企画 | ナノ

相談

煌帝国、第一皇子である練紅炎の眷属は皆、一様に人間離れした容姿をしている。あるものは恐ろしい竜の見た目であったり、あるものは獅子に似た形相で、彼らを初めて見た新米の侍女は恐怖で身を固めてしまうこともしばしばだ。しかし、彼らにしてみればそれは主の眷属として己の存在を認められ、力を尽くすことが出来ている証そのもの。胸を張りこそすれ、後悔することなど微塵もなかった。
そんな彼ら眷属の姿に畏怖を抱くものもいればその逆、羨望の眼差しを持つ者もいる。多くは、第一皇子の側近という立場を羨むものがほとんどだが、稀に彼らへの主から寄せられる信頼に羨ましがる者もいた。

その稀な者の一人でもあるナマエは、今紅炎が軍の拠点を置いているバルバッド王宮の日当たりのいい廊下を歩きながら考え事をするかのようにぼんやりとしながら歩いていた。思い浮かべるのは先の大きな争いのことだ。世界が滅びるか否かの瀬戸際に立たされて、金属器使い達が力を振り絞って戦ったあの戦い。その中で、大きく自分の力不足を痛感していたのだ。
攻撃することに極端に向いていないために、結局は周りの者たちのサポートに回るしかない己の力に嘆き、紅炎の手足として戦いの前線に立てた他の眷属を羨んだ。もっと力が欲しい、皆と同じような力が。
そう願うけれども、魔法使いは眷属器とは相性が悪く眷属に選ばれることはない。悶々とした悩みを抱えながら、ナマエが相談相手として選んだのは、以前からよく話を聞いてくれていた同じ眷属である青秀だった。彼を時間をとって欲しいと頼めば彼はほんの少し意外そうな表情をした後快く頷いてくれた。
ナマエは小さな中庭に用意した茶を2人で飲みながら、こっそりとその姿を盗み見る。何度見ても紅炎のジン、アシュタロスに似た勇猛な姿の彼に思わず羨望のこもった視線を送ってしまった。

「で、なんの用なんだ?なんか、話が合ったんだろ?」
「・・・どうしてお分かりになったのですか?」
「そりゃあ・・・そんだけまじまじと見つめられてれば何かあったと考えるだろ」

青州の言葉に、あまりに不躾に見過ぎたかと恥じ入りながらも誤れば彼は気にした様子もなく「別にいいさ」と笑う。さっぱりとした気性の青秀の口調は、もし兄がいたらこんな感じなのかもしれないとナマエの想像をかき立てた。

「・・・あの、青秀様にお聞きしたいことがありまして」
「なんだ?」
「その、眷属との同化のことです・・・」
「はぁ?」

片眉を跳ね上げた青秀にナマエは真剣な表情でこくりと頷く。

「その、魔導士は本当に『同化』はできないのでしょうか?」

その言葉に、青秀はぽかんと口を開けて唖然として見せた。「何を言っているんだ」と言わんばかりの表情にナマエは頬を赤く染めながらもおずおずと続きを口にする。

「そ、その眷属器がなくてはならないというのは文献で承知しているのですが、もしかしたら例外があるやもと思いまして・・・」
「・・・お前、『同化』したいのか?」
「はい、その方が紅炎様のお役に一層立てると思うのですが・・・」

呆然とした青秀の言葉に真剣に頷いたところで、彼はげらげらと大声をあげて笑い出した。

「はっはっは!おまっ、同化なんてしたら俺たちみたいな容姿になるんだぜ?!いいのかよ!」
「で、でも先日の戦いでお会いしたアルテミュラの眷属の方はそこまで容姿は変わっておりませんでしたし・・・」

勿論、異形の形をしたものもいたが、普通の人間の容姿に獣の耳が着いただけという同化をしている者もいた。その彼らも、ひとたび眷属の力を解放すれば自分など足元にも及ばないような力を発揮するのだから眷属同化というものは恐ろしい力を秘めているのだ。

「そりゃそうだけど、紅炎様のジンはどれも人外のものばかりだからな・・・。高確率で俺たちに似た容姿になると思うけどな」
「フェニクスであれば・・・」
「おいおい、楽禁様が何の眷属だか忘れたわけじゃないだろうな」

