学びの国[1/11]
【学びの国】
―Don't I know it.―
ある国の大通りの側に小さなオープンカフェがあった。
円形のテーブルの周りにイスが三脚。それが3つほど並んでいる。
どの席も埋まっており、カラフルな服を着た人たちが長い行列を作っていた。
その列の中に他の人とは違う服装をした人が一人いた。
黒いジャケットにブーツ、帽子にゴーグル。ひとつにくくられた長いこげ茶の髪が風にふかれて揺れている。
手にはチラシのような紙が握られていた。
「旅人さん、大丈夫?」
「疲れちゃったかな?まったく長いよね、やになっちゃう」
後ろに並んでいた少女が二人、旅人に話しかけた。二人ともオレンジ色の似た服を着ていた。
「大丈夫です。でも確かに疲れちゃったかな。早く進んでくれないと連れが飽きちゃいそう」
「一緒に並べば良かったのに」
「モトラドがあるから」
見てもらっているんです、と旅人は微笑んだ。
「セールじゃなかったら並ばなくて済んだかもね」
「それじゃあ来てないかもしれませんよ」
そう言って『大セール!大安売り!今日限り!』と書かれたチラシを見せた。
「旅人は安さを求めるって授業で習ったけど、本当だったんだー」
「ねー」
オレンジの服の少女らは顔を見合わせた。
旅人が、この国では旅人についても授業で教えるんですかと聞くと、少女は同時にそうだよと言って、
「でもめったに来ないよね、旅人は」
「うんうん。生きてるうちに会えたらキセキなの」
ねー、とまた顔を見合わせた。
***