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「え〜、一年四組『風戸 薫』。元々中学の頃から色々と問題があったようで…主に暴力沙汰と、未成年者喫煙。最近では学校には来ているものの、授業の出席日数が足りないことが、問題視されています。」

その日の生徒会定例会で最後に上げられた議題。この時間はいつも、校内における不備、及び我が校では珍しくない、問題のある生徒について取り上げられる。どうやら今日は、後者の方らしい。

「まあ、よくいる“不良”ですね。」
「一年のくせに、調子ノってんじゃないの〜? あ、でも…『×不良後輩』って結構オイシいかも。」
「おい、冗談じゃねぇよ。アイツ、こないだも三年の先輩とケンカしたとかで、オレらまで睨まれてんだ。いい迷惑だよ。」

「……。」

その会話を黙って聞きながら、紗嗚はぼんやりと数時間前に見た生徒の顔を思い浮かべた。

“かざと……かおる…”

初めて聞く名だ、と紗嗚は心中で思った。
同じクラスで、しかも問題児として知られている人間の名前を、ここになって初めて知るというのは、あまりに遅すぎる。

だがこの時、紗嗚には風戸薫の顔に、確かに見覚えがあったのだ。「一年四組…となると、紗嗚が同じクラスですよね?」
「……」

…コクリ、

「じゃあ、今回は紗嗚に頑張って貰いましょうか。」


ニッコリ微笑む零夜に対し、反論するでもなく、只眠たそうに目を瞬かせる。
それを同意と零夜は受け取り、その日の定例会は終了した。






紗嗚は、風戸薫を知っていた。


名前が分からずとも、その顔は確かに覚えていた。
事実、紗嗚が人の顔を覚えているというのは極めて稀である。たった今見た人間の特徴を尋ねても…


『…目…ふたつ……鼻…口………ふたつ…?』

『ソレ人間じゃなくね!!?』


こんな有り様だ。
興味関心のないことは、元より記憶しておく気もない。

そんな彼が、一人の人間の顔を覚えていたとなれば…それは、少なからずその人間が、紗嗚の関心を惹く何かをもっていたということ−−。








−−…。

翌日。PM1:50

昼休みも終わり、午後の授業が始まった校舎。
紗嗚は授業を抜け出し、人のない廊下をあてもなく歩き回っていた。

「……」ブカブカの袖を口元に添え、キョロキョロと周囲を見渡す。
探しているのは、昨日議題に上げられた不良生徒、風戸薫の姿だった。どうやら今日も学校に来てはいるらしく、昼休みに下駄箱を確認した時は、外靴が確かに入っていた。

“…いない…”

しかし、肝心の姿が見当たらないのである。

『学校に来ているのに授業に出ていないなんて、妙な奴だな。一体何の為に学校に来ているのか…。』

昨日要が言ったこと。
言われてみれば、誰もが疑問に思うだろう。


“何の…為に…”


紗嗚には、その心当たりがあった。


恐らく、今も“そこ”にいるのだろう…。




今一度彼の姿が辺りにいないことを確認し、紗嗚はその場所に向かい、ゆっくりと歩を進めた。



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