学びの国[11/11]
ある森で、二人の旅人が休憩を取っていた。
二人とも黒いジャケットにブーツ姿で、帽子を手に持っている。
薪を囲うようにし、両脇には二台のモトラドが停まっていた。
「じゃあさ、キノ。あの国の人たちは本当の旅人のことを何もわかってないのね?」
長髪の旅人が聞いた。まだ若く、黒に近いこげ茶の髪をしていた。
「ああ。役人以外はね」
キノと呼ばれた短髪の旅人が答える。黒髪で、長髪の旅人とさほど年が違わないように見えた。
「役人は本当に旅人のことをわかっていると思うよ、レイ。断言できる」
「ニセモノだってわかってるしね」
レイと呼ばれた長髪の旅人が言って、キノがうなずく。
「それだけじゃないんじゃない?」
隣にいたモトラドが口を挟んできた。
「どういうこと? エルメス」
「旅人のことをわかっているかどうかはわかんないけど、少なくともキノのことはよくわかってると思うよ」
ねー、エルメスがと同意を求める声を出すと、反対側に停まっているモトラドから苦笑まじりの声が聞こえた。
「まあ、そうかも」
「セシル。なんだい、それは?」
キノが聞く。
「うーん、言っていいのか・・・」
「言っちゃえ言っちゃえー」
セシルと呼ばれたモトラドは声を濁したが、エルメスが茶化すように言うと、決心したように言った。
「キノはびんぼーしょーなんだよね」
「・・・まあね」
「だからあの国で費用を負担してくれる干し肉を袋いっぱいに買った」
「うんうん」
キノは苦虫を噛み潰したような声で答え、レイは興味津々、といった様子で相槌を打つ。
「何故あの袋が指定されていたか。わかる? レイ」
「え、旅人っぽく見せるため?」
「それもある」
けど、とセシルは一呼吸おいて言った。
「袋を指定しないと旅人は、少なくともキノは、積めるだけ買ってしまうからさ。国のお金でね」
セシルが言うと、キノは軽くため息をついて、仕方ないよと言った。
「旅人はみんな、びんぼーしょーだからね」
【END】
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Don't I know it.
「そんなこと、知っているよ」。