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時を同じくして…

二人は応接室へと案内され、この学園の生徒会役員が来るのを待っていた。



「……遅いな。」

男の方が、ふと口を開く。

「客を待たせるなんて、ここの生徒会長は何をしてるのか…。」
「そのようなことを言うものではありませんわ、如月さん。」
「……。」


女の方に窘められ、“如月”と呼ばれた男は口を噤む。
すると、コンコン、とノックの音が室内に響き、ゆっくりとドアが開けられた。


「失礼します。」

ドアの方へと視線を向けると、声の主は静かに扉を締め、自分たちへ歩み寄り恭しく頭を下げた。


「遅くなってしまい、大変申し訳ありません。私、奏梗学園の生徒会長を務める九条と申します。…本日は我が校に足を運んで戴き、有難う御座いました。」


「……」
「………」


面を上げたその顔に、二人は暫し呆然とした。
いや、“見とれた”という方が適切だろう。

あまりにも美しい銀色の髪に、それに見合った端正な顔立ち。眉目秀麗とは、こういう人間を指すのだろう。

思わず見惚れ、絶句してしまった2人に、零夜は首を傾げ、不思議そうな表情を浮かべる。
そこでハッとしたように、女の方が口を開いた。


「い、いえ、こちらこそ急な申し出をしてしまい、申し訳ありませんでした。私は律桜学園生徒会長、『桜小路 麗華』と申します。今日はどうか、よろしくお願い致しますわ。」

スッと手を差し出す麗華に、零夜は笑顔で握手に応じる。

「本日は生徒会役員全員でお伺いする予定でしたが、書記会計両名が体調を崩しまして…失礼ながら私達二人で伺わせて頂きましたの。」
「そうでしたか。それはお気の毒に…。ご快癒を申し上げます。」
「ありがとうございます。そしてこちらは副会長の…」

麗華は自分の斜め後ろに立つ男に目を向け、挨拶を促す。
しかし男は、ボーッと零夜の方を見たままで…、

「? 如月さん? ご挨拶を…」

そう言うと、男は漸く我に返った様子で、すぐさま前に出る。

「すみません、俺は副会長の『如月斑葉』です。」

そうして握手を交わすと、零夜はやわらかく破顔する。



「それではそろそろ参りましょうか。此方も生徒会の皆さんをご紹介したいですし、 ……! 」

そうして踵を返そうとするが、すぐにそれが引き戻されるかのように足が止まった。
「え?」
見ると、斑葉が未だ零夜の手を握りしめている。

「……あ、あの、如月さん? そろそろ…手を放して頂きたいのですが……」
「………」
「あの…」


斑葉は穴があきそうな程に、まじまじと零夜の顔を見る。見つめる、といった方が近いだろうか。
あまりの注視に、零夜は寒気のようなものを感じつつ、困ったように笑う。すると、斑葉の横にいた麗華が痺れを切らしたように口をひらいた。

「如月さん? 何をしているんですの? 九条さんが困っているじゃありませんか。さぁ、早く行きますわよ。」
「あ、」

麗華に強引に手を放され、斑葉が少しばかり眉を顰める。だが、そんな斑葉は歯牙にもかけず、既に麗華は歩き出していた。





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