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『…おい、アレ風戸じゃね?』
『ん?…ホントだ。けどあのとなりにいるチビ、確か生徒会の…』
『マジメくんになったってウワサ、本当だったってことか?』




−−…。

「お前、何者だよ。」

もう間近に見える校舎に、薫は紗嗚の顔をまじまじと見る。

“コイツ、ほんとは迷ってなんかなかったんじゃ…”

そう思う程に、帰りは一度も道を誤ることなくスムーズに来れた。
薫が携帯で時間を確認すると、もうとっくに移動教室の授業は終わり、皆が教室に戻っているであろう時間になっていた。


「これじゃあ教室で寝てた方がまだマシだったぜ。」
「……けっきろん」
「結果論な。」

それにしてもまさか高一にもなって学校で迷うとは…。

「お前のせいでムダに疲れた。」
「クンクンだって、こっちって、言った」

再び責任のなすり合いが始まる。そんな二人は、自分たちへと近づく影に、気づいていなかった。




……ドンッ!!



「ッ!?」
「…!」


鈍い衝撃に薫がハッとし、紗嗚の体がベシャッと地面に倒れる。
“疼痛(いたい)”
「おい、テメェ…」

ぶつかった男は見向きもせず、しかし僅かだが口角を上げ、その場を去ろうとする。
わざと、としか言いようのないぶつかり方に、薫が眉を顰めその肩を掴みにかかった。
その時、


「!」

振り向かせたのと同時に、風をきる音がした。
予想だにしなかったソレはよける間もなく、頬に痛みが走り、すぐに自分が殴られたのだと知る。


「……っ、いきなり何しやがる!」

じわりと口内に広がる血の味。


顔をやられるのなんて、いつぶりだろう。

久々に味わった痛みに、頭へと血が集中してゆくのを感じながら、薫はそんなことを思った。


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