学びの国[4/11]
二人がこの国に入ったのは二日前のことだった。
門の役人は二人を見つけると両手を振って合図をし、
「ようこそ旅人さーん!ぜひこの国に立ち寄ってくださーい!!」
満面の笑みで叫んだ。
「ようこそ旅人さん、よくいらっしゃいました!歓迎します!
お名前は?旅の目的は観光ですか?滞在期間は?ホテルの予算はお決まりですか?」
役人は待ちきれないといった様子で早口に話し、
「えっと、ボクはキノ。こちらは相棒のエルメス、連れのレイ、そしてレイの相棒のセシルです。
休養と観光で三日間、できるだけ安く、シャワーが使えてベッドが二つある二人部屋がいいんですが」
キノは冷静に全ての質問に答えた。そして、
「モトラドが中まで入れるともっといいです」
一言、要望も付け足した。
役人はもっといてくださっても良いのにと言いながら、
「おい、旅人さんだ!本を!」
奥に向かって叫んだ。
「よく叫ぶ役人だなぁ」
「ちょっとセシル、失礼でしょ」
キノの後ろでずっと黙っていたセシルが言い、レイが小声で注意する。
とたん役人がレイの方を向き、心底驚いた、といった様子でまた叫んだ。
「そのモトラドさんは人語を話すんですか!?」
「わっ!?」
レイが驚いて声を出す。
「ボクらのモトラドは話します。今までにそういう乗り物に会ったことはないのですか?」
「話しには聞いていましたが実際には・・・。バイクにしかわからない言葉を話すバイクは見たことがあります」
「それはボクは会ったことありませんね・・・。エルメスはあるかい?」
「ないよ」
キノとエルメス、そして役人が話し、後ろでレイがつぶやいた。
「この役人さん、心臓に悪いなあ・・・」
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