−−…。

「チクショー…あのガキども、俺の嫁を返しやがれ〜。」
「よ、嫁!?」

南海の肩を掴んだまま、溜め息混じりに呟く。何故か慌てふためく南海をよそに顔を上げると、ドアがガラッと音を立て、二人の人影が入ってきた。

「…白昼堂々セクハラですか? 木戸先生。 」
「お〜、修弘〜!」

入室してきて早くも呆れ顔の教師『伊富修弘』の姿に、木戸は漸く南海の肩を放し、ノロノロと歩み出した。


「わっ…」

バランスを崩し、小さく声を上げる彼女には目もくれない。

「ノブ、タバコ持ってない? 一本でいいからさぁ〜。」
「持ってない。…全く、僕がタバコ嫌いなの知ってるくせに、どうしてそういうこと聞くかな?」
「う〜…。じゃあ、コマッちゃんは〜?」

伊富には冷たくあしらわれ、続いて、共に入ってきた養護教諭『小松邑季』にもダメ元で訊ねてみる。
しかし…

「ハハッ、そういうの、保健の教師に聞きます? 残念ですが、吸わないもので…。」
「…だよね〜。」

笑顔で返され、木戸はズルズルとその場にへたり込んでしまった。

「引き出しには空箱しか入ってねえし…。俺もう死んじゃいそう。」


“…駄目な大人の見本のような男だな”

徐々にゾンビ化してきた彼を横目に、伊富はそんなことを思う。


「雅楽川も吸ってんの見たことねえし、ってか吸っててもアレには聞きたくねえし…、沙友梨ちゃんや大竹も…持ってねえよな…。教頭は…………」


“とても聞けねえぇ〜〜〜!!!”



頭の中で教師陣の顔をぐるぐると巡らせる。その中に、同じく教師である『小熊林檎』の顔が浮かばないのは…まぁ、無理からぬことである。


「う〜ん、う〜ん……ハッ! 風戸!! そうだ、あいつなら絶対持ってる!」

「「「!」」」


暫く思案していた木戸が、やがて一人の人物にいきついたらしく、大きな声を上げる。
さらりと発した爆弾発言に、本人は気づくこともなく、慌てて職員室を飛び出していった。




「……。」
「…。」
「…ハァ〜、あのバカ。」


だが、その場にいた教師の誰もがその言葉を聞き逃す筈もなく………














−−体育館裏。
「……。」

一人静かにタバコをフかしていた一年生徒、『風戸薫』の元へ、ドタバタと騒がしい足音が近づいてくる。

「?」

その騒々しい足音に薫が目を向けると、見慣れた教師の姿が足早に駆けてくるのが見えた。

“…キドセン?”



「か〜ざと〜!! よかった、会いたかったぞ〜!!!」



そう思ったのも束の間、

次の瞬間、薫は木戸に抱きつかれ、その腕の中にいた。


「!! なッ!!!?」


突然強く抱き締められ、薫はわけが分からない。
持っていたタバコが地面に落ち、小さな煙が立ち上る。


「んッだテメェッ!! は、なせッ!!」
「ア〜ン、痛〜い。風戸クンのバカ〜。」

「ッ、気ッ色悪い言い方してんじゃねえぇーーー!!!!」



声はそのままなだけに、尚気持ち悪い。
無理矢理引き剥がされ、ふざけたように科をつくる木戸に、薫はゾクゾクする体を庇うように抱いた。


「風戸〜、タバコ頂戴よ、タバコ。俺もう限界なんだよ〜。」
「はぁ? あ、テメッ、何勝手に…」

ゴソゴソと薫のボケットをまさぐり、木戸は勝手にタバコを取り出す。

「…あ〜、お前また銘柄変えただろ? ったく、若いもんは飽きっぽくていけないね〜。 」
「文句言いながら吸ってんじゃねえよ。…つかまだ許可してねえんだけど。」
「かたい事言うない。」


薫の言葉を耳半分で聞き流しながら、木戸はついでに拝借したライターでそれに火をつけた。

「……ふい〜。生き返る〜〜。」


大きく息を吸い込み、木戸は数時間ぶりのタバコを楽しむ。

「先公が生徒からタバコ巻き上げていいのかよ…。」

ぼそりと薫が呟く。




…その時だった。

「アハハ、いいわけないよねぇ〜。」
「「!?」」


不意に横からかけられた声に、二人はハットして我に返った。


「……あ〜…やべ。」


木戸の口から、苦味を帯びた声が零れる。
体育館の横から、伊富、小松、南海に加え、木戸から“嫁”を奪った生徒会長、九条零夜の4人が姿を現したのだ。

「「………。」」
「何してるんですか? 木戸先生と、…薫くんまで。もう、授業は始まってしまいましたよ?」


ニッコリとした笑みを浮かべながら歩み寄ってくる零夜。と、横に並ぶ小松養護教諭の両名から、何やらどす黒いオーラがだだ漏れている。



「……おい、キドセン。これぜってぇテメェのせいだろ?」
「え〜、何の事かなぁ? 僕分かんなぁ〜い。」
「テッメェ…、」


まるっきり棒読みでしらを切る木戸に、薫の額に青筋がたつ。
そんなやり取りを交わしながら、二人はじりじりとその場を後ずさった。


「ま、謝罪やら何やらは逃げてからにしましょうや。」
「テメェ、ホント後で覚えてろよ!」


その言葉を合図に、二人は一目散に逆方向へと走り出した。

「! 待ちなさい!!」

後方から、南海を始め零夜たちの声が2人を追いかけてくる。


彼らは果たして逃げきれるか?












タバコの成分は体に非常に有害です。
皆さんは二十歳になってからにした方がいいと思います。(作文んんんn!!!)












断じて腐ではありません
こういう教師なんです(泣)
若干版権『銀魂』の表現が用いられています
ご了承下さい(^〜^)



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