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「…あの、会長? 会長は、どうして生徒会長になろうと思ったんですか?」

気がつくと俺は、そんな質問を投げかけていた。

「え、どうしたんですか? いきなり。」


会長が不思議そうに俺の顔を見る。

だって、気になるじゃないか。
俺は…あなたに誘われて今ここにいるのに…。





『僕と一緒に、生徒会に入って頂けませんか?』





…あとは、まあ…前の副会長に憧れていたというのもあるけど、
きっかけになったのは、間違いなくあなただ、会長。

なのに、俺は会長の口から、一度もそのような動機と云えるものを聞いたことがない。


「別に…ただ、何となく気になっただけです。」


姉さんが言うように、本当に只の興味本位の暇潰しだったら…
そんな考えが、一瞬頭の中を過ぎる。






だが、そんな俺の不安をかき消すように、会長はフワッとその顔に笑みを浮かべた。


「憧れです。」

「……え?」




「僕は、先代の会長…要くんのお姉さんである、七瀬葵先輩に憧れて、生徒会長になりたいと思ったんです。」



「………なんで、また…」

あんな姉に?
そう言いかけ、慌てて言葉を呑み込む。

まだ少し、会長の言った言葉に実感が持てなかった。



「この学園を統べるのは、非常に骨が折れます。何しろ、皆さんとてもクセのある方ばかりですからね。
……しかし、そのような中でも、己の信念を元に、いけないことはいけないと厳しく教えて下さる葵先輩は、本当に素晴らしいと思っています。」

「……。」

「会長の任をまかされたあの日から、彼女は僕の目標なんですよ。」



照れたようにはにかみながら、会長は笑ってそう言った。









恥ずかしかった。

こんなにまっすぐな人に姉さんは……いや、俺もか。
只の興味、暇潰しなどと…。


「会長、…すいませんでした。」
「? 何がです?」


一瞬でも思ってしまった自分が恥ずかしくて…俺は不思議そうに首を傾げる会長に、深く頭を下げた。











「……だってさ。」
「………。」

生徒会室のすぐ横で、それを聞いていた者が二名。




『また職務放棄してたらお灸を据えてやるわ。』




「取り越し苦労だったようだな。」
「………。」
「いい会長になるんじゃないか? 彼。」
「……。」
「七瀬?」


「……何よ。…まるで私が悪者みたいじゃない。」


気まずいような、悔しいような…
複雑な表情を浮かべ、葵はすぐさま立ち上がり、踵を返して歩き出す。


「おい、今度はどこに行くんだ。」
「……。」



『僕の目標なんです。』



「……見回りよ! 今の生徒会長が至らないうちは、私がフォローしなきゃいけないんだから!」





…−−。



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