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「そんな頼み方では、会長は聞いてくれませんよ。」


「!」


不意に背後から声をかけられ、要は驚き振り返る。

「神崎、来ていたのか。」
「おはようございます。」
「おはようございます、柚那さん。」

律儀に会釈をするのは、ここの書記を務める『神崎柚那』。三つ編みおさげに眼鏡という、真面目っ娘を具現化したような少女だ。

「ちょうどいい。神崎からも会長に言ってくれないか?この報告書を書き上げてくれるよう…」
「私が言ったところで会長は聞き入れてくれませんよ。」

縋るような思いで頼んだ要だったが、言い終える間もなく一蹴され、肩を落とす。



「だが…俺が言ったところで聞いてくれないし……」
「…会長は七瀬君が懇願してくる姿を見て物凄く楽しそうですけどね。」

室内の端へと移動し、小声ながらも淡々と話す柚那。ちらと横目で零夜を見やると、ご機嫌そうに鼻歌を歌いながらお茶を啜っていた。

“完全にいい玩具ですね…”

「どうですか?ここはもう、いっそ会長のご意向に沿ってみては。」
「?…どういう意味だ?」

話が掴めず首を傾げる要に、柚那は小さく息をつき、自分の鞄から何やら取り出した。

「…なんだ?ソレは…」
「?ネコ耳ですが…」
「は?」

柚那が差し出したものをよく見ると、ソレは黒い猫のような耳を模したカチューシャだった。

「これでもつけて強請れば、会長は大喜びで言うことを聞いてくれそうですけど…。」
「!! そ、それを俺につけろと?…というか、何でもお前そんなの持って…」
「細かいことはお気になさらず。あ、尻尾と鈴つきの首輪もありますよ。それより試してみては…」
「断る。」
「………。」
「そんな目で見るな。」

あっさりと断る要に、柚那の無機質な視線が突き刺さる。



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