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入学から半年も経てば、一年生も学校生活に慣れるし、調子にのり始めるヤツも出る。

「おい、紗嗚! 起きろよ。今日の七瀬先輩が今日の定例会の決算、忘れねーように…って。
…ったく! 久々に遅刻しないで来たと思ったら、ソッコーで寝てんじゃねーよ!!」

「……」


朝から教室で大きな声を上げるしょうなどものともせず、少年李紗嗚は、スヤスヤと安らかな寝息をたてる。


「っのやろ〜、七瀬先輩に叱られてもしんねえかんな! 会長と虹にも嫌われちまえ!」


意図の解らぬ啖呵を切り、大股で不機嫌そうに去ってゆくしょうを、紗嗚は薄く目を開けて見届けた。

“…うるさい”

それでも念のため、頭の隅で今しょうが言っていたことを確認する。
……大丈夫らしい。再び目を閉じ、ゆっくりと睡魔に誘われるままに、意識を落とす。




−−…。

「…か…と、また……か」
「……?」

“…何……騒がし…い?”

怒りを帯びた声。
眠っていた意識が覚醒へと導かれる。


「お前には、学生としての意識が足りないのか!」

「……っせーな。」
「………」


怒っているのは、先生だろうか?
教壇から後ろのドアへと駆け寄り、何やらたった今教室に入ってきた生徒に注意を施しているようだ。

「はぁ…、風戸、お前本当に今学期の単位やべぇぞ? まだ二学期で留年確定なんて…困んのはお前だろ!」
「別に…。」

ピキッ、

“ぁ、”

「テメェ〜…教師ナメんのも大概にしろよ!!」
「っ、」

遂に教師の方が勢いよくその生徒の胸ぐらを掴み、自分へと引き寄せた。教室中が、一気にどよめきたつ。

「…てぇな。」
「あ?」
「離せ…っつってんだよ。」
「て、テメェ、まだそんな…」
「いいから、離せ。」
「ッ!?」


その瞬間、ビリッとした“気”が、教室の空気を張り詰めさせた。

“……殺気?”


これには然しもの教師も戦いたらしい。その手を緩めた途端、すぐさま生徒が踵を返し、入ったばかりの教室に背を向ける。


「あんたのツラ見たら萎えた。ふける。」

「……」


教師はもう、何も言わなかった。いや、言えなかった…のか。

大きな伸びと欠伸をしながら、紗嗚は『かざと』…と呼ばれた生徒の背中を遠目に眺めていた。




「………大…脊背」


Xt『羊と猫と狼と』

 



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