にやにやと笑う青秀にナマエはうっと口ごもる。眷属の中でも一番体が巨大に変化した楽禁はフェニクスの眷属なのだ。同じ容姿になるわけもないだろうが、青秀の言葉には一瞬躊躇わせるだけの威力は十分にあった。

「別に、容姿のことはいいのです!それよりも、これからの戦いでいかにして紅炎様のお役に立てるか・・・そのことの方が重要です」
「悪いがな、眷属同化できるのは眷属器をもつ者だけ、魔導士であるあんたには無理だな」
「・・・・でも」
「たとえ、例外を知っていたとしても絶対ナマエに教えられないな」
「あるんですか?」
「知らねぇよ。・・・大体あんたが竜の姿になってみろ。紅炎様がどう思われるか・・・」

そして、その原因の一端が青秀にあることが知れたら、おそらくは紅炎は自分を許さないだろうことは簡単に想像できて、青秀はぶるりと体を震わせた。

「あんたは今のままで十分紅炎様の役に立ってる。俺たちだって紅炎様に言われたからナマエを眷属と認めてるわけじゃない。ちゃんと実力で判断しているんだ。おかしなことを考えずに、今まで通り紅炎様の力になればいいんだよ」
「・・・はい、わかりました」
「ったく、魔導士ってのはどいつも頭でっかちでいけねぇな。頭の中で暴走して突拍子もないことを言い出す・・・」
「も、申し訳ありません・・・」

未だおかしそうに笑う青秀の言葉にナマエは、恥ずかしさを紛らわすように残ったお茶を一気に飲み干した。





「今日、随分と楽しげに青秀と話していたな」
「え?」

元はバルバッド王宮だった建物の一部。今は紅炎達が仮で住まっている一室で紅炎の帰りを迎えたナマエに紅炎が拗ねたように発した言葉にナマエは一瞬考えるように固まる。すぐに紅炎が言わんとしていることを察してナマエは「あれは・・・」とわずかに頬を染めながら口ごもった。
眷属と同化したくて、その方法が本当にないのか確かめていました、とそう真実をつげればいいだけなのだが、青秀に大笑いされた事もあって、それまでに自分が悶々と考えていた内容が紅炎に透けてしまうのが少しだけ恥ずかしくて思わず口をつぐんでしまう。そんな此方の様子に、紅炎の雰囲気が剣呑としたものに変わってナマエはぎゅっと背筋を伸ばした。

「俺には言いにくい事か?」
「い、いえ・・・その・・・」

じとりと睨まれてナマエは勢いよく首を振る。紅炎とて、ナマエと青秀がどうかなるとは思ってもいないだろうが、それでも己以外の異性と楽しげに話していたのが気に入らなかったのだろう。ナマエとて伊達に長く紅炎に仕えているわけではない。機嫌の悪さを機敏に察知して、宥めるように紅炎に寄り添った。

「青秀様には相談に乗って頂いただけ・・・。それも、私の下らない質問に付き合っていただいただけです」
「下らない質問?」
「・・・『同化』についてです」

くいっと眉を跳ね上げた紅炎にナマエは観念して、質問の内容を再度紅炎に告げれば、彼は驚いたような表情を見せた後クツクツと笑い始めた。

「確かに、下らんな・・・」
「ですが・・・!同化した眷属の力はとても強くて・・・、紅炎様のお力になれると思ったのです」

やはりというか、紅炎に笑われたナマエは頬を染めながら言い訳のように口にする。その様子に紅炎はニッと笑うと、近くに寄っていたナマエの体を抱き上げて、ストンと寝台の上に下した。こうなることは予想していたので、ナマエもさしたる抵抗も見せずに紅炎に組み敷かれる。見上げるように赤く揺らめく瞳を見つめれば薄く笑みを浮かべた紅炎がゆっくりと顔を近づけてきた。
唇を塞がれて、息を奪う様に口内を紅炎の舌が蹂躙する。必死になってそれに応えようと、無意識のうちに紅炎の頬に自らの手を添えたナマエに、紅炎はゆっくりと、ほんの少しだけ距離を空ける。熱い、濡れた吐息がお互いの唇にかかる距離で見つめられながら、紅炎が頬にあったナマエの手を取ってゆっくりと唇を這わせる。
初めは手のひらに、そして次は指に。ゆっくりと唇が移動して、最後にぱくりと人差し指を咥えられた。

