学びの国[10/11]


「ありがとうございました。キノさん達のおかげで国民は皆、自分の知識を確かなものにすることができました」

出国の門につくと、役人は笑顔で言って頭を下げた。

「それってつまり、どういうことですか?」
「知っているだけでは、わかっていることにはならないってことさ」

レイが聞いて、エルメスが言う。

「?」

レイはまだ理解できていないようだった。

「たとえばさ、レイはここから天の星に向かっていってもたどり着けないことを知っているよね?」
「うん。だって星はすごく遠いところにあるんでしょう?」

レイは天を指差す。もっとも、ここは室内であり朝であるので、上を見ても天井しか見えない。

「そういわれてるよね。でも、レイはそれを確かめたわけ?」
「え?」
「もしかしたら、ウソかもしれないじゃん」
「うそじゃないよ。だって皆言ってるもの」
「その全員がウソつきだとしたら?」
「はあ?」

レイはわけがわからない、といった風に首をかしげた。

「なるほど」

キノが思いついたように言う。

「それが、知っているけどわかっていない、ということか」
「そういうことです」

役人がにこにこ顔でうなずいた。

「知識は、体験しないと本当の知識にはならないんですよ」
「?」

だが、レイはまだハテナマークを飛ばしていた。

「レイはパースエイダーの扱い方を知っているだろう?」 

キノが聞く。

「うん、一応段持ちだよ」
「目標に当てることもできる」
「うん」
「でも、パースエイダーの扱い方法を本で読んだことがあるだけの人は、最初から撃てるとは限らない」
「うん。本で読むのと実際やるのじゃ全然違う・・・あー!! そういうことか!!」

キノに説明され、レイはようやく理解した。

「最初から理解してよー」
「エルメスがわかりにくいたとえを使うから悪いんじゃない」
「レイの頭が回らないのが悪いんでしょ」

レイとエルメスが言い争いを始め、今まで黙っていたセシルが

「あーあ、また始まったー」

一言、ポツリと漏らした。


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