学びの国[3/11]
男の子らが砂場に戻って、砂の山をいくつか作ったころ、ベンチに座る旅人の元に人が一人、近づいてきた。
見ると先ほどオープンカフェに並んでいた長髪の旅人であり、小さな包みを持っていた。
「おかえり、レイ」
短髪の旅人が言い、
「ただいま、キノ」
レイと呼ばれた旅人が答えた。
「買えたかい?」
「うん、オススメのやつを二つ」
レイが言って、キノと呼ばれた旅人へ包みをひとつ渡した。
中にはこの国の伝統食である、麦をこねて作ったパンで焼いた肉を挟んだものが入っている。
キノが包みを開くと、辺りにソースの良い香りが広がった。
「あとこれ、この国のお茶。それと、このカップ紙でできているらしいよ」
そう言ってレイは茶色の液体の入った紙コップをキノに渡す。
受け取ったキノはそれをじっくりと見て、
「本当に紙でできているのかい?熱くないな」
一言、不思議そうに感想をもらした。
「実はよくできた石膏だったりして」
「その可能性は否定できないよねー」
レイとキノのどちらでもない二つの声が会話し、レイが一台のモトラドのタンクを一回ノックして
「しーっ、話はホテルに戻ってからね」
小声で大きなひとり言を言った。
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