「っ・・・こう、えん・・様」

濡れた柔らかい感触が敏感な指先を悪戯に舐るので、ナマエは背筋に走る悪寒に似た快楽に唇をかみしめる。話してほしい、とたまらずに指を引こうとするが紅炎が軽く指先を噛んだのでそれもできなくなってしまった。

「んっ・・・やだ・・」
「眷属に同化すれば・・・この指もそれに相応しいように姿を変える。今更お前の容姿が変わったところで、さしたる問題ではないが・・・」

指から口を離した紅炎が耳元でささやくように声を落とす。鼓膜を揺らす濡れた吐息にナマエはぞくぞくと首元がむず痒くなるのを感じて、思わず体を震わした。

「やはり、お前はこのまま柔らかく抱き心地がいい方がいい」

確かにフェニクスはともかく他のジンの眷属だった場合、体表は鱗のように固くなってしまうだろう。そんなのは嫌だという様に、紅炎の腕がぎゅうっと体に巻き付いて感触を確かめるかのようにゆっくりと撫でてきて、首元に唇を落とされた。
何度か強く吸われて紅い印を残される。白い肌に浮かぶその痕に、紅炎が満足そうに微笑むの見て、ナマエもゆっくり頷いた。

「・・・わかりました。もう、考えません」

ナマエの言葉に紅炎がゆっくりと頭を撫でる。褒めるような、宥めるような手つきはとても優しくてナマエはうっとりとその心地に顔を緩ませる。再び、顔を寄せてきた紅炎に薄く唇を開いて迎え入れるとゆっくりと瞳を閉じた。





「んっ・・・・あ・・・」

鼻にかかるような甘い吐息が自然と漏れてナマエの体が熱くなるのを感じる。紅炎によって拓かれた彼女の体は口づけ一つで甘く蕩けだしてしまうのだ。もはや、触れることがなくとも欲で濡れた瞳で見つめるだけで彼女の体の奥に炎が灯ることを知っている。すでに脱がした着物は寝台から滑り落ちて、ナマエはその身に何もまとってはいない。しっとりと汗の浮かんだ肌に紅炎が手を這わせるたびにナマエの体が悦ぶように震えるのが分かった。
押しつぶすように胸のふくらみに手を這わして、頂きに立ち上がった薄赤の蕾をいたずらに摘まむ。大した力は入れていないので、痛みはないだろうがピクリと腰が揺れてナマエは一際大きく背を逸らして身悶えた。

「どうした?胸を突き出して・・・。強請っているのか?」
「ちっ、ちが・・・やぁっ・・・ん」

クツリと笑った紅炎が、浮いた背に腕を差し入れてナマエの体を僅かに抱き上げる。力の抜けたナマエの体は己のなすままで、突き出すように差し出された胸の飾りをぱくりと口に含んで弄んだ。舌で与えられる刺激は指のそれとは違い、甘美な痺れをもたらすようで、彼女の声が熱くさらに甘く溶けだしていく。びくびくと震える体に気をよくして、何度か吸い上げれば、ナマエの腕が紅炎の頭を掻き抱いて、もっとと言う様に力を込めてきた。
ナマエの意識が逸れている間に、膝を割って体を滑り込ませるとゆっくりと空いた手で膝から内腿を撫で上げる。柔らかい感触を確かめるように何度か撫で上げた後、すでに蜜を湛えた秘所を指で擽る様に軽く引っ掻けば、すでに熱く蜜を湛ええた其処への刺激にナマエは甘い声を上げて悦んだ。

「善い声で啼く」

思わず笑う紅炎に、ナマエはとろりとした視線を向ける。彷徨うような視線が此方を捕えた瞬間に、入り口で遊ばしていた指をナカに突き入れれば、ナマエは再び快楽に沈む。唇からは強請る様な、赦しを乞うような甘い響きがひっきりなしに零れ落ちて紅炎の耳を楽しませていた。

「んぁ・・・あっ、やっ・・ぁ・・んッ・・・駄目・・・ソコは・・・」

もはや、ナマエ以上に、彼女の体を熟知した紅炎が的確にナマエの快楽を引き出していく。ナカに埋めた指を増やして、ナマエの蜜を掻き出すように音を立てながら中を責め立てれば、ナマエは頭を打ちふるって紅炎に懇願した。

