そしてあっという間に一週間が経ち、ついに四組バトルロワイヤルが幕をあけた。
「さーてみんな!準備は出来たか?作戦なんてのもサバイバルには必須だぞ!」
担任の先生が意気揚々と声を上げる。それに続き、生徒達もワッと歓声を上げた。
「あーだりー」
クラスの雰囲気に耐えかねた薫はボソッと呟いた。隣で謝嗚は呑気にあくびをしている。
「じゃあみんなにルールを説明するぞ!まず、みんなこれを被ってくれ!」
配布されたそれは、小学生の時によく被った紅白帽子に似ていた。
「これが水に濡れるとだな…!色がピンクになるんだ!」
先生が小さな水鉄砲を帽子に向かって撃った。するとみるみるうちに白からピンクへと色が変化した。
「で、ピンクになったやつはジ・エンドだ。大人しく教室に戻り、待機するように。尚、フィールドはこの校舎全部だ。だけどむやみやたらに撃ちまくるなよ?後片付けに困るのはお前達だからな!制限時間内にカタが着かなければサドンテス!いわば早打ちな!制限時間は40分!逃げ続けるもよし、仲間とチームを組んで狩るのもよし!反則さえやらなきゃ大丈夫だ!校舎にはたくさんのカメラを設置した!先生は審判としてモニタリングするぞ!じゃあ武器を配るぞー!」
手渡された水鉄砲は、三メートルくらいまで届きそうな立派な水鉄砲だった。学級費でクラス分の水鉄砲を賄えるとは、さすが私立である。
「へぇ、結構本格的だな。先生相当気合い入ってる」
しょうは机に置かれた水鉄砲を見つめながら言った。持ってみると結構重たい。ずっしりと水の質量を感じとった。
「先生ーっ!質問です!」
バッと腕を伸ばし、栞が大声を張り上げた。
「水鉄砲だったらこれじゃなくてもいいですか?」
「まぁ、構わないが武器は一個だからな」
「はーい!」
満足したように栞は満面の笑みで頷いた。しょうはチラッと栞を見、眉をしかめた。
(何を企んでる…こいつ)
「これ…重い」
謝嗚が小さく不満げな声を上げた。確かに謝嗚にとって、この水鉄砲は大きく持ちにくい。
「僕…撃たない…逃げる。クンクン、助けて」
「ハァ?ふざけんな」
咄嗟に断ったものの、上目遣いにくいっと制服の裾を引っ張られてはなす術もない。
「…、チッ。仕方ねえな。つーか俺は参加する気なんかさらさらねえ。いつもんとこで寝る。それだけだ」
「そりゃ無理だろ。なんせ監視カメラ付きだし」
「カンケーねーよ」
「あっ!いい忘れたが風戸!サボったら赤な!」
「ハァ?ふざけんじゃねーよ!?」
「これはクラス全員参加だ!風戸も同じく我がクラスだろう?」
「うぜーな!」
こうなっては薫も参加せざるを得ない。少々卑怯な手だが、それでも担任の先生は風戸薫を参加させたかったのだ。
「チッくそ担任が」
悪態をつく薫。回ってきた水鉄砲をひょいと片手で肩に担いだ。
「早く終わらせて、いつもんとこで寝る!」
「風戸、帽子被れよ?」
しょうは的の役割を果たす帽子を被りながら薫に言った。それを見た栞は思わず吹き出した。
「うわっ成宮、マジ小学生じゃん!」
「んだと!お前も人のこと言えねーよバーカ!」
「やだな、わたしは高校生ですよ、バカなのはあんたじゃん!」
「知ってるわ!つかオレも高校生だわバカはお前だ!」
チビ同士のいつもの応酬が始まった。薫は盛大にため息をつき、被ることに強く抵抗したい帽子を握りしめた。
「クンクン…被る」
「うっせーな!わかってっから!」
帽子を目深く被った謝嗚が薫の袖を軽く引っ張った。
薫は悪態をつきながらもギュッときつく被る。
先生は嬉しそうに頷いた。
「じゃあ始めるぞ!各自好きな配置につけーっ!今から一分後な!」
「よっしゃあぁあ!」
ぞろぞろと教室を後にする生徒。薫、謝嗚、しょうは固まって動くことにした。
(謝嗚は薫に守ってもらうため。しょうは薫といた方が安全だと判断したため)
「ああーだりー」
天を仰ぎ、薫は呟いた。
『それではー!バトロイスタート!』
間もなく校内放送が入り、担任の先生が高らかに宣言する。
戦いの火蓋は切って落とされた。
果たして最後まで生き残るのは一体誰だ…!?
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