「ばと…ろいやる?」
「ちげーよ、バトルロワイヤルだって。お前早く日本語読めるようになれよ」
「…、これ、カタカナ、読みにくい」
「ほんとダメだなお前」
奏梗学園、一年四組のホームルームにて。
次回のホームルームの時間にクラスの親睦を深めようと担任の先生が立案したものである。
はじめは極めて簡単で、よくあるようなフルーツバスケットやイスとりゲームなどが候補にあがっていたが、どういうわけか、バトルロワイヤルという、なんだか物騒な催しになってしまい今に至る。
謝嗚は黒板にデカデカと書かれた「バトルロワイヤル」の文字を呟いたが、前の席の成宮しょうに間違いを指摘され、少しムッとした。
「そんな睨むなって」
しかし、謝嗚をよく知らない人からみればただ眠たそうな表情で押し黙っているようにしか見受けることが出来ない。謝嗚の表情を読み取ることが出来るのは近しい人達だけなのである。
「しっかしバトルロワイヤルって…乱闘じゃんか。これで決定なのかな」
親睦を深めることが目的なのに、これでは逆効果なのでは、としょうは呆れながら思った。
「クンクン…どう思う?」
「あぁ?くだらねーな」
謝嗚は、隣の席のクンクン…もとい、風戸薫に問いかけた。薫は退屈そうに頬杖をついて答えた。
「先生、バトルロワイヤルって具体的にどんなことをするんですか?まさか、殴り合いをするつもりじゃないでしょうね?」
男子生徒Aが、担任の先生に質問する。
「まさか!簡単なルールに乗っ取ったゲームさ。そうだな、みんな水鉄砲を持って、頭に水で濡れたら色が変わるような紙をはっつけて、最後まで紙を濡らさず生き残ったやつが勝ちってやつ!」
おお〜!と生徒達が沸き上がった。
「先生!生き残ったやつに景品とかってありますかね?」
「そうだなぁ…みんなのヤル気を起こすために、金一封とかどうかな?」
おぉおーっ!!!!とさっきよりも大きな歓声が上がった。
「金一封とか、オレはいらねぇけどな」
ハッと鼻を鳴らし、しょうは呆れながら言った。
「そうだよね、成金成宮はいらないもんね!」
「んだと小山内!成金って言うな!」
「成金ゴミ虫!」
「ゴミ虫わざわざつけてんじゃねーよバーカ!」
「チッ!うぜーんだよ!!このチビ共!!人を挟んで会話すんじゃねーよクソが!」
「わたしっ!成宮よりチビじゃないもん!」
薫の隣で涙目になりながら反論する小山内栞。正直、栞は薫が苦手だった。背が高く、強面でその上不良とくれば栞の恐怖の対象となるのだ。
「んなこといってんじゃねーよ!」
ぎろり、と睨まれ栞はビクッと縮み上がった。
「クンクン、止めて、女の子、怖がってる」
「チッ」
謝嗚にたしなめられ、薫は舌打ちをすると目を逸らしまた宙をぼんやり見つめ始めた。
(風戸くん…やっぱり怖い。)
ほとんど薫は授業をサボるので、栞の隣は空席が多かった。その為、席替えで隣になって絶望的だった栞はなんとか持ちこたえていたのだった。
「と、いうわけで来週のこのホームルームはバトルロワイヤルを開催するからなー!みんな!休まずに学校こいよ!ありったけの勇気と判断力と行動力を準備してこいよ!以上!」
先生が纏め、タイミングよくチャイムが鳴った。
休憩時間に入り、早速クラスの人達はガヤガヤとバトルロワイヤルについて話始めた。
「一体どんなバトロイになるんだか…」
「クンクン参加…」
「あ?しねーよ。冗談じゃねぇ」
「でも…単位、危ない」
「チッ。しゃーねーな。出欠とったらサボる」
その言葉をきいたクラスのだいたいの人達は安堵した。風戸薫が参加したとなれば不利になってしまい、優勝できる確率がぐんと減るからだ。
栞も、横で聞いていて安堵していた。
(風戸くんにでてもらっちゃ困る…!)
なんとしても金一封を獲得して、スイーツパラダイスでケーキたくさん食べるのだから!
とらぬ狸の皮算用。
各々、来週のバトルロワイヤルに向けて闘志を燃やすのであった。
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