「あぁっ・・嫌・・・も、ダメっ・・・んっ、んッ」

蜂蜜のように甘く蕩ける声に、紅炎も愉快そうに口元を緩める。すでにナマエの視線は虚空を彷徨い快楽に溺れていて、その目尻に優しく唇を落とした後、一際声の高くなる場所をこすりあげた。

「―――ッあぁ」

自然に揺れていたナマエの腰が、痙攣するように激しくもだえる。それと同時にナカに埋めていた指をきつく締めあげられる感触に、紅炎の息も知らず知らずの間に熱くなっていた。
初めの絶頂にナマエは体から力を抜いて息を整えているようだった。荒い息を整える様に必死で呼吸するナマエに、紅炎は額に浮かんだ玉のような汗を指先で拭ってやる。目尻に浮かんだ汗とは違う、涙の粒を唇でなめとってやれば、焦点の合っていなかったナマエの瞳がかすかにこちらを向いた。

「こ・・えんさま・・・」
「ナマエ」

ぽつりと呟いた名前に、応える様に名を呼べばナマエの顔が柔らかく緩む。微笑むように目じりを下げたナマエに、紅炎はこみ上げる衝動のまま唇を重ねた。未だ息の整わないナマエが慌てたように体を押し換えて来るが、一度気を逝っているためにその力は些細なものだ。抵抗とも呼べない程の力で胸を押すナマエにお構いなく、紅炎はすでに熱く勃ち上がった己のものをナマエの濡れた入口へと押しつける。まだ膣内(なか)には突き入れずに、入り口のあたりで弄んでいればナマエが堪らないといったように唇の中で悲鳴を上げた。

「・・・ナマエ、どうして欲しい」
「はぁっ・・はぁ・・あっ・・・ぃ・・れてっ、くださ・・っ」

唇を離して、意地悪く問えばナマエは涙の浮かんだ瞳で必死に強請ってくる。息も整わぬうちに、快楽が欲しいというその姿に紅炎は満足そうに笑うと一気に奥まで突き入れた。もはや、何度も紅炎の剛直を受け入れたそこは然したる抵抗もなく紅炎の熱を受け入れる。しかし、奥まで突き入れれば、熱い杭に追い縋って絡みつくように紅炎を締め付けた。何度交わっても、飽くことないその感触に紅炎は自分の口からも堪えるような吐息が漏れるのを抑えられなかった。

「紅炎・・さまっ、ダメ・・・あんっ・・・動、いて・・もっと・・・・ほし・・っ」
「っ・・・ずいぶんと、強請るのが上手くなったな」

初めの頃からは想像できない程に、自分を煽るのが上手くなったナマエに紅炎は揶揄うように笑う。すでに理性が溶けてなくなっていたと思っていたナマエだったがその言葉にさらに顔を赤く染めるのが分かって紅炎はさらに苛めてみようかと彼女の耳に唇をよせた。

「分かるか?絡みついて離そうとしない・・・。随分と厭らしい体になったものだな・・・」
「っ・・・だって・・、っん、紅、炎さまだから・・・っ・・ぁ」

生理的な涙ではなく、泣きそうに歪んだナマエの表情に自分のどこか暗い部分が満たされるのを感じながら紅炎は腰の律動を速めた。すでにナマエの絶頂も近いのか、泣きそうに甘い嬌声が途切れることなく漏れ出している。揺さぶられる動きに合わせて、ナマエの腰が無意識のうちに揺れていて、昇りつめようとしているのが分かった。

「あッ、ああぁッ、も、もぅ、んぁ――っ」
「ッ・・・」

搾り取る様に蠢くナマエのナカに紅炎は何度か逆らうように律動させた後、奥へと熱を放つ。絶頂が続いているのか、虚空を見つめて体を震わせるナマエの姿に紅炎の熱が再びゆらりを湧き上がるのを感じて、紅炎は再び熱を燈した己自身でゆっくりとナマエの膣内(なか)を揺さぶった。

「だ・・・め、また・・・あっ、あっ・・・」
「まだ足りない」

正確にはいくら味わっても満足することなどないのだろう。けれども、これからもまだまだ啼かされることに、怯えたように眉を寄せたナマエにそれを告げるきには慣れず、紅炎は湧き上がる衝動のままに彼女のさらに奥へと体を進めた。



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テーマ「人外ファンタジー」
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