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「はははっ、でさ〜…」
「はぁ? マジかよ。…あ、俺にも貸してくんね?」


3、4人の男子生徒が集まって話しているのは、今はもう殆ど使用されなくなった男子トイレ。
ここは、どこの学校にもいるであろう、好奇心でタバコを吸い始めてしまった、中途半端な不良どもが利用する、云わば“喫煙所”なのだ。



今もそこからは一つの白煙が上り、ライターを回しながらその煙は次々と増えていった。





「…けどよ、そろそろこの場所も厳しくね? こないだ塚本とか木戸センがここ調べてんの見たぞ。俺らがここでフかしてんの、バレてんじゃ…」
「バーカ。あの2人はな、俺らと同じでここを喫煙所代わりにしてんだ。知らなかったのか?」
「はぁ!? 仮にもあいつら教師だろ? ……信じらんねえ。大丈夫かよこの学校。」
「ハハッ、俺らが言えることじゃねー。」

「ま、そのおかげで心おきなく校内で吸えんだ。細かいことはいいじゃねーか。」


片方の口角を上げ、フーッと煙を吐き出す男子生徒。
しかしその瞬間、男の手から奪い取られたように煙草が消え…

「おい、何すんだよ…。」

男は仲間がふざけてやったものと思い、眉を寄せて振り向いた。


「「「!」」」

「アンタたちだったのね、いつもここでタバコ吸ってたの。…現行犯よ! 一緒に指導室に行ってもらうわ!」



…−−。











コン、コン…

生徒会室に、ノックの音が響く。


「失礼します。」
「! お兄ちゃん…。」

静かにドアを開け入ってきた人物に、成宮と雑談をしていた虹が、真っ先に声を上げる。

「枢木先輩! どうしたんですか? 何か急用でも…?」

要も珍しい来訪者に、驚きながらもすぐさま歩み寄った。

「いや、そうじゃない。…ちょっと、ここに七瀬……あ〜、…葵が来なかったかと思って。」
「え、姉さんですか?」

同じ姓の要を前にし、男は咄嗟にそう言い直す。要はその脈絡のない質問に、小首を傾げた。



生徒会室に入ってきたこの男の名は、『枢木 悠』。
先刻の虹の言葉と姓から察せられる通り、枢木虹の実兄であり…
一月前まで、葵の下で生徒会副会長をしていた男だ。


「“葵”の担任が彼女を探してるんだ。さっきまでは俺と一緒だったんだが、見回りに行くとか言って、……先生も急いでいたようだから、俺も少し探そうかと…。君なら、お姉さんが行きそうなとこ、知ってるかもと思ったんだけど。」

「…見回り、そういえばまだやってましたね。それなら多分、不良がたまってそうな場所をしらみつぶしに回ってると思いますが…。」




見回りとは、七瀬葵が生徒会長となった際に始めた、学園内の巡回である。


校内で規律を乱すような者、また、学園での不備などがないかを見て回り、必要な措置をとる。
これが意外と効果的で、葵がこれを始めてからというもの、大っぴらに規律を乱す者はかなり減少した。


「あの…彼女、今は一人でそれをやってるんですか?」

「え? あぁ、そうですね。」
「以前は俺や執行部の佐野も付き合っていたが、引き継ぎが済んでからはさすがにな。
あいつにも、もう止めていいんじゃないかって、何度も言ってるんだが…。」

「……。」

それを聞き、零夜は暫し考えるような素振りを見せる。しかし、やがて掛けてあった上着を掴むと、静かに席を立った。


「会長? どこか行かれるんですか?」

「僕も葵先輩を探すの、お手伝いします。担任の先生も急いでおられるようですし。」


要に向かって微笑むと、悠に対し会釈をし、零夜はその身を翻す。


「…本来、巡回も僕が引き継ぐべき業務ですから。」

「?」

ポツリと、呟くように言い残した零夜の言葉は、小さ過ぎて要の耳に届かない。

聞き返そうとした時には既に遅く、徐々にその背中は遠のいていった。


…−−。




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