない。
だがやはり冬の寒さというのはどこも厳しいもので、窓の外では冷たい木枯らしが音を立てて吹き荒んでいた。

「ねぇ要、今年のマフラーはこの配色で編んで欲しいんだけど。」
「…今年は無理。」
「えー、なんで!」

一般中流階級…まぁ要するにどこにでもあるごくごく普通の家、七瀬家の居間では、その日、ある姉弟が些細なことで揉め事を起こしていた。

「今だって何か編んでるじゃない。そのついでに私のも編んでくれたっていいでしょ?」
「今年は忙しいんだって。そんな余裕ない。」
「え? …あー! 分かった、柚那ちゃんでしょ? へ〜、手編みのプレゼントなんて、アンタも結構甲斐甲斐し、う゛ッ!」

「違う!!」

「何が違うのよ、痛いじゃない!」
「あぁもううるさい! 頼むからあっち行ってくれ!」

毛糸玉の乱舞。
色とりどりの毛糸の玉が、あっちへ投げられこっちへコロコロ。纏めて積まれていた毛糸は見る間になくなり、居間の床を鮮やかに彩ることとなった。

 

 

 

−−…。

「ほら。」
「「うわー…!」」

子供は風の子、とはよく言ったものだ。首にふわりとかけられたマフラーを、目を寄せながら見つめ、とんだり跳ねたりしながらクルクルとまわる少年たちは、本当に風のようで…。

「おー、あったけー!」
「見て見て、エリマキトカゲー。」
「すげーな。カナメ、コレつくったのか!?」
「え、い、いや…」
「「?」」

「…………俺のおさがり。」

 

えー、
と2人同時に声が上がった。なんだよー、期待したのにー、まあいっかー、と、次々とんでくる不満混じりの言葉に、要は言葉を詰まらせ小さく肩を落とす。
本当は、確かに自分が編んだことに違いないのだが、

“料理はともかく、編み物はなぁ…”

完全に女子の趣味のような気がし、要はそれを言い出すことを躊躇っていた。元々家事が不得手な姉に変わり、自然と身についたものだ。自慢にもなりはしない。(というかしたくない。)

 

…それでも、ただ

「ほら、こうやって捲くんだよ。」
「なあなあ、これでなわとび出来るかな?」
「するな!!」

ただ単純に、喜ぶ顔が見たいから。



 
キラキラと、バカみたいに目を輝かせて飛び回るこのクソガキ共が…風邪をひいたりしませませんように−−。

 



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