学びの国[6/11]
食事を終えたキノとレイは、買い物をするために店が並ぶエリアに来ていた。
「エルメスとセシルのためにも、早く終わらせよう」
レイが言って、キノが頷く。
前の国で買ったものを売り、必要なものを買い足して、最後に寄ったのは保存食料店だった。
「すいませーん」
レイが声をかけると
「おや、旅人さんですね。こんにちは」
「何かお探し物かな?」
奥から店主の夫婦が出てきて答えた。二人ともエプロンをつけ、やさしそうな顔つきをしていた。
「なるほど、保存食だね」
「そうです」
「どのくらい欲しいのかな?」
この袋に入るくらいです、とキノが袋を指差した。
「それならこの干し肉がいい。少し硬いけど、煮ればやわらかくなる」
「いいえ、こっちの缶詰がいいですよ。缶さえ開ければ調理の手間もいりません」
ふたりはそれぞれ別のものを勧め、
「んーと・・・。じゃあこの干し肉をお願いします。軽いですし」
レイはちょっと悩むしぐさをしてから言った。
「旅人は軽い方を好むって学校で習ったけど、本当だったんだなぁ」
「そうですねぇ」
夫婦は干し肉を包みながら顔を見合わせた。
レイが、この国では旅人についても学校で教えるんですかと聞くと、夫婦は同時にそうだよと言って、
「でもめったに来ないよなぁ、旅人は」
「そうですねぇ。生きてるうちに会えたらキセキなんですよ」
ねぇ、とまた顔を見合わせた。
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