学びの国[2/11]
列が少し進んで、店が見えるくらいになったころ、その列とは離れた公園のベンチに人が一人座っていた。
黒いジャケットにブーツ、帽子にゴーグル。短い黒髪が風にふかれて揺れている。
右脇にモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が二台、並んで置かれていた。
「たびびとさん、こんにちは」
「こんなところで何をしているの?」
近くの砂場で遊んでいた男の子が二人、旅人に話しかけた。二人ともピンク色の似た服を着ていた。
「人を待っているんだよ」
「だれを?」
「一緒に旅をしている人さ」
こっちのモトラドがボクので、こっちがその人の、と旅人は指差した。
「たびびとさんはバイクにはのらないの?」
「そうだよ、モトラドの方が景色をよく見れるからね」
そう言ってノックをするようにモトラドを軽く二回たたいた。
「たびびとはけしきをたのしむためにたびをする、ってせんせいにおそわったけど、ほんとうだったんだー」
「だなー」
ピンクの服の男の子らは顔を見合わせた。
旅人が、この国では旅人についても先生が教えてくれるのかいと聞くと、男の子は同時にそうだよと言って、
「でもめったに来ないよな、たびびとは」
「うんうん。生きてるうちに会えたらキセキなんだって」
なー、とまた顔を見合わせた。
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