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Vt『一目惚れ』
「…え、親善交流、ですか?」
いつもと同じ生徒会の朝。
要は零夜から今日の予定を確認し、首を傾げていた。
「えぇ、どうやら“律桜学園”の生徒会が、我が校との親睦を深めたいと仰っているようで。理事長が独断で了承してしまわれたんですよ。」
「律桜、…この学園の姉妹校でしたね。そこが交流を求めてきたと…。」
「はい。」
「それも今日、なんですよね。」
「…はい。」
苦笑する零夜を前に、要は深く溜め息をつく。
「なぜそんな急に?」
「…律桜学園からお話があったのが昨日のことなんですが、『やるなら早い方がいい』と理事長が申し出たらしく…。
生徒会が新しく編成されてからはまだ一度も対面していなかったので、いい機会と喜んでいました。」
流石の零夜も半ば呆れたようで、申し訳なさそうに「すいません」と謝る。
「会長が謝ることありませんよ。…分かりました。時間や概要等は決まっているんですよね?」
「ええ、取り敢えずは放課後に先方が此方へ来られるとのことです。場所は恐らく此処になるでしょうね。
内容は、まぁ顔合わせと軽い意見交換ですから、あまり硬く考えず…。」
「神崎や李たちにも早く知らせなければなりませんね。…枢木と成宮も参加するんですか?」
「勿論。彼らも生徒会の一員ですからね。そちらは僕が話しておきますよ。」
「お願いします。では、また放課後に。」
手帳をパタンと閉じ、そう言い残すと、要は早速生徒会室を後にした。
−−…放課後。
二つの人影が奏梗学園の門前に現れた。
「…ここですわね。」
一人が学園をジッと見上げ、やがて昇降口の方へと視線を移す。
「参りますわよ。」
カツーン…。
と、高い靴音を立て、人影はゆっくりと学園に向かい歩き出した。
…それから暫くした頃、
零夜は応接室へと向かっていた。
胸ポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認すると足を速める。
“少し時間がおしていますね。まさかあそこで先生に声をかけられるとは…。
ともかく、速く行かなければ…”
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