Biblio Take



濁り水



※BL要素あり。

朝の光が眩しい。そう言えば昨日、カーテンを閉め忘れた。習慣でさえも、忘れたりするからつくづく人間の記憶力なんて当てにならないと思う。
チュエンイは、短く呻き声を上げて寝返りを打った。
(そう言えば、こいつを泊めたんだった……起きたらもう一回鍵を探させるか)
時計は5時前を刻んでいる。二度寝が許される時間だ。キースはしゃっとカーテンを引き、チュエンイに背を向けて瞼を閉じた。
「キース君、お医者さんごっこしない?」
「すごい寝言だな、おい」
「イメージトレーニングって大事だと思うの。戦地で怪我した時に手早く手当てするには、日頃の練習が必要だよ」
「うわあ。凄い。寝言なのに、会話が成り立ってる」
チュエンイに枕を投げつけても、不平を言わなかった。それどころか、なにやら嗅ぎ始めた。
(気持ち悪いな……)
今度はニマニマ笑い出す。キースは寝かせてくれ、と言わんばかりに息を吐いた。
「なに?」
「いつもより汗の量多いね」
「は? え? いつもよりって、お前!」
「ホラ。俺、お医者さんだから。患者さんのことはなんでも知ってるの。何をして欲しいかも分かっちゃう」
誰に許可取って、馬乗りしているのだ。しかし、近くで見れば見る程に綺麗な顔立ちをしている。中身がコレでなければ、素直に褒めてやるというのに。どくどく、と脈打つ心臓は距離感のせいにしておこう。息がかかる程、顔を近付けるな。
「そうですか。プリン買って来い」
「ラジャー」
「焼きプリンと生クリーム乗ってるやつ」
「生クリームのやつ! キース君と一緒に食べる!」
「そっちは俺の。焼きプリン食べとけ」
せめてもの意地悪をしてやった。すると、たちまちこの世の終わりみたいな顔つきに変わった。
「焼きプリンとか下品」
「お前よりマシだ」
チュエンイは言うだけ言って、出て行く。一人で騒ぎ飽きたら、逃げる。気まぐれにも程があって欲しい。
「鍵落として行ったよ……嘘吐き。何かあって泊まりに来た癖に」
ああ。まだ、朝を迎える準備は出来そうにない。







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